第77話:八岐大蛇
素戔嗚のスキル「ヤマタノオロチ」はそれぞれ八頭の龍が技を担う。八頭現れた時が相手の死に際と言っても過言ではない。
金成は頭の数が増えてきていることについて考えを抱いている。
このままいけばおそらく金成自身が敗れたであろう八頭、つまり八岐大蛇の出現を許すことになるのではないか、ということである。
次は四、五と徐々にステップを踏む。
これをもし「本を読む」という意味であれば1章2章3章と今素戔嗚に本を読まされ、次は4章そして最終的に自身が読み終えなかった8章にチャレンジすることになるだろう。ビジネスの世界、本を読むということではそういうことをこの素戔嗚のスキル「ヤマタノオロチ」から伺えるものであるなと感じたのであった。
「今までの10倍の速さで本が読めるフォトリーディング」
そういった本の話を聞いたことはないだろうか?
数多くの著書が出しているこの本の元来の主旨は何なのか?
その答えは「本を読む目的を明確にせよ」ということであった。
例えば自持思想論を読む目的は「自身が本を出版できるレベル。それについて考えを養う。仕事に於いても生活に於いても目的、目標、そして理由をしっかりと持つべきである」そういった内容を問うべきところであった。
つまり本を読む目的は「ただなんとなく読む」から「必要な情報だけを引き出す」ということを目的としなければいけない。全てを読む必要はなく、重要なのは何度も繰り返し出てくるキーワード、著者の言いたいこと、タイトル、目次、それらは万人向けだが、一番はその本を手に取った目的「あなたが何を知りたいか?」であった。
その目的をしっかりと明確に定めさえしていれば本は1ページ1秒ペースで読むことも可能だ。だからフォトリーディングは全てを記憶する必要はない。
「1日5分で10万円稼ぐやり方」という本を読む目的は何なのか?
それを自分に問うだけだ。何をして5分で10万円稼ぐのかのキーワードだけを200ページある本の中からピックアップするだけである。
答えは「スーパーに売っている1本50円のミネラルウォーターを砂漠地帯に運んで1本10万円で売る」などだ。喉がカラカラで死にそうな人にとって自分の命と10万円ではどちらに重みを感じるかの違いである。要は欲する人がいる、取引相手がいるかである。そしてそれを誰もまだ発見していない段階で先に自分が見つけ、競争に巻き込まれる前に手を打つだけである。
上記の内容は自持思想論第10小節「100円のみかんを100万円で売る方法」に似ているものであると金成は考えたのだ。
金成は既に素戔嗚の最強技を目の当たりにしているわけであった。
よって・・・
「1つ1つ見せなくていいぜ?一気に大技で蹴りをつけにこいよ」
自信満々に金成は素戔嗚に言った。
「フォトリーディングの応用編だな。よかろう小僧、後悔するなよ」
緑色のオーラが素戔嗚の体から出始めた。
「創造を具現化か」
スキルマスター発動:テレポーテーション
金成の恐ろしく早い手刀が素戔嗚の首を狙う。
「ぐほぉ」
素戔嗚が血を吐いた。
「油断したな?その技は一度見ている。テレポートと雷の力があればいくら十戒と言えどスピードにはついてこれまい」
「蒼天流:螺旋拳」
以前素戔嗚に喰らわせた拳だが、雷の力と重力が働き、一撃一撃に重みが増している。あの頃と違い、技の質も拘り、そして連携技も成し得るぐらいの成長ぶりであった。
「日々のトレーニングは欠かせないものだろ?一流選手は基礎トレーニングを怠らない。それは達人だって一緒だろ?あんたはその王直属の戦士十戒の席に居座り、どれ程の鍛錬をした?俺はまさに死の瀬戸際で術を磨き、そして量も質も極めた」
喉を抑えながら素戔嗚は片目をつむりながら後ずさる。
「小僧・・・」
草薙の剣を素戔嗚は取り出した。
斬りかかり、そして金成に襲い掛かるが、阿修羅との戦いに慣れてしまい、素戔嗚のスピードは完全に金成についていけない状況だ。
人間に於いて最も筋肉が薄くなる首元、そしてテレポートとのコンボ技を阿修羅に見せてもらっていたのでそれは「スキルマスター」を使わずとも、真似することが出来たわけである。
