第128話:秘密基地

 険しい森の中、太陽が出ていなければ迷ってしまいそうな小さなジャングルのような場所。木々は折れ、それを誰も直すことなく、ただ木々は折れ果ててしまい、虫が湧き、茶色から灰色へと変わり果てた何十年何百年も立つ木々がそこに横たわる。誰もがそれに目も向けず未だにそこは放置されていた。

 金成、阿修羅、目黒の3人は秘密基地になにかあるのではないかと模索したのだ。

「こんなところに秘密基地があるなんてな、思いもしない」

「たぶん俺にとって居心地がよかった場所なんでしょう」

 金成は少しずつ記憶を取り戻しつつあった。


 小一時間が経つ。それほどまでに迷路となっており、誰もその場所に辿り着けず、唯一その場所を知るのが金成と親友の渋谷、それに原宿や池袋と言ったところである。

 しかし今はその3名ももうこの世にはいない。まだそれを金成は思い出してはいない。

 基地は洞窟の中である。そこにはちょっとした寝巻やすだれのカーテンなどで仕切りをされており、中には薪が置いてあり、焚火が出来る。

 近くには川が流れており、そこでたまに魚が釣れたりして、食事を取ることもある。サバイバルにはまさに持って来いの場所である。

「ここだな」

「何か思い出したか?」

「ああ、二人でよくここに来た。そして、俺はここで目標を語った」

「そういえば俺が記憶の断片を読み取った時、強い衝動により過去を読み取れなかったが、君には何か大事にしているものがあるのか?例えば本とか」

「本…?」

 金成は洞窟の中をうろうろとした。蝋燭に灯された火はこの空間では薄暗くも照らしてくれていた。

「確か…3番目の穴に」

 でこぼこの穴がいくつも空いており、そこに置いているのを思い出すかのように手を突っ込んだ。

 金成は何かを掴み取り、それをひっぱり出した。

それは金成の祖父が残した本「自持思想論~2つの世界」であった。


 金成はその本を見た瞬間に急に脳が揺らいだ。

「あっあっあっ」

 ぐらぐらと脳裏が翻し、ページをめくる。しかし文字は読み取れない。

フラッシュバックが起こる中、頑張って文字を辿る。


『この世の中で誰もが所持しており、最も資産価値のあるのは時間。1日24時間をどう活用するかでその人の人生が決まる』


 金成は記憶を次々と復活させていく。

「俺はスキルマスターを目指す…。学校は退屈で行かなかった。大阪国の浪速王が神の創りし壁を初めて破壊し、領土を拡げた。俺は日本統治をおこなうため、各国の王を討伐し、日本の頂点に…うああああああ!」

 金成は叫んだ。脳が痛みを伴い、じたばたともがき苦しむ。

数々の記憶が戻り、そこには友達の死。目の前で原宿、池袋そして渋谷が殺された。秋葉王の手により、大事なものを失った。人類は失って初めて自分の愚かさに気づかされることを苦痛と共に味わう。

 金成はその場で倒れ込んだ。

「大丈夫か?」

「とりあえず今日はここで休むとしよう。ちょっとしたショックでまた倒れたんだろう」

 阿修羅と目黒は寝巻の準備をした。

「なあ、あんたは何でこんな少年についてきたんだ?王直属の戦士だったんだろ?」

「素戔嗚が言うようにな、賭けてみたくなったんだ。この少年の底知れないパワーにな」

「まあ俺は転覆など面白いことがみれりゃそれでいい。この国がどうなろうと俺の知ったこっちゃない。ただ、いつ死ぬか分からない人生にちょっとでも花を咲かせたくてな。まあ特に、不正に働くような奴らはなんかむかつくんだよな~、正直言って目障りだ」

「まあ君の過去を視る力もかなり有力だな。金成の記憶が戻りそうだ」

「まあ人のために使ったのは今回が初めてかもな。いつも悪いことにしか使っていなかったからな」

 二人は夜を明かした。


 翌日の事であった。

「おはよう金成」

「おはよう」

 金成は自持思想論を読んでいた。

「思い出したか?」

「ああ、何もかもな。今すぐ秋葉王を殺しに行きたいが、それは無理だってこともな。まだ準備力が足りない」

「そうだな、執事も強敵だ。やはり此方も強力な仲間が大勢必要になるだろう」

「焦る必要は無いが、ゆったりしてると相手にも武力を強化させる時間を与えてしまうことになるな」

「どうする?」

「正面突破なんてのはダメだ。奇襲作戦でやはりいくしかない。敵に今から攻撃しにいくから罠張って待ってろよと言わんばかりの戦略じゃだめだ。大手企業に勝つためには中小企業が取らねばいけないビジネスなんてのはいくらでも検討がつくからな。力のあるものの前にただの力比べは無力だ」

 金成は立ち上がった。

「それより阿修羅、俺たちはなんで無事に生きてここにいられるんだ?あんたのテレポートでも間に合わなかったんだろ?」

「ああそうだな、その理由を伝えなければいけないな。今度は俺が道案内しよう。あるところについてきな」

「わかった」

 3人は再び足を運び、今度は阿修羅が先陣を切って2人を誘導した。

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