第75話:明治
金成との応戦の少し前の話である。
生徒会長の浅草と副生徒会長の明治がやり取りをしていた。
「もし金成が東高を率いて、他校も斡旋出来たなら明治、君はどう思う?」
「愚問だな。生徒会長の座を明け渡してもいいのではないか?」
「しかしまだ1年坊。他校に示しがつくかどうかでもあるね」
「実力の世界では役職などは若手にもつけるものではあるが、しかしまだまだ横社会の学校での間の話だ。しかし引率力があれば、我が校での士気は高まり、一気に王国制度の見直しも夢半ばで終わることにはならぬだろう」
「議題は人それぞれにある。主観もそうだ。男性カップルが里親になろうものであったとしても、担い手があるのならばそこに人が集まるのは至極全うであろう。国としての秩序は如何にして多くの世間の眼に見はられているか、何故人は他者を比べたがるのか。答えなど初めから無いも同然である」
「この国は狂っているか・・・言ってくれるぜ。そう簡単に行かないのが渡る世間というもの。世渡り上手など、そんな簡単なものではないというのにな。医療費増しの原因は意外にも高齢者の数や病床数ではなく、医師の数であることが最大の要因。問題の解決など、そう簡単ではないということだ」
「医師の数か・・・。烏合の衆にも満たぬ世間体など捨ててしまうがよいさ。今必要なのは、組織として重大な牽引力。その中に存在するのが優れた能力。数多きスキルの大衆。量より質など、とうの昔に忘れ去れるぐらいのものでしかないのだからな」
「見極めてくるとしよう。金成、奴の実力というものを」
今こうして戦いを行うのも、すべては金成の力量をはかるだけでなく、生徒会への勧誘が可能かどうかであった。勿論私情を挟むべくではないにしろ、明治はそれを理解して、金成に体を張って戦いを臨んでいるわけであった。
「なあ金成」
明治が金成に話しかける。
「何です?戦闘中に」
「お前、JKビジネスとかで男だけ逮捕されるってどう思う?」
「まあ相手は未成年なんだし、そこは大人がしっかりせんといけないと思います」
「まあそれはそうだけどよ、でもそれで納得いけるか?」
「納得できないですよ。相手は逮捕とまではいかずとも補導程度」
「いつからこの世界はそうなったんだ?」
「壁が出来る前からそうだったんじゃないんですか?もう倫理観も糞もない。司法裁判も何もあったもんじゃないっすね。もう一方的って感じ」
「お前は国が狂ってるって言ったな。あれはどういう意味だ」
「もう男女平等じゃないってことっすね。他にも挙げりゃきりないんですけど、まあなんていうかもう正直者が馬鹿を見るというか。見えることばっかにみんな注目しすぎでしょ」
「何だ見えるものって?」
「先輩知らないんですか?俺の持ってる祖父の本『自持思想論』には世界は2つ存在すると言われています。一つは見える世界、もう一つは見えない世界。見えない世界ってのはほんと見える人には見えるけど、見えない人にはとことん見えないんだなって思いますね。まるで影の世界の自分に興味がないぐらいな程に」
「見えない世界・・・だと」
「まあJKも事情があってそういう道を選んでいるんでさ、悪くは言えないですよね。でもその道がどういう道か見えていないんですよ。倫理の問題というか、もう理解できる人には理解出来るけど、理解できない人には全く理解できないんですよ。不倫は男なら誰もが一度はするとかってのももうなんか決まってるんですよ。それはもう運命なんですよ、エゴなんですよ、おかしいと言ってもそれはその人からしたらおかしくないんですよ。だから人は殺人もする、詐欺もする、盗みもする、カンニングもする、行動一人一人に目を向けたってその人は操られているわけでもなく、それが普通なんてレベルなんですよ。世間は病気とか障害とか言うのかは分かりません。しかしもうこの世界は何か比べることが困難なぐらいに現在進行形で進んでいるんですよ!医者の数が増えれば増える程に医療費が上がっていくんですよ!」
それを聞いた明治はふと生徒会長の浅草とのやり取りを思い出した。
「医者の数・・・」
ちょっとした風が吹く。
「無駄話が過ぎたな。ケリをつけるぞ金成!」
副生徒会長の明治が金成につっこんでいく。
金成は考えた。
「相手のアリストテレスは言わば万有引力によるもの。斥力と引力を支配コントロールする力。ならば・・・」
スキルマスター発動:ライジングサンダー
全身を雷で纏い、明治に応対する。
「無駄だ」
掌を翳し、金成を遠くに吹き飛ばす。斥力だ。
周りにある煉瓦を次々と万有引力で引き寄せ、それを金成に斥力で飛ばす。
金成はモロに喰らうも雷の鎧によってことごとく煉瓦は砕くことが出来た。
しかし軽傷は負う程度であるが、腕からは血が流れた。
「野郎」
掌を翳すだけで金成を引力によって引き寄せることが出来る。
阿修羅との瞬間移動対決もかなりやっかいではあったが、引き寄せたり離したりする相手もかなりやっかいであった。
「あれを使うしかないな」
金成はライジングサンダーを解いた。
スキルマスター発動:テレポーテーション
引き寄せられるぐらいならばいっそ此方から出向いてやろうという気概であった。
即座にテレポーテーションを金成は解き、合技に入る。
ナイトメア&グラヴィティ合技:ブラックホール
突如となく現れる闇に明治は斥力を掛ける。
金成と明治は互いに反発し、吹き飛ばされるが。
「なんだ?」
ブラックホールの引力が明治の万有引力を超え、逆に明治が引き寄せられる形になった。
「ぐああ」
闇により押しつぶされていく。
王直属の戦士と違ってそこまで体も鍛えていない為、瞬く間に全身あざだらけになっていく。内出血を起し、腕などが上がらなくもなる程であった。
ブラックホールを解いた。
「ぜえぜえ」
「どうですか?もう終わりにしますか?」
「まだだ・・・」
斥力を使い金成を吹き飛ばそうとする。
しかし、動くことが出来ない。
「なんだこれは・・・?」
「鎖ですよ」
スキルマスター発動:ブロックチェーン
見えない鎖で相手を拘束する力であった。
ブラックホールを解いた時に既に能力を発動していたのだ。
「これで副生徒会長拘束っすね」
「やられたよ」
「実力の程はもう十分ですよね?」
「ああ、お前の勝ちでいい」
握手を交わし、金成は明治のスキル:アリストテレスを手に入れた。
「でたらめな強さだなお前は。どれだけの数の能力を使いこなすというのだ」
「みんないい能力を持っていてね。そんな中でも特にこの八王子の雷の力は気に入っている。王直属の戦士相手にはまずこの能力を使わないと勝ち目ないですからね」
「王直属の戦士を相手か・・・。我々生徒会の中でもそういった議題は出たが相手はAランクの難易度を誇る超人だ。どう足掻いても勝ち目などないようにも思えるが、もしお前が本当にスキルをみにつけていくとしたらそれは脅威だな。いずれ秋葉王に目をつけられることにもなるぞ」
「まああんまりリスクは高めたくはないですね。あくまでもローリスク・ハイリターンがメインなので」
「既に秋葉王に目をつけられているぞ」
「誰だ?」
物陰から一人の男が現れた。
「あんたは・・・」
「いい戦いをしていたな。金成」
王直属の戦士十戒の一人「素戔嗚」であった。
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