世繋ぎノート

奥田啓

第1話

休み時間。みんなは息苦しいところから、息を吸えるところにでてきたかのように

友達同士しゃべりあっているなかおれは机につっぷしている。

すると携帯が鳴る。

新井からだ。

『今日は来るのか?』

毎日来るからめんどくさい。

返事はしないでおく。

再びつっぷす

俺は昨日から人気ゲームの最新作を徹夜でやっていたので寝不足なんだ。

こういう時間に寝とかないともうもたない。

今日も続きが気になるしやらないといけない。

眠りの世界にはいりそうところで

体を揺さぶられる。

「おいおいーおきろってー」

のびやかで高い声が聞こえる。

無視したい。だけどあまりに揺さぶってくるので

不機嫌そうに答える

「なんだよ」

顔を上げると早希がいた。

「これ知ってる?」

「なに?」

早希がスマホをみせてくる。

その画面には「前世占い」とかかれている。

「なんだよこれ」

「これさすっごいあたるらしい人がやってるんだけど」

「前世なんかだれもわかんねーだろ」

「いやちがうって普通の占いですごいひとなんだって。その人がやってるからあたってるんじゃないかって」

「前世占ったからって今に何の影響もないだろ」

「そんなことないってなんかたのしいじゃん。前世は王国のお姫様だったらーとかさ」

「くだらね、おれはねる」

「ちょっとちゃんときけよー!」

おこりながらぽかっとおれを軽くたたく。

「うるさい。おれはねむいんだよ」

「お試しで簡易占いもできるんだよ。自分の情報をいれたらでてくるの」

「はあ・・・」

「やってみなよおもしろいよ」

「おまえやったのか?」

「うん、まあ」

急に歯切れが悪くなる。

「なんだったんだ?」

「・・・・農民。」

吹き出してしまった。

「ああ、あってるあってる。さっき占い信用できなかったけど、それは信用しようかな。」

「なにそれむかつく。ってかやってよそっちも」

「だるいわ」

「わたしが入力してあげるから」

そういうとポチポチ入力しはじめた。

一通り入力し終わったようで

「分析中だって。さあ、農民でろー!」

「早希よりいいやつであればなんでもいいや」

「どうせ農民だって。あっでた、どれどれ」

早希が嬉しそうにスマホをみる。

すると険しい顔をした。

「んー?・・・看護婦?」

「は?看護婦?」

「ほら、そう書いてるよ」

そういってスマホの画面を見せてくる。

たしかにあなたの前世は看護婦とかいてある。

「こんなお世話する仕事ついてて、今と真逆だね。だらけきって授業のノートも人に頼ってるし」

「いいじゃん。早希のノートすげぇわかりやすいし。」

「いやまそれはうれしいけど・・・」

「ってかさっきの授業のもかしてくれ」

「たまには自分でとりなよ、まったく・・・」

そういいながら自分の机からノートをとりだし、おれに渡した。

ありがたく受け取る。

「ういさんきゅーんじゃねる」

「えーいまかいたりしないの」

早希は不満そうにいう。

「いまはもうねむいねる。んじゃな」

つっぷすと、早希の抗議する声だけがきこえた。

しかしその声はどんどん遠くなっていって、眠りは深くなっていった。



気が付くとあたりはけむりのようなものに囲まれていた。

なんだこれは?

そしてところどころに赤い明りがある。

その明かりがだんだんおおおきくなって

けむりが自分の中にはいりこんでいって

苦しくなる

ああたすけてくれ。

だれかいないのか

声が出ない。

どうすれば。

遠くで声がする。

「おーい・・・」

人だ。こっちだこっち。

頭の中で叫ぶ。

その声は大きくなっていく。

「おーい・・・」



「おい!!いつまでねてるんだ」

頭に衝撃が走る。

はっと顔を上げると険しい顔した歴史の先生の顔があった。

教科書をまるめているものを握りしめていた。

どうやらはたかれたらしい。

そうか、次は歴史だったか。この先生寝てたらすぐ起こしてくるんだよな。

ぬかったな。

「はやく教科書とノートをだせ。おまえだけだぞ、だしてないの」

「あ、はい。」

としぶしぶ机からとりだす。

先生はいつの間にか教壇に戻っていた

ノートを開いて前回の続きをだそうとしたら

続きのところに

見覚えのないものがかかれていた。

「今日はうまくできなかったけど、がんばればちゃんとできるはず。いまさら田舎には帰れない。わたしにはここしかないんだから」

なんだこれ。早希のいたずらだろうか?

