015「妖精さん、羽が大きすぎて困った」

居心地が良い場所から去るのは名残惜しかった。

だが、豚人間を倒さない限り未来はない。

だから、シルバーは別れの言葉をプラチナに告げた。

これが人生最後のリア充体験なのかもしれないのだから。


「それじゃ行ってくるプラチナ」


「シルバー様ぁー!戦果をお祈りして待ってますね!」


『この後、二人は二度と会うことなかった』

『こらwww不吉なナレーションをつけるなwww』

『不謹慎すぎるwwww』


(……俺、豚人間を倒して、プラチナとイチャイチャして幸せな未来を勝ち取るんだ……あれ?)


嫌な考えが、シルバーの脳裏をよぎる。

これから行く場所は、オッパイ党の洞窟。

一匹残らず、豚人間を駆除するために……必然的に、狭い狭い屋内戦闘を強いられるのだ。

背中にある大きな蝶蝶の羽が邪魔になる。

機動力が発揮できない。屋内だから、豚人間の攻撃も届く。


(俺が勝利する難易度高くないか……?)


豚人間が同士打ちで数を減らしていたとしても、やはり不安だった。

骸骨兵士は3人いるが、手が骨だから銃器を扱えない。つまり連れて行くと役立たずになる。

それ以前に、練習に使える銃弾の余裕はない。

とんでもなく、リスキーな戦いになりそうだ。


『別れのチューはしないの?』

『銀髪ロリとラブラブちゅっちゅ、はよ』


~~~~~~~~



シルバーはプラチナと別れた後、空を飛んで川沿いに移動した。

そうすると、川の上流に洞窟があるのが見える。

洞窟の入口には、豚人間の死体がたくさん転がっていた。

争う音がしない様子から、オッパイ党とペロペロ党の戦いは完全に終わったのだと、シルバーは理解した。


『妖精さんが策略を実行した結果がこれ』

『これが中国歴代テンプレ戦略、夷を以て夷を制すか』

『さぁ、妖精さん。

今なら、豚どもは数が減っていて、疲弊しているはずだ』

『妖精さんに命じる!サーチ&デストロイだ!豚を一匹残らず殺せ!』


ホルスターから外した自動拳銃を構えて、シルバーは洞窟の入口へと向けて、ゆっくり降下。

入口近くに伏兵がいるかもしれないから、心臓が爆発しそうなほどに脈動した。

そうすると、入口に入った瞬間っ!


「あっ!」


とんでもないリアルに気がついた!


『羽が大きすぎて洞窟に入れないwwww』

『ちょwwww屋内戦闘が絶望的すぎるwww』


背中の羽が大きすぎて、洞窟に入れそうになかった。

無理に入ろうとすれば、羽が折れてしまいそうだ。


「ど、どうしようっ……?」


『洞窟に催涙弾でも放り込めばいいんじゃね?』

『いや、川が、岩を削り取ってできた洞窟っぽいから、普通に風が流れてるから効果は薄いぞ。

とんでもなく長いだろうし』


パタパタッ。

シルバーは背中の羽を動かす。

とっても間抜けな光景に、ネットの皆は笑う。


『どじっ子属性だ、可愛い』

『妖精さん、可愛いから問題ない』

『地球にお持ち帰りしたい』


「いや、駄目だろ!?

ここで俺が洞窟に入れなかったら、女性たちを助けられないぞ!?

そうなったら、プラチナが悲しむ!」


『さすがの俺でもアドバイス無理』

『ダイナマイトで洞窟の入口を塞げばええやろ?』


「誘拐された女性まで死ぬだろ!?」


『豚の駆除と、女性の救出』

『この二つを同時に達成しようとする時点で、妖精さんに敗北フラグが立っているお』


シルバーは困り果てた。

背中の羽根が大きすぎて入れない。

かといって、洞窟全体をぶっ壊すのは論外だ。豚の駆除方法としては最適なのだろうが。


(羽が小さければ……全ての問題が解決するのに。

これじゃ、プラチナと一緒に屋内で生活する事もできない……)


そんな時だった。ネットから救いの声がやってくる。


『俺、地球で妖精さんやっているお。

妖精の羽は、魔力の塊だお。

小さくすれば屋内で快適に暮らせるお。

快適ニートライフだお』


「地球にも……妖精がいるのか……?」


『試しにやってみればいいお』




~~~~~~~


10分間、洞窟の入口前で、シルバーが苦闘した結果!


『サイズ調整可能とかwwwww』

『ちょwww完全に羽が道具扱いじゃんwwww』

『どんな構造になってるのwwwwそれwwww』


なんと、シルバーの背中の蝶蝶の羽が、手のひらサイズになった。

その代償に、空を飛ぶ機能はなくなったが、身体を早く動かす事ができる。

シルバーは再び、両手に自動拳銃を構えて格好つけた。


「準備は整った!

これから俺、屋内戦闘してくる!」


そのまま、洞窟の入口に入ろうとすると――


『妖精さんちょっと待った。

あ、返事はしなくて良い』


その言葉に、シルバーは足を止めた。


『普通、こういう地下での戦闘は、交通の要所や、入口近くに伏兵を置いておくんだ。

そうすると最小限の人員で、効率よく奇襲攻撃が可能になる』


(なるほど……)


『つまり……入口のすぐ近くに豚人間が隠れていると思う。

俺なら絶対、そこに伏兵を置く』


シルバーは、拳銃を左手に持ち、ネット通販から破片手榴弾を購入して、右手で掴む。

即座に安全ピンを口で外して、手榴弾を洞窟の中へと、景気よく投げ入れた。


『ちょwwwアドバイス受けて、すぐに手榴弾を投擲とかwww』

『本当に躊躇しないショタ娘ねっ!』


手榴弾が、硬い岩の上で転がる音が響いた後に『洞窟内に隠れていた豚人間』の反応が返ってくる。


「ぶひぃぃぃぃぃ!妖精娘に最初に種付けするのは俺ブヒィィィィ!」

「ペロペロするのが先ブヒィィィィ!」

「ボールぶひぃっ?」

「妖精娘じゃないブヒィ?」


ドカァーン!


手榴弾が炸裂する音が、洞窟内部に響いた。

豚人間達は、至近距離から、高速で飛んでくる破片を浴びたせいで、即死したようだ。


『こぇぇぇぇぇぇ!!』

『まじで伏兵いたぁぁぁぁぁ!!』

『この豚人間、ベトコン並に頭が良いぞっ!』


「屋内戦闘怖い……家に帰りたくなってきた」


『妖精さん、ヘタレるな!』

『俺らが付いているお!』

『負けても、後ろの処女を失うだけだお!殺されないと思うお!』


もしも、ネットの皆からアドバイスを受けなかったら。

完全にゲームオーバーだった。

それを理解しているシルバーは、余計に緊張しつつ、人生初の屋内戦闘に挑む事になる。


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破片手榴弾


消費100円


残金1万8700円 ⇒1万8600円

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豚(´・ω・`)妖精さんを嫁にしようと思ったら、爆弾をプレゼントされてもうた……

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(´・ω・`)主人公が今まで購入したアイテムは、こっちに全部纏めた。

http://suliruku.futene.net/Z_saku_Syousetu/Tyouhen/Neltuto_tuuhan/Aitemu.html

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