011「妖精さん、女装して豚を誑かす」

女装。

男が、女性の衣服を着る事。

その歴史は古く、世界中にその文化がある。

古代ローマなら、若い少年を女装させて売春。

中国とエジプトの宦官(ハーレムの世話役)は、女装に近い衣服。

そんな罪深い雑学を……シルバーは思い出してしまった。


(俺……なんで、異世界に来て、女装しているんだろう。死にたい……)


今のシルバーは、幼い妖精ボディに白いワンピースを身に纏い、背中から紫色の蝶の羽が生えている。

腰まで届く銀髪のせいで、ロリロリな妖精にしか見えない格好になっていた。


『妖精さんww可愛いwwww』

『チン●ついているのが残念しゅぎるwwwww』


(お、俺は、しょ、勝利するためにやっているんだっ……!

だから、これは正義なんだっ……!

くっ……!殺すっ……!)


自分が女装している理由をすぐに思い出す。

豚人間どもを騙して、壮絶な内紛を発生させるために必要な格好なのだ。

下半身の欲求に素直な豚どもを騙すには、女の子の格好をするのが一番。

ただ、それだけなのだ。


『それでは妖精さん、作戦実行してください』

『作戦名は?』

『うわ、男の娘、ちゅよい作戦!』


「お前ら……息が合い過ぎだろ!?」


『妖精さんのせいで、変な性癖に目覚めそう』

『はよ、作戦はよ』


(ワンピースを脱ぐためにっ……!

俺は作戦をさっさと実行する事を強いられているんだっ……!)


妖精さんは空を飛ぶ。

尋問したオークの情報を元に、ペロペロ党の洞窟を探す。

見つけるのはとっても簡単だった。

天然の洞窟は、水の力でゆっくり削り取られた代物。

つまり、川を遡れば、自動的に豚人間の拠点が見つかるのだ。

もう、あっさりと簡単に、空から発見できた。


「……なんて安易な場所に、拠点作ってるんだ。こいつら」


『生活に便利だからだろ』

『魚取り放題、水飲み放題。しかも、川の近くだから土地は肥えているから、謎の作物取り放題だお!』

『排泄物を川に流し放題だお!』


洞窟の入口に、3匹の豚人間がいる。

見張り役なのか、竹槍を片手に持ち、周辺を警戒……いや、退屈そうに立っていた。


「オッパイ党は許せんブヒィー」

「女の子は、ペロペロされるのが一番ブヒィー」

「早く、見張りを交代したいブヒィー」


『俺も女の子をペロペロしたいです、豚先生』

『いや、オッパイを揉む方が楽しいだろ……俺はオッパイ党で揉み揉みしたいお』


会話の様子を見ても、やはり、ここはペロペロ党の洞窟だ。

こいつらを焚き付けるために、何匹か殺す必要がある。

シルバーは、ネット通販で破片手榴弾を一つ購入。

安全ピンを抜いて、洞窟の入り口めがけて投擲した。


『妖精さん、躊躇なく爆弾投げてるお……』

『なんて恐ろしい子っ……!』


ドカァーン!


「「ぶびっー!?」」」 


3匹の豚人間が、爆発した破片手榴弾の餌食となり、体がズタズタに引き裂かれ、重傷を負う。

こうなったら、もう助からない。

出血多量や、ほかの病気を発症して死ぬだけだ。


『爆撃妖精さんだ』

『ちょwwwwwwこいつらの数が激減する兵器使うなよwwww』

『こいつらの数が激減したら、オッパイ党に攻め込む兵力が減るぞwww』


「いや……怒らせるなら、爆弾の方が良いだろ。

手榴弾安いし、音大きいし。

広範囲攻撃だから、拳銃と違って、当たりやすいし」


『は、反論された……』

『妖精さんが反抗期になった……?』


こうしている間にも、爆音で異変に気が付いた豚人間達が、次々と洞窟から出てきた。

どれも肥え太っているが、その中で目立つ体格の豚人間がいる。

身長2m。体重200キロはありそうなデブだ。シルバーが得た情報に拠れば、この豚人間がペロペロ党のボス『ペロペロ族長』な事は間違いない。

ペロペロ族長の目の前に、死体が三つ転がっているが、この豚は、それを無視して――


「ブヒィー!たまらん美少女ブヒィー!美しいブヒィー!