黒板を見るともうどんどん板書がすすんでいる。

いそいでとらないと。



授業もそろそろおわりをむかえるころに

「じゃあ今日の内容をどうおもったか軽くレポートにまとめて明日中にだすこと」

と先生がいうとみながどんよりした声を出す

「うわまじかよ・・・だりぃな・・・」

締め切り急すぎんだろ。

「そんなにむずかしいことじゃない。できたら名前出席番号をかいて、歴史準備室の私のポストにいれておくこと。じゃあ今日はこれまで。日直号令して」

「起立、礼!」



今日の授業が終わり下駄箱で履き替えていると

「こらはやくノートかえしなさいよ」

早希があらわれていってくる。

「ああわりぃ。」

カバンからとりだしてわたす。

「あとおまえへんないたずらすんなよ俺のノートに」

早希は本気でわからないような顔をしてて

「なんのこと?」

「おれのノートにかいたろ」

「ほらこれだよ」

自分のノートをみせるためにとりだして

ノートをパラパラしていると

さっきのところをあけるとさっきのより文字が増えていた。

『お父さんもお母さんも応援してくれてる。もし今帰ったら二人とも悲しむ。きっとがんばってみせる。』

「なにこれしらないよ。」

「えっおまえじゃないの?だれだよこんな日記みたいなの」

「さあ・・・」

「まあいいや。」

靴を履き替えて歩き出す。

「あっちょっとまってよ」

早希が後ろから声をかける。

「ていうか今日部活いかなくていいの?」

「足の調子悪いから休む」

「そうなの?」

「そうだよ」

「最近休んでるね。」

「まあそうだな。」

ちらっとグランドをみるとサッカー部がランニングしている。

副キャプテンの新井が先頭で声出ししている。

すぐ早希に視線を戻す。


「じゃあ一緒に帰ろうよ」

「えー」

「えーってなにさ」

「いやべつに」

「入学してから全然一緒に帰ってないからたまにはいいじゃん」

「休むとおまえと帰ることになるのか。おちおち体調子悪くなれないわ」

「はあむかつくなにそれ」

「そのままのいみだけど」

「ほんといつもむかつく。んで調子よくノートかりてきてさ」

「それは感謝してるって。」

「まあいいけど」

そんなことをかわしあいながら

帰り道を歩く。


家に帰ると母親が迎える。

「あれ部活は?」

「足の調子悪いから」

「あら、そうなのね。」

早希と同じ反応する。

いつもとちがうことが駄目であることのように思えて

居心地が悪い。休むのは休みで面倒なこともおおい。


俺は2階にあがり、テレビをつけて昨日のゲームの続きをする。

いままで忙しくてできなかったゲームを

久しぶりにやると楽しい。

いいところまで進んでいくと嫌なことを思い出した。

そういえば歴史のレポート、明日までにやらなきゃいけないんだよな

そんな課題出さないでほしいわ。

机にすわり、カバンからノートを取り出す。

パラパラめくると

さっきのいたずらがきのページに

そこにはまた文字が増えていた。


がんばらなきゃいけないのに

たえろたえろたえろじぶん



なんなんだよこれ。

消しゴムをとりだし消そうとすると


なにもかいてないのに

ノートに次々と文字が書かれ始める

『どうしよう失敗してしまったもうだめなんだろうかわたしには無理なんだろうかたすけてだれかたすけてたすけて』

俺は変な叫び声をだしながら椅子から倒れた。

一階から母親が

「大丈夫―!?変な落としたけど」

おれは痛む支離をおさえながら

「だ、だいじょうぶだってなんでもない」

と答える。


起き上がって、もう一回机の上にのったノートをみる。

文字の動きはない。

気のせい?いやでも文字は増えてるよな。

なんなんだ。

するとノートが破れ始める。

「うわああああ!!」

はっとおもって手を押さえた。

ノートがびりびりにやぶかれて

やがて消えた。

なんなんだよ。

俺のノートはどうなっちまったんだ。

ノートをふたたびみると

文字がどんどんふえていってる。

『変なこと書くのはよそう。普通のことをかこう。』

怖すぎる。

消しゴムをとりだして

おもいっきり消し始める。

するといったん文字が増えなくなったと思ったら、

きゅうにそれに抵抗するように文字がふえた。

ずっと増え続ける文字をただ消していく

一体何が起こってるのか

息が荒くなり疲れた。

すると文字が

『あなたは誰?わたしの文字を消さないで』と問いかけてくる。

ペンを握って対抗して書く。

『いやこれはぼくのノートですけど』

『いやわたしのなんですけど』

『いやぼくのです。』

『っていうかあなた誰ですか?』

『ぼくは斎川知樹です。』

『わたしは浅田祐子です』

すぐに返事が来る気味が悪い。

メールの返事でもそんな早くないぞ。っていうか

すごい会話してるじゃん。。

なにがなんなのかわからないが奇跡でもおきたのか。

どこのだれかとつながっている。

『いくつですか?』

『17です』

『同い年だ』

『ほんとですか』

『どこに住んでるんですか?』

「相生町です。』

相生町・・・?きいたことないな

スマホでしらべようとしたら

下から母の声が

「ご飯よ!おりてきてらっしゃい!」

しょうがない、あとにしよう。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

世繋ぎノート 奥田啓 @iiniku70

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る