013「妖精さん、愛妻ステーキを食べる」

ペロペロ党の軍勢が、オッパイ党の洞窟へと攻め込む様を、こっそり監視しようと思ったがシルバーだったが――


ぐ~


彼のお腹から空腹を知らせる音が鳴った。


『妖精さん、お腹空いたのか?』

『でも、妖精さんを航空機として考えたら、燃費良すぎwどうやって浮いているのw』

『人体が、空に浮いている時点で、謎エネルギー』


幸い、オッパイ党の拠点は、ペロペロ党の軍勢の移動方向と、川の位置から、簡単に把握できる。

生活のために、周りの木々を伐採して消費しているから、空から見れば一目瞭然だ。

ここは一旦、休憩して、食事をするべきかなぁーと、シルバーは思った。


「あれ?……妖精って、何を食べる生き物だっけ?」


『知らんがな』

『知らんがな』


「ネット通販で、カロリーメイトでも注文しようかな?

俺、バナナ味が好きなんだ」


『ちょwwww貯金少ないのに、食費に使うなよwww』

『プラチナたんの手料理を食べに行けばいいお』

『料理を作って待っているって言ってたお!』


ネットの皆に言われて、シルバーは思い出した。

確かに、プラチナは料理を作って待っていると言っていた。

なら、その手料理とやらをご馳走になるのも良いだろう。

例え、味が不味くても、料理に愛が篭っていれば食えるはずだ。


「……うん、それ良い。可愛い恋人の手料理とか、良い……!

俺、プラチナの料理を食べに行ってくる!」


『リア充め』

『でも、妖精さんも可愛いから許す』


「この白いワンピースを、手土産にしたら、きっと喜んでくれると思うんだ……」


『なんと無駄がない贈り物』

『妖精さんは、策士だと、はっきり分かんだよ』


豚人間の軍勢から離れ、シルバーは村の方角へと飛ぶ。

空を飛んでいる間は自由だ。

誰も、彼を妨害するものがいない。

これからきっと、幸福な未来が待ち受けているように思えた。


「美味しい料理だと良いなぁ……」


『対空砲で撃ち落としたくなってきた』

『警察さんっ!ここに銀髪ロリとイチャイチャしようとするショタがいますよ!』

『ショタ・ロリカップルはまだかお!』


森を超えると、すぐに村と湖が見えてくる。

村の周りは、川から水を引いて作った複数の水堀で、覆われている。

つまり、自然を生かしたナイスな簡易城塞だった。

水堀を越えないと、外敵は村に入る事ができない。

古来から、河川は軍隊を無力化し、殺してきた死地だから、豚人間もそう易々と手を出さないだろう。

そうやって内心で安心したシルバーは、視線を動かして、銀髪ロリの姿を探す。

ネットの皆も、可愛い女の子を見たいから、動画を見て探しまくる。


『井戸っぽいところに、プラチナたんがいるお』

『肉を焼いているお』

『肉料理とかwww焼き方が豪勢すぎるwww』


村の中心部、井戸の隣で、石のプレートを炎で熱して、豚肉を焼いているプラチナがいた。

周りには、数人の骸骨兵士が動き回り、次々と豚肉を焼いて、薫製にしている。

見事なまでに、カルシウムたっぷりの丈夫そうな骨だ。


「骨……?」


『ちょwwwwなんで骨が動いているんwww』

『さすがは異世界、なんでもありだ』


骸骨を見た事で、シルバーは警戒した。

だが、普通に肉を焼いて仕事している様子から、味方だと判断し、プラチナの所へとゆっくり降下する。

そうすると、鼻歌を歌っていたプラチナが、シルバーの存在に気が付き、良い笑顔で近寄ってきた。


「あ、シルバー様!

僕の手料理を食べに来たんですか?

それとも僕を食べます?」


『妖精さん、さぁ、銀髪ロリを食べるのです』

『プラチナたんを食べるお!』

『この銀髪ロリ、無駄に妖艶である』


「う、うん」


「え?

僕を食べたいんですか?

さ、さすが、シルバー様です」


どうやら、先ほどのプラチナの発言は冗談だったらしい。

そうと理解したシルバーは、照れくさそうに――


「いや、そういう事はもっと仲良くなってからかな」


「なるほど、シルバー様は仲良くなってから手を出す派ですか、そうですか。

じゃ、料理が先ですね!

ステーキを焼くから、1分ほど待ってください!

