ロスタイム

奥田啓

第1話




俺はサッカーバーで大きなスクリーンに映し出された日本代表戦の試合をみている。

実況があつくかたっている。

『激しい攻防の中、1点もいれられぬままです。さあロスタイムにはいりました。』

「おいおい・・・ひきわけになっちゃうのか?はやくきめてくれよ。こんなながびかせて一点も入れられないのはつまんねーぞ」

近くの客が文句を言っている。

俺はサッカーにそんなに興味があるわけではないが、ここはかわいい子があつまるのでナンパスポットとして活用している。

そしていま隣に座っている有村架純似の女の子をターゲットに絞っている。

さっきからその子が一喜一憂しているときに体をよく動かすのででっかいおっぱいが機動力の高さを発揮している。

おっぱいでかいし、かわいいし最高だな。絶対やりてぇ。



『ああっと、芦野選手がボールをはこんでいく・・・!』

『芦野選手体力はぴか一ですからね。強かった相手選手もだいぶ体力を消耗しているので切れがわるいです。芦野選手どんどんぬいていって・・・・・おおお!!!ゴール!!!』

おれのいたサッカーバーは歓声があがった。

男も女も関係なくうわーっとたちあがって肩を組み始める。

ここだまってました。

ハイタッチをして抱き合う。

普通だとむりだけどこのテンションだと自然だ。

こうやって触れ合うと普通よりも仲良くなりやすい。

人が触れ合うと警戒心がなくなるからだ。



「あーきもちかったわ」

俺はパンツをはき始める

ベットの上でさっきナンパしてきた有村架純似の女の子が熱視線をこちらにむけている。

さっきまですげぇつめたかったのに。

「ねえ、付き合いたいんだけど」

うわまたかよ。めんどくせぇやつかこいつも。

「いやおれそういうのはいいから。かすみちゃんもいい彼氏みつけなよ」といいながらシャワーをあびにいく

「そんな!さっきすきっていってくれたじゃん」

「好きとはいったけどつきあうとはいってないよ」

「こういうことするってことは付き合うんじゃないの?」

「ああ、こういうのなったことないの?かすみちゃん」

「いいなっておもったからこうなったわけで」

「いや、ほいほいこういうのについてきただけじゃんかすみちゃんはさ。っていうかもうこういうこというやつとつきあっても大変だからやめときなって」

「・・・・・・」

「いいひといるって、かすみちゃんなら!じゃ、シャワー浴びるんで。」

「・・・・・・わたしかすみって名前じゃないし、ひかりだし」



ホテルをでて、おれはかすみ似の女と別れてバイトにいく。

少し高めのピザ屋だ。時給がいいからやってるけど、もう26にもなってフリーターはやめようとは思うけどいきたいところもない。

俺はバイト着に着替えて仲間に挨拶してピザをつくる厨房に行く。

厨房にはもうすでにはいってるひとがいてはなしながらやっていた。

俺も厨房にはいり、慣れた手つきでつくりはじめる。

そういえば昨日の夕方からなにもたべてないでバイトきてしまった。

まあ心配はない。なにせめのまえにたくさんたべるものがあるんだから。

ほんらいの量を微妙にへらしてあまったものをよせあつめてピザを丸々作り始める。

それを他のピザをつくるのに滞らすことなく同時進行でやっていく。

バイトの中で俺が一番ながいので文句言う人もいないし。おいしくいただきます。

こういうときは飲食店ではたらくっていいよなあ最高だ。

ピザをほうばる。

バイトが終わり、外に出る。スマホをさわる。

「今日はだれんちいこうかな・・・みきんち今日あいてるみたいだしいくか。あいつここからだと微妙に遠いな・・・」

近くに原チャリがあり、幸運なことに鍵がささっていた。

だれのかはしらないがあとで返せばいいか。借りよう。

なかなかエンジンがかからない。

壊れてるから放置されてたのか?

