029「エルフ娘、ハーレムに入る」


エルフィンの目の前に、大量の食料が積まれていた。

村の外から、次々と馬車や小舟がやってきて、搭載した食料を降ろしていく。

馬車は大量の部品で構成された高級品だ。この世界では、運搬できる荷物の量は少ない割に、維持費が高く、整備されていない道では運用できない欠陥がある。

謎が増えたエルフィンは、目の前で浮いているシルバーに問いかけた。


「あ、あのぅ……シルバー様?」


「ん?どうしたんだ?」


『オッパイ大魔王だ!』

『エルフィンたんのおぱぱーい!』


シルバーの視線は、エルフ娘の大きなオッパイに注がれている。

少し恥ずかしくなりながら、エルフィンは言葉を続けた。


「こ、この大量の食料は何なのですか……?」


「プラチナの提案で、量産した鉄製の備中鍬を、近隣の村に、有料で貸したんだ。

この食料は、レンタル代金」


「あ、あの……?

ど、どうやってレンタル代金を取っているのです?

普通、代金を払わずに、そのまま借りたまま返さない輩の方が多いと思うのですよ?」


「骸骨軍団1000匹と一緒に行ったら……どの村も笑顔でレンタル代金払ってくれたよ」


『恐怖政治に慣れた妖精さんだお』

『普通の異世界ファンタジーなら、仁義とか、信頼とかで金を払わせるのに、武力使っている件』

『でも、権力者に必要なのは畏怖だから仕方ない……そんな気がするな……。

優しい指導者は生き残れないのだ……』


エルフィンは、恐怖した。

いつの間にか、骸骨戦士の数が激増している事に。

恐らく、豚人間を徹底的に大量虐殺して、その遺骨を再利用したのだと思われるが、プラチナとシルバーの倫理観の無さに、体がプルプルと震えて、エルフ耳が下に垂れた。

しかも、よからぬ事に気が付く。


(あ、あれ……?

き、聞いた事があるのですよっ……!

古代の日本は、金属製の鍬を管理して、農民を支配していたと聞いたのですっ……!

つ、つまり、これはっ……!

シルバー様の征服心の現れという事なのですかっ……!

備中鍬を貸し出すと同時に、付近の村を従属させる策略っ……!?

な、なんて恐ろしいお方なのですかっ……!

命の恩人ならぬ、性奴隷の地位から救ってくれたお方ですけど、暗黒王子の名は伊達ではないのですよっ……!)


村が豊かになるのは良い事だが、恐怖政治の中心にいるのかと思うと、胸がドキドキした。

そんなエルフ娘の後ろに――銀髪ロリが走ってきて、大きなオッパイを掴んで揉みしだいてくる。


「あぅ!」


「エルフィン~。オッパイってどうやったら大きくなるの?」


「プ、プラチナっ!セクハラはやめて欲しいのです!」


「揉んでも減らないし、良いじゃない」


「揉まれると、豚人間の事を思い出して辛いのですよっ……」


エルフィンの脳裏には、無数の豚人間に囲まれて、たくさんオッパイを揉まれまくったアダルトビデオ真っ青の逆豚ハーレム・ライフが映し出されていた。

辛うじて、孕む前に救出されたが、シルバーが居なかったら、今頃、子供を量産し、豚どもの性欲を発散する巨乳エルフ娘として、死ぬまで人生を過ごしていただろう。


(異世界生活は大変なのですっ……。地球に帰って電化製品に囲まれた生活に戻りたいのですよ……)


「あ、そうだ!」 唐突にプラチナが、何かを思い出したかのような顔になった。


「ど、どうしたのですか?」


「エルフィンって、今月の税金払えてないから、奴隷になっちゃうけど良いの?」


「あぅー!?

わ、忘れていたのですよ!

お願いなのです!もう少し、私の給料を上げて欲しいのです!」


エルフィンは、目の前の銀髪ロリに、頭を下げて、必死に頼み込む。

しかし、そんな事で給料が上がるなら、労働者は苦悩しない。労働争議は起こらない。


「でも、エルフィンは秘書と言っても、大した仕事してないし……。

精霊魔法を使える医者は、他にもたくさんいて、需要低いし……。

エルフィンの血って美味しいけど、飲むのは一日に一滴か二滴だから、そんなに金を払う訳にもいかないし……。

やっぱり、奴隷になるしかないと思うよ?」


「ど、奴隷は嫌なのです!

私の手じゃ、重労働の仕事なんてしたら死んでしまうのです!」


「いや、エルフィンだったら、娼婦の仕事が一番儲かりそうかな……?

男の人って、オッパイが大きい娘が大好きだもんね!」


「性奴隷から解放されたのに、また慰みものにされるのは嫌なのですっー!

スケベーな仕事以外が欲しいのですよー!」


「あ、そうだ!」


プラチナが名案が思い浮かんだ、そんな嬉しそうな顔をしている。


「エルフィンっ!シルバー様の側室になろうよ!

