第123話:秋葉王⑥
「準備運動はこのぐらいにして、そろそろ本格的にやろうか」
秋葉王の身体がみるみる強靭な肉体へと変化を遂げる。
「まだ上のステージがあるというのか?」
金成は冷や汗を掻く。
スキルマスター連携:ライジングサンダー&アルティメットアイズ
秋葉王の速度に追いつく為にも常に雷の速度で動かなければならない。そして相手の行動を先読みしなければ、致命的である。
「むん!」
秋葉王の姿が消えた。しかし金成の両目にははっきりとうつっている。
自身を斬りつけられたビジョンを見た。その場を金成は飛ぶ。しかし、
「遅いね!」
秋葉王が未来の情報と予想を反する行動をしてきたのだ。
「なに?」
一気に金成は斬りつけられた。
ズバッ
ズバッ
「ぐはあ」
金成は全身を斬りつけられていく。雷の鎧を纏っていても、生身で斬られている感覚である。
全身に痛みが拡がり、膝をつく。
「金成ー!」
渋谷が叫ぶ。
「これはやばい」
「死ね!」
秋葉王が背後に周り、突き刺そうとする。
スキルマスター発動:テレポーテーション
一瞬で消えなければならない。雷の速度をも秋葉王の身体能力は上回っている。
しかし金成の行動範囲は死角になる場所以外、そしてもしそれ以外で行動しようとするならば必ず四次元空間を描かなければならない。その隙を秋葉王は逃さなかった。ボス戦で「にげる」のコマンドを使わせない常套手段である。
「このままいけば20年後には780ある大学のうち100校くらい不要だな」
知能の低下もさることながら、日本経済の低迷を示唆する。金成にはなすすべがない。弱肉強食とはまさにこのことだ。
「これがAランクとSSランクの戦い。まるで歯が立たない」
スキルマスター発動:フェニックス
傷を再生する。しかし一瞬で秋葉王に攻められる。
「回復間に合うかな?」
秋葉王が目の前に現れた。
超高速で連撃を入れてくる。回復してはダメージを受けての繰り返しである。
「テレポート」
金成は姿を消す。しかし秋葉王にはどこに金成が移動するか手に取るようにわかる。すぐに近寄り斬りつけ、回復させる余裕を与えない。
「まずいなあっち」
阿修羅は執事の攻撃を避けながらも金成を気にしている。
「こっちも十分まずいと思わないかね?」
執事の連撃は阿修羅でも避けることが難しい。秋葉王も執事も化け物レベルだ。
戦いが長引けば阿修羅が不利である。たとえ王直属の戦士を束ねる男としても、AAAランク相手では根を上げるのは必須。それにまだ王最強の盾が3名残っている。いつこの部屋に戻ってくるかもわからないわけである。特に「牟田」に関しては気配を感じさせないので、いつ自身の首が飛ぶかもわからぬ恐怖が存在している。
味方のうちは頼もしいが、敵に回れば牟田ほどやっかいな敵はいない。それでも「油断」をウリにする鳳凰を討伐できたことはデカいと感じた。
「まだ動けるか?」
秋葉王がダッシュで切りかかる。金成は防戦一方だ。
「まずいな、スキル発動の時間がかなり落ち込んできた」
幾多の戦いに於いて金成はスキルの連発によって発動条件を満たせないことが多いことを知った。阿修羅や素戔嗚の戦いでも、その速度は凌駕された。
まさに土壇場に立っていた。フェニックスでの回復にも限度が出てきたのである。
「やはり連戦はきつかったな」
金成は意識が飛びそうな中での戦いに立っていた。
「これが死の直前に見える光景なんだろうか?」
意識は既にあちら側の世界、そして時間がゆっくり流れるのがよくわかる。
金成はいよいよ息を切らし始めた。倒れる寸前だ。
「そろそろ鳳凰の力を維持することが出来なくなったようだな?」
もう何百と斬りつけられ、それを修復したか分からないぐらいである。わずか数分の出来事が長時間続いているかのようだ。これが達人同士の戦いというわけだろうか?しかし、SSランクというものは言葉通り、かなりの危険人物レベルを表しているのだなということを理解した。ハッタリなどではなく、その積み上げてきた実力が今の天地の差を分かち合うものであると感じ取ったのだ。
「もう限界だ」
金成は意識がもうろうとしていた。
「さらばだ、小僧」
秋葉王は剣を振り上げた。その時であった。
秋葉王に炎の剣士が襲い掛かる。
「熱いなおい」
秋葉王は少し顔を火傷した。
「てめえこれ以上金成を傷つけたら許さねえぞ」
渋谷が炎を吹き出しながら、金成と秋葉王に近づいてくる。
「紅蓮の炎」
極熱を出し、秋葉王に一気に炎で襲い掛かる。
「ふん」
秋葉王は剣を扇風機のように高速で回転させ、炎を吹き飛ばす。
「秋葉王、俺が相手だ!」
「よせ渋谷!逃げてくれ」
「金成、俺はお前と友達で入れて幸せだったぜ!今俺は最高にいい気分だ」
「ダメだ渋谷、よせ」
「金成、もし俺が死んでも俺の事忘れずに、あの基地にまた来てくれよな」
「渋谷!」
「アキバミクス第一の矢」
渋谷にアキバミクス第一の矢を打ち付けた。途端に渋谷の脳裏に「お金」がもわーと思い浮かんだ。
「すまんが、君の返答を待つ気はない」
渋谷が身体を止めた瞬間、秋葉王は剣を渋谷に差し、渋谷の心臓を貫いた。
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