何回かやったらエンジンがかかった。

よしよし。

原チャリを走らせ、みきが住むいいマンションのもとに。

「いつみてもいいかんじだな。さすがお嬢様」

エントランスでインターフォンをならす。

カメラはおさえておく

「どなたですかー」といつもの高い声。

「宅配便です」と低めの声をだす。

するとドアが開き、インターフォンが切れるまでまつ。

きれたのをかくにんしたらカメラから手を離しあいた扉を通る。

みきのいえのまえにつき、インターフォンをおす。

「はーい」とあけたすきにすかさず中に入る。

「あっちょっと和樹」

俺は勝手にソファにとびのる

向こうから怒ってるみきがやってくる

「ちょっと急になにきてんのもううそなんかついて」

「だってそうしないとはいらせてくれないじゃん?おまえんちすげぇ居心地いいんだもん。」

「いやでも急にそんなもう・・・」

「今日こことまらせてよ」

とぐいっとみきをおれのほうによせてキスをする

「みきがほしいんだからさ」

「もうしょうがないなぁ」

ふたりはベットの方に行く。


「もうすぐご飯もできるから」

にこやかにみきはいう。

「おーう」

とソファの上でスマホをいじりながら言う。

女って簡単だよな。

男はちんこで行動してるけど女も下の方を刺激したらすぐ態度変わるんだから同じようなもんだ。

みきがダイニングから料理をもってきてテーブルにならべる。

「はーいできたよーたべてね」

「さんきゅー」

おきあがりテーブルにつく。

こいつのめしはいつもうまいんだよな。

しかもこんなきれいな場所でくえるなんて。

今日もいい宿に泊まれて最高だなぁ。



2回戦もおわり、隣で寝ているみきのそばで

さっききたメールを見る。

『お兄ちゃんいつ帰ってくるの?顔みたいな』

妹からだった

妹は今大学生で祖父母と一緒に暮らしていて

俺は上京してきている。

2年くらい帰ってないのでそろそろ帰らなきゃと思うが。

「もうちょっとしたら帰るよ」とだけ打っておく。

携帯をとじてねむりにつく。


「えーとまってかないの?今日仕事ないのから暇なのに」

「バイトあっから。んじゃな」

「またきてね」

「まあたぶんな」

「そういってくるくせに」

「おう、んじゃ」

みきのマンションをでて、原チャリがあった。

へんなところにとめてたから撤去されてるかと思ったが安心した。

しかし今回もかかりづらいな。

借りてるとはいえつかいづらい。

やっとかかる。

原チャリを走らせてバイト先へ行く。

いつもの信号が長い。

バイト遅れてしまうな。

やっと変わりスピードをだす。

少し入り組んだ道をはしっていたら人が急にでてきたのであぶないと思い

ブレーキをかける。

ブレーキが利かない。

体をそらしてひとにあたらないようにしないと

ひとはよけられたがスピードはおちない

壁が迫ってくる。

あ、だめだ。

そう思った瞬間目の前が真っ暗になった。


俺死んだのか。

なんなんだ。

そうおもったとき、突然笛がなる

ぴーーーーー

なんだ。

すると周りが明るくなり

めのまえに俺がたおれている。

よけようとしたひとがかけよっているが

うごかない。

というか周りの人もうごいてない。

じかんがとまっているのか。

すると急に向こうからまたぴーっというおとが

それででてきたのは

審判のような恰好をした男性だった。ふえをもって

旗をふっている。

「ロスタイムどうする延長する?」

「は?」

「いや、人生の延長するかってこときいてんの」

「いやいみがわからない。っていうかだれですか」

「わたしはレフリー。人生の延長<ロスタイム>をジャッジするものだよ。」

「ああ、だからその恰好。」

「まあこれは趣味だけどね。こうしたほうがレフリー感あるでしょ。」

「今の時点で君は死んでるんだけど、延長ができるよってはなし」

「えってかやっぱしんでるのか」

「そうだよ、バイク事故で強い損傷。こりゃあたすからん」

「まじかよ・・・・」

俺は強く落ちこむ

「いやだからね、それでやりのこしたことはないのかってことで延長するかっていうね」

「延長?」

「そうそう、でもただってわけじゃないんだ。君がいままでしてきた行いに応じてどのくらいできるかって。延長は善ポイントに数によってきまるから」

「善ポイント・・・?」