美味しく美味しく焼きますよ!」


そう言って、プラチナは熱した石の上で、豚肉のステーキを焼き始めた。

肉に直接、火が当たらない焼き方だから、ステーキは焦げが少なく、ふっくら焼けている。


『妖精さん、ワンピースはプレゼントしないの?』

『女装した男の娘が使ってました、ワンピースです』


「あとで良いだろ……急ぐような事じゃないし。

それに、このワンピースは、露出が多いから、身体が冷えて風邪をひいちゃうような……?」


シルバーは、片手に持っているワンピースを、近くの岩の上に置き、その場でプカプカ浮いた。

妖精は、空を飛ぶ事を前提にした種族なせいか、足の筋肉が少し弱いようだ。


『ヒモ妖精さん』

『この姿を見ると、ただのニートのようだ』

『可愛い娘に料理を作って貰えるなんて羨ましいぃぃぃぃっ!!』


(俺……プラチナと結婚して彼女を幸せにするんだ……)


『爆発しろ!』

『妖精さんっ!今すぐ爆発するんだ!リア充めっ!』


そうやって待っている事、3分。

木の皿に、ほどよく焼けたステーキが置かれた。

プラチナは、最後の締めに、ピンク色の岩塩をステーキに振りかけて、ニッコリとシルバーに微笑む。


「さぁ!出来ましたよ!

僕ってステーキを焼くのは得意なんです!

死んだお父様も、『お前は肉を焼くのだけは上手いな!』って言ってましたし!」


『全然、ほめてない件wwww』

『他の料理は下手という事かっ……?』

『いや、昔の話だろうし、今は他の料理もできると思うお。良妻賢母に違いないお』


「いただきまーす!」


ネットの反応を無視したシルバーは、腰の鞘から、ステンレス製のナイフを取り出して、ステーキに刺した。

それを見たプラチナが首を傾げた。


「……全く錆びてないナイフですね。

これって鉄ですか?」


「いや、ステンレスだよ」


「ステンレス?」


「とても、錆び辛い金属なんだ」 『でも、加工が難しいお』


「まぁ、便利ですね、それ。

鉄だと錆びるから、定期的に研がないと切れ味が落ちちゃうんですよね……きっと高いんだろうなぁ。

シルバー様の財力って凄いんですね!」


『プラチナたんが、ナイフを欲しそうな目で見ているお?』

『たぶん、この異世界だと、黄金並に価値あると思いますぞ、妖精さん』

『アルミニウムも、生産コストが高かったころは、黄金以上に価値がある希少金属だったもんな』


この異世界では、黄金以上の価値を持つかもしれないステンレス製のナイフ。

それで、シルバーは、ステーキを切り分け、豪快に刺して、肉きれを口の中にいれる。

そうすると岩塩とステーキの二つが口の中で組み合わさり、肉の美味さというものを味わえた。

石のプレートの利点をよく生かし、内部までよく焼けたステーキだ。


(……俺、太るかもしれない。

こんな美味しい肉ばっかり食べたら、絶対太って、飛べなくなる……)


ステーキを思う存分、時間をかけて平らげる。

時間を忘れて、食べて食べて堪能する。

一枚のステーキを食べきって、一息ついたシルバーは、目の前にいるプラチナに問いかけた。


「美味い……これ何の肉?」


「豚人間の太もも肉です!」


『ちょ、二足歩行している動物食べるなよwww』

『言葉話せる動物食べるなwwww』

『よく見たらwwww豚人間の死体が近くにあるじゃねぇかwwww』


おぞましい展開に絶句したシルバーだったが、可愛い銀髪ロリが、自分のために作ってくれたステーキ。

そう思えば、心にかかった負荷を軽減する事は容易かった。

これは人間じゃない。世間に迷惑をかける豚の肉なんだ。そう思い込んで、嫌悪感を無理やり無くす努力をする。


(プラチナが俺のために、頑張って作ってくれた料理なんだ……。

ざ、材料なんて気にしちゃいけない。

貴重な食材を無駄にするより、こうやって有効活用した方が良いに決まっている。

エコだよ、エコ。決してこれは俺のエゴじゃないんだ………)


「ところで……豚人間の討伐はどうなりましたか?」


プラチナの純真な赤い目が、シルバーを見つめる。

当然、彼は正直に答えた。


「今、豚人間同士を殺し合わせている最中だから、ちょっと休憩しに来たんだ」


『危険人物にしか見えない発言だ』

『中二病か!』

『ちょwwww誤解招く発言すんなwww』


「まぁ、策謀も凄いんですね!

さすがはシルバー様です!頭が良い旦那様を持てて僕は幸せですよ!

肉はたくさんあるから、どんどん食べてください!

豚人間はすべて回収して、薫製にするから、後で場所を教えてくださいね!」


「あ、うん……あ、ありがとう?」


『ちょwwwwwおまwwwww』

『この動画つらいです……妖精さん』

『人型に近い豚を調理して、食べるとか……野生児やで、この銀髪ロリ』

『これから毎日、豚人間を食べる日々wwww』

『下手したらエルフ娘が生んだ豚を食べている可能性がある件』



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