第150話:王最強の盾

「あいつだ!指名手配されていた高校生というのは!」

 一人の住民が金成を指さしながらそう叫んだ。

「あいつが俺たちの街を滅ぼしたんだ」

「え?」

 金成にとっては何がなんだかわからない状況が続いた。

何故自分が犯人扱いされなければいけないのかよくわからない状態が続いた。

「人殺しよー!」

 次々と人が集まる。

「おいおい皆さん何か勘違いしてやしないか?あいつは英雄になる男だぜ?」

 大穴牟遅が擁護しようにも、それをはねのけて金成を悪人扱いしている住民達が多い。

 目黒が1人の住民に近づき、サイコメトリーをした。

過去の記憶断片を辿り、何が起きたのかを探ってみた。

「これは・・・」

「目黒、何が見えた?」

 阿修羅が問う。

「金成が家を燃やしたり、人を殺したりしている。こいつらが言うのは事実」

「そんなわけないだろ!金成は埼玉国から戻って以降、ずっと俺達と同じく行動をしていた」

「とにかくあいつを捕まえて警察に突き出そう」

 大勢の民衆が集まり、みな金成を捕まえようとした。

「冗談きついぜ全く」

 金成は呆れ顔だ。身に覚えが全くないからである。


 突然、住民が切り裂かれていった。

「ぎゃああ」

 刃物で切り裂かれたかのように次々と倒れていく。

「きゃああああ!」

 悲鳴が飛び交う。

「?」

 その場にいたものたち全員が疑問に感じた。

突然通り魔が次々と刺していくような感じがしたのだ。

「この殺気はまさか!」

 阿修羅がこの冷徹なやり方に見覚えがあり、瞬時に悟った。

「金成まずいぞ!王最強の盾『牟田』が近くにいるぞ!」

「え?」

 突如金成は口から血を吹き出した。

同時に胸から流血。刺されたのだ。


「ふぉふぉふぉ、まさかこんな小僧共に天照月読コンビがのぉ」

 どこかから声が聞こえる。ご存知の通り、牟田は姿が見えない。

「おぉ!あの方々は!」

 住民が神をも拝むかのように見る矢先には王最強の盾『入道』ならびに『昴流』がその場に君臨していたからである。

 だが牟田の存在には誰も気づかず、そして住民を殺害したのも牟田ではなく金成が犯行に及んだものと睨まれていた。

「こういうことですか?夜叉の言っていた悪人がヒーローになるということは」

「つまりは金成が犯罪を既に犯しており、俺たちがそいつらを殺せば俺たちは英雄ってなわけね」

「秋葉王の言う、勝てば官軍負ければ賊軍というわけじゃのぉ」

「おいおい、なんつうメンツだよ」

 阿修羅が汗を流した。

「いきなり王最強の盾3名を俺達にぶつけてくるとか、正気の沙汰かよ?秋葉王」

 いずれも3名ともSランク以上を超えており、その一人一人が城一つを落城させる力を持つまさに王を守る最強の盾として普段は各地域の指揮を任されているが、今回の特例により3名同時に出動してきたというわけである。

 本来のRPGゲームであれば、余裕で勇者を詰まさせることによりその後のゲームの進行が出来ないぐらいプレイヤーを絶望の淵に落とす行為であり、ゲーム会社も売り上げに直結するような下手な真似は一切できない処遇であるが、この仮想世界ではない現実世界に於いてはごく当たり前の風景を、あえて実感しやすい形に金成達に修羅場をぶつけてきたというわけである。


「終わったな」

 阿修羅は諦めてしまった。ランチェスターどころではなくなった。これでは完全に包囲されているからである。

 戦わずして勝つはずの戦略も、これだけの奇襲作戦が諸バレしていてはもはや太刀打ちできるだけの圧倒的な準備力は兼ね備えていないからである。

「絶望に生きろ。裏切り者が」

 入道が怒りの頂点に立ちつつあった。


スキルマスター発動:フェニックス


「まだあきらめるな」

 金成は立ち上がった。

「ほぉ、あれが鳳凰から能力を奪ったという」

「金成」

「俺たちはSSランクを討ちにきたんだ。Sランク3名ぐらいでがたがたぬかすな」

「しかし」

「断じて行えば鬼神もこれを避く」

「ああ…」

 強い意志を持って挑めば大抵のことは成し遂げられるという言葉であった。

「神は細部に宿る」

 細かいことにも注意が必要というわけだ。

阿修羅は気を取り直した。まずは目の前にいる入道と昴流をたたかねばいけないと感じたのだ。

 だが一番の不安要素は阿修羅も敵に回したくはない牟田の存在である。

姿が見えないだけでなく、音も気配もない。それをどう感知すればいいのか分からないので攻略がずっと困難であったからだ。

 これをどう金成が攻略するのかにもよるわけだが、きっと多くのスキルを使って対応できるだろうとは信じている。

 戦いはまだまだ続く。

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