「そうそう、日ごろい良い行いをしたかによってきまるんだ。君の善ポイントはねちょっとまってね。」

おもむろにアイパッドをとりだす。どこにそんなものをしまうところがあったのか

「えっそれアイパッド・・・」

「ああ、こういうのはデータ管理する時代なのよ。君は・・・えっと・・・うわっ」

「えっなんすか?」

「10pしかない。少なすぎでしょだめだこりゃ」

「えっなんでそんなにすくないんすか」

「うーん、きみね、いろんな女の子と都合よくつきあったり、盗み働いたりうそつきまくってるからだめだ。平常点がよくなさすぎる。」

「そういうのは善ポイントってのをへらすんすか?」

「そうそう、善ポイントはいいことをやったらふえるけどわるいことをしてるとひかれるんだよ」

「10pだと延長ってどのくらい・・・なんすか?」

「10秒」

「は?」

「10秒」

「すくねえ!なにもできねぇじゃん。ふざけんなよ」

「はい、年上にため口使ったからマイナス1pで9秒」

レフリーは渋い顔をしている。

「えっいやちょっとまってくださいよ」

「なによ」

「少なすぎませんその交換比率。1p1秒でしょ?」

「普通はもっとたまるんだよ平均値は1000000秒なんだけどね。きみすくなすぎるようける」

「なんなんすか。」

「まあこんなすくないのは君が悪いわもううけいれて。どうする使う?それか他の用途にもまわせるよ」

「ほかの用途?」

またアイパッドをだしてさっさっといじるとてわたしてくる

「これメニューね。」

「メニュー・・・?」受け取りながら言う。

容姿レベル上昇・・・頭脳レベル上昇・・・なんだこれ

いろんなことがかかれている。

「これなんすか。」

「来世への投資だよ。善ポイントで来世の容姿や頭脳、スポーツ、育つ家庭のレベルの可能性をあげるんだよ。まあこれ確定ではないけど、少しでも来世いいかんじになりたいもんでしょ」

「いやまそうですけど・・・」

使用ポイントをみると

容姿レベル上昇10000p

「たけぇこれむりでしょ」

「うん、むりだね」

「なんでいったんすか」

「いやがらせ・・・・一応説明義務があるから。」

「いまいやがらせっていったでしょ」

「いやいやあとでしらなかったっていって裁判沙汰になってもさ」

「いやしんでるんだから・・・」

「あまい!あの世でも裁判はあるんだよ」

「そ、そうなんすか」

「自分の魂に関しては人は厳しくなるもんよ。生きているときは優しい感じだったのに急に態度かえる人いるから。」

「そうなんすか・・・」

「んでどうする?延長は」

「いや10秒なんてなにもできないでしょう・・・やめておきます」

「あ、そうなんだ。じゃあこのままあの世に案内するね。ちょっとまって係りの人にLINEするから。」

「LINEするんだ・・・・」

「最近もっぱらLINEよ。グループとかもあるから。でも若い女の子にてをだしたからグループ外されたけど。」

「なにやってんすか」

「だめだ、既読無視されてるわ」

「ああ・・・あの世でも大変そうだな・・・」

「ちょっとでんわしてみる。」

「あ、はい・・・」

「だめだ電波わるいな」

「で、電波・・・・」

「ちょっと電波いいところ移動してくるわ」

レフリーが鍵を取り出して

その場であけるそぶりをすると

仰々しい教会のドアみたいなものがあらわれた。

「んじゃちょっとまっててね」

そこにはいり、レフリーきえていった。

な、なんなんだ・・・

ふっと自分の倒れてる姿を見る。

あらためてみると無様な死に方してるな

俺の人生つまんねぇことばっかだった。

いいことたくさんしてたらえんちょうできたのになあ。


はっとみると俺の携帯がころがっていた。

みるとだれかからメールがきてたみたいだ。

妹からだった。

『もうお兄ちゃんこないからわたしが東京にきました!どこにいるのー?早く案内してよね』

俺はさっきまでなかった思いが芽生えていた。

後ろから声がする。

「おまたせ、んじゃあいくぞ」

レフリーは俺を呼び出す。

「すいません、あの」

「えっ?なにどうした?」

「やっぱり延長していいですか?」

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ロスタイム 奥田啓 @iiniku70

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