第153話:偽金成

 冬の嵐が続く中、半日で積雪となる地域も少なくはない。記者会見に応じた「ニヤニヤ動画」主催の男3人は飲食店で食事をしないにも関わらず、大量の注文をし、店側を困らせたという。

 ニヤニヤ生放送主の同業者からすると悪評にしかならない。しかしそんな中、小学生のなりたいランキングは相変わらずニヤ生主だそうだ。将来の日本国が心配な情景である。しかし、それもこの二人の戦いに大きく左右される。

 金成と昴流、この両者が互いに引かないということだ。


「イリュージョン」

 昴流が突然、金成の姿に変身した。

「え?」

 金成はびっくりした。まさに瓜二つと言ったところである。

「お前、その姿は」

「これが俺のスキル:イリュージョン。相手を視認し、相手の能力を自在に引き出せるのさ。さあ、俺にお前のスキルマスターを見してくれ」

 突然偽金成の身体が雷に覆われた。これはライジングサンダー。

一気に金成に迫り込み、殴り掛かる。金成も雷には雷で応対する。

 お互いに譲らなかった。そこで金成はテレポートで飛ぶ。

しかし昴流もテレポートで飛んだ。まさに金成の行動そのものを再現している。

「実はこの姿でさっき人を殺してきた」

「だから俺が人殺し扱いされているわけだな。そりゃ納得だわ」

「大人しく縄につけ。そうすれば楽に殺してやるよ」

「お断りだな。お前が死ねよぼけ」

 

スキルマスター発動:アリストテレス


 斥力で吹き飛ばす。しかし、


「アリストテレス:引力」

 昴流も対抗する。

「お前、何故こんなに俺の能力を使える?」

「伊弉冉にお前の動きはばっちり撮影させていたからな」

「あの時のビデオカメラか」


スキルマスター発動:アルティメットアイズ


 互いに未来を視ながらの戦いになるのだろうか。

案の定、相手も使ってきた。

「何故あいつも併用が出来るんだ?これを使いこなせるのはかなり時間がかかったのに」

 阿修羅が飛んだ。しかし、

「阿修羅まずい!捕まるぞ」

「なに?」

 突然見えない鎖が阿修羅の身体を覆った。

「ブロックチェーン」

 昴流はブロックチェーンにより、阿修羅を拘束した。

「中々いい能力をお持ちだな金成」

「自分自身と戦うことになるとは、これはかなりやっかいだな」

「ちなみに君の能力を使いつつも、俺は別の能力も使える」

「陰陽のようだなまるで」

「ご名答、俺には陰陽師の力が宿る」

 突然昴流の周囲から炎が発生し、それを金成にぶつける。


スキルマスター発動:ファイヤー


 炎には炎で対抗する。しかし、昴流がテレポートで飛ぶ。

「ちっ」

 蒼天流:真空刃を使った。軽くいなされ、顔面に膝蹴りを喰らう。

「ぐっ」

「古代種」

 地面から突然古代の恐竜が現れ、金成に噛みつく。

「ぐああ」

 骨がバキバキに折られていく。


スキルマスター発動:フェニックス


 傷を回復させていく。

「いつまでもつかな?」


スキルマスター発動:トレード


 パチンと指を鳴らし、昴流と入れ替わり、昴流が次に噛みつかれた。

「ぐああ」

「ざまあ」

 能力を昴流が解いた。

「舐めやがって…」

「調子に乗るからだ」

「フェニックス」

 昴流の傷が回復していく。

「おいおい、なんでも使えるんかよ」

「言っただろ、イリュージョンは相手の能力見たもの全て使えるとな。さあ、どんどん使ってもらっていいんだぞ。お前のメモリはどんどん使わせてもらう」

「奴は一体俺のどこまで真似をしてくるんだ?」

 初めての経験で正直金成も困惑気味だ。スキルハンターを使う夜叉にも同様したが、まさかスキルマスターを使う自分と同じ力を持つ者が相手となるのはかなりやっかいであった。

 その上阿修羅も拘束されてしまっている。いっそブロックチェーンで拘束すべきかと感じたが、相手に究極の両目がある以上、未来を見透かされている。

 だがこれだけの能力を得るには何かしらのリスクはあったはずだと感じる。それを探すまでの我慢比べであるということは金成も既に理解していた。

 奴の趣味嗜好を探る以外に方法はなく、周りのサポートにも早くいかねば、相手は同じくSランク、長期戦は仲間の死を意味することも理解してた。

 やるならば短期決戦でいくしかなく、相手にも体力があるのであれば、スキルを多用させるか能力を解除させなければフェニックスでいくらでも回復されてしまうからだ。

 体力面ではかなり不利である。先程の天照月読戦でかなり消耗してしまったからだ。

「全く持って大山鳴動して鼠一匹」

「は?」

 フェニックスを使う場合は鳳凰と違って常に維持しておかなければいけない。つまり発動できないほどの致命傷、つまり一瞬で死に至らしめれば使うまでも無く、相手を死に至らしめることができるというわけだ。

 そこを狙う以外に勝ち目はないと金成は悟った。

「まるで真似碁だな。天元さえ押さえれば後は相手の動きに合わせて鏡のように動けば勝てるとでも考えているようだが、仇になることを教えてやるよ」

「それは楽しみだな、俺将棋や囲碁で負けたことないから今まで」

「そりゃ俺も同じだ」


 二人の頭脳戦、そして肉弾戦が激しさを一掃増した。

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