結局は積み重ねである。「塵も積もれば山となる」だから銀行では積み立て貯蓄などをお勧めする。小学校の修学旅行のお金をいきなりまとめて3~5万円ではなく、毎月1,000円ずつでも積み立てれば3年間で36,000円貯めれるみたいに無理なくだ。ただしお金はその間、流動性を失ってしまうのでその分の投資へのリスクは現れるが、リスクヘッヂをしっかりと加味し、資産の分散が出来ていれば問題ないのだ。
金成は失敗し、敗北し、そして色々な研究を重ねた。
その執念こそ、今まさに素戔嗚の未知なる技へと誘導する一番の近道であると考えたのだ。
「お前のヤマタノオロチは封じたぜ?さあどうする」
「よかろう。俺の最終奥義を見して見せよう」
草薙の剣にどす黒いオーラを飛ばした。
「九頭竜:十束の剣」
「あれが伝説の竜を打ち破ったと言われる」
「金成、この技を喰らえばひとたまりもないぞ。しっかり交わすことだな」
「アドバイスありがとよ」
素戔嗚のスピードが上がった。
金成も応対する。
スキルマスター発動:アルティメットアイズ
あの太刀を浴びると金成自身もやばい。そう考えたのだ。
襲い掛かる太刀を次々と避ける。しかしプレッシャーが凄い。
素戔嗚の冷酷な目の奥の闇に引きずり込まれそうなぐらいであった。
素戔嗚は容赦なく金成を襲う。しかしそれを華麗に交わす。
「金成、俺を倒す目的はなんだ?」
「あんたのその技をもらう」
「技を貰ってどうする気だ?」
「この東京国を統治する」
「目的はそれだけか?」
「・・・」
「まだ何かあるのか?」
「退屈を無くしたい」
「ならばその信念を貫き通せ」
素戔嗚に一瞬のスキが見えた。金成はそこをついた。
「うおおおおおお」
渾身の一撃であった。素戔嗚の体を貫く、一撃であった。
素戔嗚は血を流しながら伝えた。
「見事な一撃だったぞ」
「何故最後油断した?」
「お前の眼の奥は俺と違って光が宿る。託したくなったのだ。日本の未来を」
「俺が統治したって日本がいい方向に行くとは限らないぜ?」
「だが少なくともお前の生き方には何か束縛されたようなものを感じなかった。この技を使い、あの2人を止めてみよ」
「誰なんだ?あの2人とは」
「伊弉諾と伊弉冉だ。この2人には気を付けろ」
「何者だ?」
「国生みの2人と言われている。その親族である天照に俺の村は滅ぼされた。憎き宿敵が近くにいながらも俺は手も足も出せなかった。妹の摩天楼、奴を殺したのも天照だ」
「何を言ってるんだ?摩天楼を殺したのはお前だろ?」
「見える世界にだけに囚われるな金成・・・。見えない世界はもっと・・・残酷だ」
「見えない世界・・・」
自持思想論でも同じようなものいいがあった。見える世界「お金」と見えない世界「時間」だ。その因果関係と何か関連しているのだろうかと一瞬考えた。
「金成、お前にこの技を・・・」
素戔嗚は金成と握手を交わした。金成は素戔嗚のスキル:ヤマタノオロチを手に入れた。
それと同時に素戔嗚は倒れ、血を大量に流しながら息を引き取ったのだ。
「光が差し掛かるところに影があるのか」
表の世界だけでなく、裏の世界、特に裏社会では何が起きているのか。今一つ一つ歯車が動く。そう感じ取った。
しかし自分もその歯車を回す一つのネジとなり、今後の戦いに火ぶたを切ることになるものは既に確信を得ている。
金成にとって初めての王直属の戦士十戒の一人の討伐。それが最初に出会った素戔嗚であったのだ。
残りは9人。しかしこれから先は簡単には行かないことも自粛せねばいけないことも考えるのであった。
「国生みの2人。素戔嗚の妹を殺した天照」
金成は下を向き、うつろうつろとなっている。
「何かが違った。彼らの統率は成し得ていなかった。じゃあ彼ら10人が王の配下にいる目的もまた何か別のことだったのか?」
少なくとも素戔嗚は敵である天照に恨みを持っているように思えたのだ。
会社に入ってくる目的でもそうだが、新入社員は何をもって会社に入社し、志望動機は何なのか?そこに統率はあるかどうかは、その会社の風土に浸かり、一緒に舵を取って周りをひっぱっていけるかである。
それが出来なければ会社を新人は「バックレ」ることにもなるのだ。
「俺の・・・戦う相手とは?」
目的についての再認識であった。ただし金成は困った時は原点に返る癖もあるのだ。
最終は「宗教の違い」その一言で終わらせることもまた、考えを過ることやまない、素戔嗚との戦いで考えさせられるものであったのだ。
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