18#家族との再会、そして・・・

 

オオカミのムウガの頬を、爽やかな微風が撫でて吹いていた。


 「お兄ちゃん!!元気?」


 「色々大変だったねえ!」


 「ムウガちゃん!一緒に遊ぼうぜ!!」


 兄妹姉は、ムウガに喜び溢れてやって来た。


 「ボウガぁ!モウガぁ!バルガぁ!」「なあに?」


 「大きくなったなあ!」「ムウガも大きくなったよー!!」


 「本当!?」


 すっかり親オオカミと同じ体格に成長した子オオカミ達は、お互いじゃれあい、おいかけっこをして楽しんだ。


 「体は大きくても、まだ子供だねえ。」


 母オオカミは言った。


 「でも、ムウガは俺の跡継ぎの素質があるぞ!俺達を追いかけてきたんだからな。」

 

 「わー速い!!」「追い付けないわ!!」「ムウガ兄ちゃんすごーい!」


 「ほうら!ムウガはオオカミのリーダーに成れる素質が充分にあるよ!」


 両親は、ヤンチャな我が子を暖かい目で見届けていた。


 

 ムウガは、風船をいっぱい付けて飛ぶように軽やかに走り回った。


 ボウガやモウガやバルガも、ムウガの真似をして軽やかに走ろうとしたとたん、




 ドタッ!!




 と転けた。


 「あらら。」戻ってきたムウガは、 無様な格好の兄妹の鼻と鼻をお互い寄せあってお互いの匂いを嗅ぐと、




 うおおおおおーーーん!!




 遠吠えをした。




 うおおおおおーーーん!!


 うおおおおおーーーん!!




 兄妹も、やがて遠吠えを始めた。




 うおおおおおおーーーん!!


 うおおおおおーーーん!!



 ボウガやモウガ、バルガそしてムウガの吠え声はお互い混じりあって、絶妙なハーモニーを醸し出した。




 うおおおーーん!!


 うおおおおおーーーん!!



 

「私も混ぜて!!」「俺もやる!!」


 両親も、我が子のコーラスに参加した。


 うおおおおおおーーーん!!


 うおおおおおおーーーん!!




 オオカミ家族の遠吠えはやがて、鉛色の空に太陽を呼んだ。

 ぽつぽつと光の柱が差し込み、荒野を明るく照らし出した。




 うおおおおおおーーーん!!


 うおおおおおおーーーん!!




 オオカミ家族の幸せな遠吠えは、荒野から山の隅々に大きく響き渡った。




 うおおおおおおーーーん!!


 うおおおおおおーーーん!!




 オオカミ家族の遠吠えに反応して、どんどんとオオカミの群れが駆け付けて一緒に遠吠え

を始めた。




 うおおおおおおーーーん!!


 うおおおおおおーーーん!!


 うおおおおおおーーーん!!




 それは、オオカミ達の絆と永遠の幸せへの祈りを込め、各々のオオカミ達しか見えない風船を大きく膨らませ、大空へ飛ばそうとしているように見えた。




 

うおおおおおおーーーん!!


うおおおおおおーーーん!!


うおおおおおおーーーん!!








 

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