僕、エルフィンの血なしじゃ、生活できないし、これで良いよね!」


「え?」 訳が分からない返事に、エルフィンは絶句した。


「あ、シルバー様の子供を孕むのは僕が最初だから、エッチィ事は僕が妊娠した後にやってね?

先に妊娠すると、継承権とかややこしくなるし。

エルフィンが産んだ子供は、外交戦略の道具にするから、きっと子供達も豊かな生活を送れるよ!」


「あ、あの……?」


「……それとも、娼婦になりたいの?

そうなったら、村中の男たちに抱かれて、きっと誰の種かもわからない子供を孕む事になるけど、それでいいの?

僕達、亜人って病気にかかり辛いけど、ひょっとしたら性病にかかっちゃうかも?

エルフィンは大切な親友だから、できればシルバー様の側室になって欲しいんだ。そうしたら、きっと幸せになれるよ?」


プラチナは、エルフィンが取れる選択肢を全部削り取っていた。

性奴隷になって、村中の女性から馬鹿にされる娼婦生活を送るか。

それとも、支配者の側室になって、名誉ある生活を送るか。そのどちらかを突きつけられたら……後者を選ぶしかない。


「わ、わかったのですよ……シルバー様の側室になるのですっ……」


「やったー!

エルフィンと僕は、今日から親友じゃなくて……家族だね!

おめでとう!あ、権力闘争とかしたら、容赦なく殺すから!

出来れば、仲良く付き合おうね!

どこかの人間の王朝では、ハーレムといえば内ゲバと、競争相手皆殺しが基本らしいけど、僕は優しいから!

きっと、そんな展開にはならないよ!」


「あ、あぅ……。

い、命だけは助けて欲しいのですよっ……!

け、権力なんて怖すぎて要らないのですっー!」


エルフインはこうして、シルバーのお嫁さんになった。

ロマンチックの欠片もない。


『銀髪ロリが、エルフ娘を脅してお嫁さんにした件』

『なにそれ怖い』

『普通、妖精さんが告って、ハーレムになる展開だろ……!

