第127話:思念
マグニチュード8.0の地震が発生し、人々は避難をした。
生き埋めとなってしまった住民を消防隊が救助に入る。地殻変動を得意とする魔法士などが不在の時にはこういった災害での現場ではかなりの時間を要することが多い。
秋田国に於いても突如震度5の地震が発生したが津波の心配はなかった。災害というものはいつどこで起きるか分からないものである。
だからこそ人々は「自然の力」というものを魔法で使えないかの研究に励む。地震を起こせる力、津波を呼ぶ魔力、雷雲を引き寄せる力、台風を自在に操る力などである。
最もと注視しているのが「太陽フレア」であった。午後7時30分頃に北海国の方で最も観測しやすいということでテレビニュースにもなった。
だが太陽フレアが起きると地球の磁場が乱れ、航空機やGPSなどにも影響を与えやすく、経済を直撃しやすい。そのピークも過ぎ、今は一段落している。
夕刻を過ぎ、金成と阿修羅とジャニーズ風の男は3人でラーメンを食べていた。
「あんた名前は?」
「俺は目黒だ。よろしくな」
ズルズルとラーメンをすする。
「あんたもその能力を使って何かやっているのか?」
「まあさっきの占い師を貶める他にもさ、痴漢冤罪企む奴ら貶めたり、後は不倫報道などの真実突き止めたり、犯人の追跡なんかに色々と使えるわな。まあ最初は金儲けで使いたい放題だったけど、だんだんと飽きてきたわ。有名になるのも嫌だしね」
「相手の過去が視れるって結構メリット多いな」
「そうでもないさ、見たくないものまでフラッシュバックされる。人が死んでいく様を最初見ていた時は吐き気が止まらなかったさ。しかしそれも慣れ親しめば生活の一部へと変化していくんだなと今となっては思うよ。一番見たくないのは俺自身の過去ってわけだからな。どういうわけか、自分の過去には触れることが出来ないようだな」
「自分自身で拒否反応を出してるだけかもしれないぜ?」
「まあそれでも自分の過去には興味が無いさ。相手の過去にも興味が無いが、何か面白い事件にでも発展するなら喜んで腕を振舞うさ」
「それで早速だが、俺の出身地を探ってほしい。名前ぐらいしか思い出せず、他にどんな身内がいたのかもわからない」
「まあいいけど」
目黒は金成の頭に触れ、過去を読み取った。
「ちなみにそれは何ていう能力なんだ?」
阿修羅が疑問を投げかける。
「サイコメトリー。残留思念を読み解くが、俺のは相手の目から読み取ったレンズをそのまま脳に直接電波し読み取れる。それをビデオデッキなどに移し替えることだったで可能だ。対象者は最悪人でなくても、人を映し出す鏡ならば何でもいける」
「かなり範囲が広いな、その能力があれば相手の仕掛けた罠なども全てお見通しにできそうだな」
「あんたらみたいな強靭な肉体持ってるならいいけどさ、俺にはそんな力はない。読み取るのが精いっぱいだ。っと、だいたい過去が読み取れた」
「どんな過去だった?」
「金成、君は東京国東区の出身だな。とりあえず自宅まで何となく標識で分かったからそこに向かおう」
3人は金成の自宅に向かった。
「これは…」
金成の自宅に着いた。しかしそこには金成の家は無かった。
「既に秋葉王の手がこんなところにまで及んでいたとは。金成の両親は無事なのだろうか?」
「さあてね、みたけりゃ見るけどどうする金成?」
「いや、今は感傷に浸っている場合ではない。一刻も早く記憶を取り戻したい」
「そんなら次は学校とかかなー?」
学校に向かった。
しかし既に東高校も跡地へと変わっていた。
「この大きなクレーターは…伊弉諾の技だな」
阿修羅が跡地から何が起きていたのか読み取った。
「金成にとっては家と学校が一番の思い入れある場所なんかいな?それだとこれ以上記憶の断片探るには中々難しいぞ」
目黒は頭を掻きながら答える。
「家や学校は思い出せない。でもこの通学路は覚えている。でも俺はいつもこの通学路を通らず、何か別のところにいたような気がする」
「そうかい?ならそこを探すしかないというわけだな」
「目黒頼む、俺の過去をもうちょっと探ってくれ。俺が仲間たちとどういったところをよく行き来していたのか」
「わかったよ」
もっと金成の記憶の奥深くに眠る、思い入れのあるものを探さなければいけなかった。目黒も必死に探してみた。
「国会議事堂を攻め立てたり、カフェにいったりと、他にも銀行を襲ったりあんた色々と犯罪行為に手を染めてるね。カプモンDAで警察ハントしたりとこれ一体何をやってたんだ?」
「うーん、思い出したらまた話たいね」
「んん~」
目黒が突然目を開けた。
「これは…」
「どうした?」
「俺にも見えない過去というものがある。映像が途絶えている、こんなこと初めてだ」
「そんなことありえるのか?」
「分からない、これが何なのか興味があるが、金成の過去に色々とありそうだな」
「どこを指している」
「金成と渋谷の秘密基地と呼ばれたところだ」
金成が目黒から「渋谷」というワードを聞いてハッとした。
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