俺の子供を孕んでほしいブヒィー!」

「妖精娘とか最高ブヒィー!」

「こっちに降りてくるブヒィー!ペロペロ優しく舐めてあげるブヒィー!」


空を飛んでいる妖精さんばっかり見ていた。


『ちょwwwwwお前ら、仲間殺されたのにwwww』

『あいつら死に損かwwwww』

『死体を無視すんなwwwww』

『ひでぇwwwww命が安いwww』


「……もうやだ、この豚。

普通、仲間を殺されて怒る所だろ?

繁殖する事しか考えてないじゃないか!」


『減った分だけ増やせば良いんです』

『しかし、男の娘に子種を出しても、子供は増えない現実』


豚人間達は、次々と洞窟から出てくる。

百匹以上の豚顔が、顔を揃えて叫ぶ姿は、見苦しいにも程があった。


「こっちに降りてくるぶひぃー!ちっぱいでも、平等に愛する紳士の集団ブヒィィィ!

おじさんがペロペロして愛してあげるぶひぃー!」

「さっきの音はなんだったブヒィ?」

「そんな事はどうでも良いブヒィ!

今は、妖精娘をペロペロする事が大切ブヒィ!」


『なんという下半身に正直な奴ら』

『妖精さんが、絶世の美少女に見えている件』

『さぁ、妖精さん。作戦通りに事を進めるのです』


シルバーは、ここに来た目的を忘れそうになったが、何とか思い出した。

地上にいる豚人間どもを激怒させて、オッパイ党に攻め込ませる必要があるのだ。

だから、可能な限り、オッパイ党にその怒りを向けさせる必要がある。


(大丈夫だ、俺が頑張って演技すれば、作戦は成功する。

この作戦が終われば、女装をやめる事ができるんだ!)


息を大きく吸う。

失敗したときの事は考えない。

失敗したら、銃弾150発相当の金(3000円)が無駄になるから、考えたくない。

ペロペロ族長の目を睨みこみ、シルバーは叫んだ。


「ふ、ふははははははっ!

俺はオッパイ党に入った暗殺者シーナ!

今日は手始めに豚を一匹屠殺した!

ペロペロ族長!一ヶ月以内に貴様の命を貰い受ける!」


『ちょwwwww妖精さんが、手榴弾で吹き飛ばした豚は3匹だぞwwww』

『どんぶり役者すぎるwwwww』

『アドリブが全然出来ないだとっ……!』

『ダメだ、この妖精wwwww』


自身の大根役者っぷりを指摘され、シルバーは顔を真っ赤にした。

だが、それ以上に、巨漢のペロペロ族長は、顔を激怒で染め上げ、叫んでくる。


「お、オッパイ党の刺客ブヒィ?

あいつらは、エルフ娘を独占するゲスの群れの癖に、生意気ブヒィィイ!!

お嬢ちゃんも、俺たちの共同妻にしてペロペロ舐めまくって更生させてやるブヒィィイ!!

早く、こっちに来るブヒィー!

仲間を殺した罰として、俺の子供を産んでもらうブヒィー!

そうしたら、お嬢ちゃんのすべての罪は償われるブヒィー!

これが一般常識って奴に違いないブヒィー!」


『妖精さんモテモテwwww』

『豚で逆ハーレムできますぞ!』


(……エロい事ばっかり考える豚の群れで生活とか……そもそも男だとばれたら、殺されるぞ……。

もうやだ、こんな異世界生活)


作戦は順調に進行中。しかし、シルバーの心はブルーだった。

このまま上手くいけば、豚同士の内紛は必然的に発生する。それまでの辛抱だ。


(えと、ここでもう1匹殺しておく必要があったけ……?

