亡国の姫君
若狭屋 真夏(九代目)
指輪
レイナは「調律の巫女」と呼ばれている。「カオステラー」を「ストーリーテラー」に修復する力を持っている。
レイナはかつてとある想区の王女だったが、「カオステラー」に想区を崩壊された。
彼女一人が生き残り、無辜の民の人生は終わった。
レイナの胸には「憎しみ」のみが残った。
「姫ー」と大きな声で呼ぶのは王国の重臣だった「サコン」だ。
サコンは立派なひげを生やしている。もともと武将だったため筋骨隆々とした「戦士」だ。
サコンは「国が崩壊した日」たまたまほかの想区に外交のため一人出かけていた。
レイナの「許嫁(いいなずけ)」との結婚式の日にちを決めるためだった。
「サコン、姫はやめてよね」
「姫は姫でございます」
「国はもう滅んだのですよ」
「まったく、このサコンがいれば、、、、」と涙を流している。
怖い顔のくせに涙もろいところがサコンにはある。
ここは「シンデレラ想区」だ。
想区といってもその都からははるか遠い。
その都にレイナの婚約者がいる。名前は「トア王子」幼い時に一度だけあったことがあったが、どうやら「馬鹿王子」と評判が悪い。街の中を上半身裸で歩いているとか。歩きながら果物をほうばるとか。たまに「愛人がいる」という噂もあった。
「そろそろ立ちますか」といってサコンはキャンプの火を消した。
「そうね。早くトア様にあわないと、今頼れるのはサコンとトア様だけなんですから」
「姫ー」サコンは再び涙を流す。
それからキャンプを立ち都を目指す。
あと三日ほどで着くであろうか。
突然「ヴィラン」の群れが彼女たちを襲った。
急の襲撃にサコンは慌てた。
「姫。わしの後ろに。。」
そういうと槍を振るう。
しかしヴィランの群れは引かない。
倒しても倒しても襲い掛かってくる。
「きゃー」サコンの不意を突いてヴィランが襲ってきた。
「危ない」とサコンが叫んだ。
その時である。
レイナを襲おうとしたヴィランが血を流し倒れた。
一人の青年が剣を持っていた。
少年は次々とヴィランを倒していく。
これにつられサコンが槍でヴィランたちを倒す。
「勢いに負けたのか」ヴィランの群れは去っていった。
「はぁ、はぁ」二人の呼吸は荒かった。
「なにものか知らぬが、かたじけない」
「おっさんもなかなかやるじゃねぇか」
「おっさん?わしはまだ29だ。」
「おっさんだよ、29は」
そういうと二人は地面に横になった。
しばらくしてサコンはこの場所にキャンプの用意をした。
これ以上動くのは危ない、そう判断したからだ。
火をおこしその前に三人は座った。
「俺の名前はジャン。シンデレラ想区の住人だ。住人っていっても何の役目も与えられていないけどな。」
「私はレイナ、今はなくなってしまったけど、、オランド国の姫だったの。」
「オランド国?この前崩壊した想区じゃねぇか。たしかトア王子の婚約者じゃねえか?」
「なんだ、くわしいな。おまえ」
「だってトアとは幼なじみだからな。」
「じゃあ、トア様の事を知っているのね?」
「あいつはなかなかいいやつだぞ。」
「馬鹿王子って言われてはいるが。。。」サコンが口を挟む。
「馬鹿じゃねぇよ。あいつは子分たちを連れて都を回って悪いやつらを成敗して歩いてるんだ。それに民衆にも慕われてる。」
「あ、愛人がいるって聞いたけど。。。」とレイナは勇気を出して聞いてみた。
「愛人?? はっはっは」
「愛人なんていねぇよ。まあ、たしかに顔はいいからトアはモテるけどな。トアは「沈黙の霧」の事で精一杯なんだ。それに「可愛い姫」がいるそうじゃねえか?まあお前の事だろうがな」
「ポッ」とレイナの顔が赤くなる。
「よろしかったですな。姫。「馬鹿王子」でなくて。。。」サコンは再び泣く。
それは、よかったのか?と思うのだが。。。。
ジャンはレイナの指を見る。指には指輪がしてあった。
「お前、いいものつけてるな」
「これ?これはトア様から送られたものなの」再び頬を赤くする。
「そういえば、この指輪が送られてすぐ想区が滅びたわ」
サコンはそれをじっと見た。
「姫これは「守護の指輪」ですぞ。」
「守護の指輪?」
「この指輪は姫を守ったのですな。」
「それで私だけが。。。。」
つまりはこの指輪をしていなかった民は存在を消された。
「トア。。さま。。」
そういうとレイナの目から涙が流れてくる。
トアは「迫りくる危機」からレイナを守るためこの指輪を送ったのだ。
「この指輪は古の鉄「オリハルコン」から作られていると聞きました。」
「オリハルコンはまがまがしいものから持ち主を守ると伝えられております。」
さすがにオランド国の重臣の家柄のサコンだ。その知識は豊富だ。
「とりあえず、今日は寝るか。どうせ、急いでも物騒な道のりだからな」
「そうね、ジャンは行き先はあるの?」
「都をめざしているんだ。」
「何のために?」
「シンデレラを取り戻すためさ」
「あの「馬鹿王子」からな。」
トアには弟がいる。名前は「ルイ」他国に伝わる情報だと「礼儀正しく賢い」と評判だった。おそらくジャンがいう「馬鹿王子」はルイの事だろう。
「評判なんてあてにならないのね」
あきれたようにレイナは微笑んだ。
とりあえず三人は「都を目指す」という事でともに「利害」が一致した。
こうして旅が始まった。
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