現実のハーレムひでぇっ……!ロマンも夢もないっ……!』

『リアル大奥か!』


「僕は無欲なエルフィンが大好きだよ!」



~~~~~~

太陽は地平線の彼方に沈み込み、涼しい夜が訪れた。

エルフィンは、薄いスケスケでピンク色の寝巻きを渡され、それに着替えて緊張している。

大きなオッパイが薄らと透けて、サクランボ色の綺麗な乳首が見える。

今、彼女の目の前には、大きなベットが鎮座していた。これが意味する事は――世間一般的には、夫婦の共同作業を意味する。


(ベ、ベットが巨大すぎるのですっ……!

うううっ……!私の純情がまた汚されるのですかっ……!

でも、相手がイケメンの暗黒王子なのは、まだマシな方だったりするのですかっ……?

私は恋愛結婚がしたかったのですっ……!)


エルフィンが緊張する中――プラチナとシルバーは――


『はよ!子作りはよ!』

『童貞を早く卒業しよう!妖精さん!』


普通に、ダブルベットで寝転がり、仲良く寄り添っていた。

子作りする気配が全くない。


(あれっ……?

この二人、まだエッチィ事すらしていないピュアな関係だったりするのです?)


エルフィンのその予感は的中していた。

シルバーは、まだ、童貞だ。父親になる覚悟ができないから、女性を孕ませる行為を我慢している。


「……今日も、たくさん仕事したし、寝るかプラチナと、エ、エロフィン?」


『妖精さん、エロい感じに間違えるなwwww』

『妖精さん爆発するべき』

『今日も、俺らの寄付金をばら撒いただけな件』


そんな童貞妖精に、隣の可愛らしい銀髪ロリが抱きつく。妖艶で幼い身体を擦り付けて、支配者としての義務を果たそうとしている。


「シルバー様~?

子作りしませんか?

子供がいない政権の政治基盤って弱いんですよね。

暗殺に力を注ぐ連中が出てくると思うんですよ。

だから、僕と子作りしましょ?」


プラチナの素晴らしき、弾力がある貧乳。

シルバーはその誘惑に誘われそうになったが――ネットの皆に監視されながら、子作りというハイレベルすぎる変態行為をやる気にはなれず、萎えてしまった。


『よしキター!』

『はよっ!子作りはよ!』

『プラチナたんの喘ぎ声聞かせろ!』

『ズボンを脱いで、画面の前で待機していますお!』


「プ、プラチナ。そういう事は、もう少し仲良くなってからにしよう」


「僕って……そんなに魅力ないですか?

オッパイを揉んでも良いんですよ?たくさんスケベーな事をしても、僕とシルバー様は夫婦ですから、無問題ですよ?」


「いや、プラチナがとっても可愛い女の子だってのは理解できているよ。

でも、こういうのは、もう少し深く付き合ってからの方が盛り上がる……と思うんだ」


『そんなぁぁぁぁぁ!!まだ子作りしないのぉぉぉ!!』

『銀髪ロリを生殺しですか!鬼畜妖精さんっ!』

『嫁とセックスしないなんて……人間のやる事かよぉぉぉぉ!!』


シルバーとプラチナが視線を交えて微笑む。どっちも性格が違いすぎるが、不思議と馬が合った。

喧嘩するほど仲が良いの全く逆。喧嘩しないくらいに仲が良い。そう表現できる男女仲がそこにはある。

しかし、今、この場で一番被害を受けている女性がいた。金髪巨乳エルフ娘だ。


(な、なんか、私だけ場違いな気がするのですよっ……。

熱々なバカップルと一緒に、ハーレムベットに寝るとか……なんですか、その罰ゲーム……)


黙ったまま立っているのも辛かったから、エルフィンもベットに入った。

銀髪ロリ、妖精さん、金髪巨乳。この順番にベットに体を横たえている。

エルフ耳がピョコピョコ激しく動いて興奮した。


『ちょwwwwエロフの耳が激しく動いているぞwwww』

『妖精さんにベタ惚れだなwwwこの娘wwww』

『巨乳エルフ娘と子作りしても良いのですぞ!妖精さん!』


しかも、エルフィンにとって、一緒に寝たり、エッチィ事する相手としては、シルバーは不向きにもほどがある。

ネットの皆が流す毒電波の数々が、ノイズ混じりの謎すぎる雑音として聞こえるから――


(ううう……変な人の声が聞こえるのですよっ……!

ま、まさかっ……!この雑音はっ……!?

シルバー様を恨んでいる亡者の怨念だったりするのですか!?)


ネットの皆の声が、ホラーな化物扱いになった。

エルフィンは恐怖でガタガタッと震える。その心を治めるために、シルバーの小さな身体に抱きついて、豊満な胸をたっぷりシルバーに味わせた。

そうすると恐ろしい亡者の声が場に響いた!


『ハーレム展開きたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

『ダブルおっぱいに挟まれるとか、それなんてエロゲーですかぁぁぁ!!妖精さんっっ』

『羨ましいお!オラもハーレムしたいお!』

『5万円払うから、黄色と白の縞々パンティーを、エルフィンたんに履かせて欲しいお!妖精さん、理解したお!?』

『クンカクンカしたぃぃぃぃ!!異世界に俺の想いよー!届けぇぇぇぇぇ!!!』


(こんな恐ろしい男の嫁とか、ひどいのですっ……!

亡者の声がする、ハーレムベットで寝る時点で、この男はやはり只者ではないのですっ……!

このままでは、私も美味しく頂かれて、他のハーレムヒロインと競争する生活をしないといけないのですよっ……!

王位継承争いとか巻き込まれたくないのですっ……!

でも……豚人間に比べれば、エロくなくて、優しいっ……?)


エルフィンが目を瞑りながら動揺する中。

シルバーは、貧乳と巨乳。素晴らしきオッパイに包囲され、絶体絶命の子作りタイムを強制させられそうになり、顔が真っ赤になった。


『妖精さんぁー!はよ子作りー!』

『うわぁぁぁぁぁん!エルフ娘がお嫁さんとか羨ましいよぉぉぉぉぉ!!』

『プラチナたんとイチャイチャしたいおぉぉぉぉ!

青と白の縞々パンティーが最高にエロすだおおぉぉぉ!!』


(うるさくて眠れないのです……

一体、何百人殺したら、こんなホラーな環境になるのですかっ……!

ホラー映画の世界は大嫌いなのですー!)




--------------------------------------------------------------------------------


高級ダブルベット 10万円

スケスケの寝巻きなどの衣服セット 3万円


備中鍬を、ドワーフの鍛冶師を使って量産するための鉄資源1トン 4万8000円

消費総額22万1100円 ☛ 39万9100円

--------------------------------------------------------------------------------


ボツネタ


プラチナ村には、ドワーフがたくさん住んでいる。

マッチョで筋肉モリモリ。ご飯はたくさん食べて、森を全て薪にしちゃう迷惑すぎる連中が、たくさん住んでいる。

エルフィンは、嫌々ながら、そんなドワーフの工房を訪れた。すると――皆、死んだように倒れている。

山のように積まれた『中国産の鉄』の前で。


「ワシら過労で死ぬ……」

「プラチナ様のノルマが厳しすぎる……」


「ぶ、ブラック企業なのです……!」




--------------------------------------------------------------------------------


「俺は砲耳で、大砲の射角を自由に操作してチートする!」15世紀 のフランス

http://suliruku.blogspot.jp/2016/04/15.html


【小説家になろう】「クズキャラの見本市状態」町をつくる能力!? 異世界につくろう日本都市



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る