第106話:突破

 国語の先生が何かを察したのか、全生徒がストップした。

ちなみに現時点での生徒編成についてご紹介しておくと以下の通りになっている。

校長、教頭、金成、渋谷、原宿、池袋、江戸川、葛飾、品川、国語の先生となっている。

 生徒会は現在、王直属の戦士天照と月読と交戦中、他靖国や水谷の率いる団体は別のところで交戦中になっている。

「ずいぶんと少ない人数になっちまったもんだな」

 金成はそう呟いた、だがそうも言ってはいられないものだろう。王国転覆とは中々難しいものである。ましてや、生徒達は突如の戦場に繰り広げられたばかりで、中々戦争経験者もいない中での戦いに恐怖すら覚えているわけである。

「ここでの超強力な戦力と言えばやはり校長と教頭だな」

 渋谷はそういった。

「まあ若い君たちの力を頼りにしているよ」

「そんなこと言われてもなー、俺たちまだまだ未熟っす」

「ふぉふぉふぉ」

 教頭が笑う。

「それより、金成君。この先に罠が張り巡らされているわ」

「感知していただきありがとうございます。俺がこのまま先に進んだらどうなるか未来を見てみましょう」


スキルマスター発動:アルティメットアイズ


「ほう、君は未来が見据えるのか」

「視えると言ってもわずか5秒程です」

「いやいや、一瞬の戦闘の差でも5秒先まで視えるのはかなりのアドバンテージだよ」

「そうですね、特に王直属の戦士との戦いなどに於いてはですね」

「金成君、何が視える」

「このまま進めば、おそらく全員死にますね」

「え?」

「地雷が多い、そして壁の薄い隙間から大きな鎌が襲ってきます。これらを潜りぬけるのは至難の業ですね」

「お前の眼ってほんと便利だな金成。こりゃ普通につっこんでいったらまず間違いなく侵入者は全滅だな」

「そこが未来の情報を司る者のメリットってやつだろうな」

「どうやって進む?」

 葛飾が疑問に感じた。

「品川の能力を使って地面を潜りながら進むしかないな。テレポートで飛ばしてもいいんだが、こうも視界が悪くと、飛ばすことができない」

「金成、俺の能力は地面こそ潜って鎌は交わせるが、地面に埋め込まれた地雷に触れれば、それはお前、もう地中で爆発しちまうぞ」

「まずはその地雷を撤去する作業から入るとしよう」

「どうする気だ?」

「江戸川の能力を使う」

「俺の能力?」

「江戸川、お前のマジカルトリックでここにいる人達のコピーを創ってくれ。衝撃を与えない限りは消えることはないだろう」

「分かった」


 江戸川がマジカルトリックを使い、多くの人のコピーを創った。

「これはすごいなー、まるで忍者の分身の術みたいだ」

「まあ人形なんで動くことはないんですけどね」

「みんなでこの人形を寝転がらせるように持ってくれ」

 全員が自身の人形をその場で寝転がらせた。

「渋谷、視界が悪いから天井に炎を灯してくれないか」

「了解」

 渋谷の炎により、数十メートル先までの視界が明るくなった。

「問題はこの罠がどれぐらいまで張り巡らされてるかってことだな」


スキルマスター発動:テレポート


 金成は次々とコピーした人形を飛ばし、地雷を誘発させていく。

大きな衝撃音と爆風が悉く視界を遮るが、ある程度の位置を記憶しているため、何体ものコピーを前方へと飛ばすことが可能となった。

「その飛ばす能力はまるで阿修羅と同じだな」

「よくご存じですね校長?」

「ああ、彼は早いからなぁ」

「そうですか」

 衝撃がすごすぎてほとんどの地面が吹き飛んでしまい、あまり地面を潜っていくことも困難のようにも思えた。

「あらかた飛ばし終えたな」

 金成が立ち上がり、指揮を取る。

「品川ここからは泳いでいくぞ」

「おう」

「みんな俺と品川とで手を繋いで泳ぐぞ」

 品川のスイミングを使い、みんなで手を繋いで地面を泳いでいく。

感知タイプの大きな鎌は人間が上を通らない限り、仕掛けは発動しないようなものであった。

 だが気になるのはやはり監視カメラだろう。これでいつ敵が手動で襲ってくるかが予測できない。それについては言及しかねた。

「全く持ってこの仕掛けの数々、それを難なく超えられていくこの生徒の力に驚きですな校長」

「まったくよの教頭」

 校長は立派な顎鬚を摩りながら答える。

無事に泳ぎ切り、次のフロアへと進出する。

 まるでダンジョンの構造、モンスターというモンスターは出現せず、ただひたすらにトラップが張り巡らされているだけであった。

「城と言っても兵士はいないもんだな?」

「侵入者は全員トラップだけで駆逐するつもりだったんだろうか?」

「だがこういった能力者を前にしてはかなり手の込んだトラップでも配置しなければ簡単に侵入してしまうぜ?」

「確かにその通りですな。まあ王様は文字通り人が多いのは苦手な性質もあるのであって、決して兵士を減らしているわけではないのだ。皆遠征に戦いをさせにいく。そして量より質で決めてくる。つまり、もしフロアで出くわした相手は兵士1,000人にも勝る強敵、即ち王直属の戦士か最強の盾が待ち受けることになるということですな。そこが他のRPGダンジョンとの違いというわけです。魔王の城の付近にはやけに強いモンスターは多く、主人公はたいてい魔王や中ボスに辿り着く前にHPもMPも削り取られます。しかし王様はそんなことはせぬということですな。そういったゲームは飽きたということですのぉ。ふぉふぉふぉ」

 教頭が解説する。どこで知った知識なのかは不明だが、確かに普通の城の構造ではないなということはよくわかる。


 目の前に扉がある。それを開いた。中は広い部屋、しかし周りに武器が多く張り巡らされていた。

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