第72話:生徒会長

消火活動が東京銀行で始まる。

救急隊も多く駆けつけた。近くの群衆も突然の爆発による瓦礫の下敷きになるなどして負傷者が多数であった。

威力が桁違いであった。おそらく総裁が仕掛けた爆弾以上に何者かが既に銀行周辺に設置されたものも多数あったと考えられる。

そんな中、そのスイッチのきっかけが総裁の所持していた爆弾であったと考えられるのだ。


「阿修羅の能力が無ければ死んでいたな」

金成は咄嗟にテレポートで難を逃れていた。一瞬の出来事ではあったが、軽く火傷を負っていた。


瞬く間に報道となったことで、城内でもそれは噂となった。

「何者かが銀行内に侵入したそうだな」

秋葉王はグラスを片手に執事に問う。

「少年のようにも見えます。防犯映像を見る限りでは」

「まあどうやってあの総裁を追い詰めたかは知らんが、今後その少年要注意人物として指名手配しておけ。王直属の戦士達の出動も要請しておけ」

「かしこまりました」

今回の事件により金成の存在が王に知れ渡った。

いよいよ王直属の戦士に着け狙われるような状況が生まれたのは誤算になったのか否や、しかしいずれにせよ統治するには避けては通れない道であった。

ローリスクハイリターンにしては少々先を急ぎ過ぎたのかもしれない。

映像は乱れてはいたが、阿修羅や素戔嗚にはハッキリと分かるような状態であった。

「行くのか、素戔嗚」

「落とし前はきっちりとつけるさ」

阿修羅はたいそう金成を気にはかけている。しかし素戔嗚は未だに分からないものであった。素戔嗚の厳しさは先代からの宿命なのかもしれない。

先代の素戔嗚は八岐大蛇を討伐する時、大穴牟を大国主の神へと転生する際に、厳しい鍛錬を施したとされている。

「面倒見がいいのは相変わらずか」

ワイングラスを片手にその場をお暇する阿修羅であった。


金成は翌日、学校に向かった。

何事もない日常、しかし彼もいよいよ腹をくくらねばならぬことが出来たようだ。

「金成、なんだよこれ」

「新しいスキル:ブロックチェーンだ」

「へえ、あのフィンテック革命などに使われてるやつの名前に似てるな」

「まあそういうことだな」

原宿、渋谷、池袋3人同時に拘束した。

「一気に複数を同時に閉鎖空間に閉じ込める感じだな」

「ああ、しかし・・・」


スキルマスター解除:ブロックチェーン


「スキルを解くと、3人共拘束が解ける。池袋のジャッジメントと違ってスキルを解除すると、拘束も解けるので持続性は乏しいな」

「本来ならこの能力はチームプレーで使用するのがベストと言ったところか」

「能力に関しては申し分ないな」

屋上が賑やかではあった。そこに1人の男が現れた。

「みんなここにいたのか」

転校してきた富士であった。

「何やら生徒会長がお呼びだぞ」

「え?」

4人は顔合わせ、その場で疑問に感じた。

「何用だ?」

「さあ?」

「まあとりあえず行こうぜ」


生徒会長が待つ生徒会室に入る。

「失礼します」

「らくにしてよいぞ」

高校3年生の生徒会長は女性であった。

気質あふれるお嬢様といった風貌である。名を「浅草」と呼ぶ。

「皆、今朝のニュースは知っているか?」

銀行の爆破事件のことについてだった。

「あそこに映像はよくわからないが少年がうつっている。おそらく高校生」

「つまり・・・?」

「わが校の生徒かもしくは西か南か北の3校か、いずれもスキルを使用し、尚且つここまで大事にするのは我々を含め4つの高校でしかありえない」

「何故俺たちが呼ばれたんです?」

「君たち以前千葉国の大戦時に戦場に向かったそうだが?」

「まあ観光がてら」

「ふざけるな!戦争は遊びではないのだぞ」

副生徒会長の「明治」が机を叩く。

「君たちはどれだけの危険を冒している。わが校は将来王直属の戦士の候補者として教育を課せられている。いずれは大きな戦力となりうる逸材、そう易々と戦線に赴くものではないのだよ」

「退屈なんですよ」

「何か言ったか金成?」

「いや何も」

風紀委員の「靖国」が木刀を持ちながら前に出た。

「所詮は一年だ。まだまだ実践経験には程遠い存在である。あまり行動は目立たぬように。こうしたスキルを育成する学校は一度汚名が付くと大会出場などの謹慎にもつながるからね」

「まあそれは分かりますが、秋葉王の行動には何か疑問を感じます」

「それはそうだが、政治家達が彼を崇拝する以上は我々は何も行動が出せない」

「王国制度に不満なのはわかる。だが、宗教や文化の違いは誰にでもあるものだ。ただがむしゃらに不満をぶつけても何も変わりはせぬよ」

「実際に人が死んでいる。それを管理しない政府や王国は果たして正しいものでしょうか?」

「何が言いたいんだ金成?」

「この国は・・・狂っている」

「・・・もう下がりなさい」

5人は外に出た。

「どう思います?あの金成とその仲間たち」

「東京国の異変に気づいてはいる様子だが、所詮はまだまだ一年生レベル。猛将として国を引っ張って行ける逸材にはまだまだなれぬだろう。しかしわが校はいざという時に外交の時に率先して敵国からの魔の手から侵入を防ぐ義務は存在する」

「しかし内乱においては・・・我々は自立をいずれ促されることもありうるのでしょうかね?」

「分からぬものだ。しかしこの実力の世界に於いては如何にAランクないしはSランク候補を確保できる組織に属することが出来るかが国家存亡の危機を脱出できる鍵である以上、秋葉王の王国制度は覆すことは出来ぬだろう」

生徒会長の浅草は窓辺に手を指しかけた。

「金成か・・・実力を試してみるか」

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