いや、ここで手榴弾や銃器使って、手の内をばらすのは下策すぎる……。

もう、言葉による罵倒だけで良いよな……?

ペロペロ舐める事に拘っているから、それを全否定すれば良いんだっけ……?)


豚達が無数のセクハラ罵倒を浴びせてくる中、シルバーは顔を真っ赤にして、恥ずかしそうに叫んだ。


「な、なにがペロペロだ!

お、女の子は、ペロペロより揉まれる方がうれしいに決まっているだろ!

し、死んで出直して来い!こ、この豚野郎!

オッパイ党万歳っ!お、おっぱい、も、揉み揉み最高っ!」


『恥ずかしそうに言ってるところがたまらん』

『この脚本考え奴が鬼畜www』

『これ、成功するのか……?幾らなんでも無理――』


「ブヒィィィィ!!!

それは違うブヒィィィィイ!!

ペロペロは訓練された猛者がやらないと、女の子はその心地よさに気付かないだけブヒィィィ!!

早く降りてくるブヒィィィ!!

お嬢ちゃんにも、ペロペロの良さを教えてあげるブヒィィィ!!

そうすれば俺に惚れるブヒィィィィ!」


「ば、バァーカ!バァーカ!

ぺ、ペロペロ党なんて、どうせ●●コが小さい豚しか居ないんだろう!」


「ブヒィー!!今からそれを証明してやるブヒィー!!

こっちに降りてくるブヒィー!」


『やはり、妖精さんは大根役者っ……?』

『こんな演技に騙される豚が可愛いwww』


シルバーは、ひたすらペロペロ党を馬鹿にしまくった。

ネットの皆が考えた、悪辣なるセリフの数々が、シルバーの小さな声から奏でられる。

セリフの大半は、有名なツンデレヒロインによるツンデレセリフであり、男心をくすぐる内容だった。

その度に、豚人間は興奮し、激怒し、勃起し、頭と下半身に血を上らせる。


「ペロペロなんて変態っ!変態っ!変態ぃっー!」


「ブヒィ!たまらんブヒィ!」

「病みつきになりそうな罵倒ブヒィ!」

「オッパイ党を倒したら、この娘がお嫁さんに来てくれるらしいブヒィ!」

「それは良いブヒィッ!毎日、罵倒してほしいブヒィ!」


『ちょwwwwただのご褒美wwwww』

『妖精さんの声が可愛すぎて、罵倒になってないwww』

『俺らの事も罵倒してください!お願いします!』


ネットの皆も大喜び。

ひたすら恥ずかしそうに、シルバーは豚どもを罵倒し続けるのであった。


(俺、何をやってるんだろうっ……?

豚を倒すために……女装して、こんな恥ずかしい事しているのかっ……!

死にたいっ……!誰か助けてっ……!)


『お願いします!もっと罵倒してくださいっ!』

『妖精さんの声が病みつきになりそうwww』

『男の娘アイドルとかワロタwwwww』


「ブヒィー!もっと馬鹿にしてほしいブヒィー!」

「たまらん娘ブヒィー!」

「お嫁さんに来てほしいブヒィー!」




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ハニートラップ(´・ω・`)男とは、女で道を踏み外す生き物なり



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破片手榴弾×1 100円

消費100円


残金1万8800円 ⇒1万8700円


(´・ω・`)主人公が今まで購入したアイテムは、こっちに全部纏めた。

http://suliruku.futene.net/Z_saku_Syousetu/Tyouhen/Neltuto_tuuhan/Aitemu.html

【内政チート】 「活版印刷機を作ろう!」 日本「文字数多いから無理だわ」

http://suliruku.blogspot.jp/2016/05/blog-post_17.html


「俺は課金ガチャで美少女ハーレムする!」テンプレ

http://suliruku.blogspot.jp/2016/04/blog-post_536.html

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