第63話:阿修羅②

阿修羅のスキル「テレポーテーション」には3つ存在する。

一つは自身を瞬時に移動させる能力。二つ目は対象物に触れることにより、自分の視覚となる範囲内にそれを飛ばすことができる能力。

三つ目は四次元空間を指で円を描くようになぞり、それを時間差で自在にどこにでも異空間を通じて飛ばすことができる能力だ。


阿修羅は一つ気になることがあったのだ。

「さっき君は俺が四次元空間を円でなぞった時に咄嗟に地面に潜ったね?何故俺が時間差で攻撃できることを知っていたんだ?」

「この究極の両目で先読みする以前に、あんたの力は以前の外交の際、マフィアの銃の弾を自在に異空間に飛ばし、それをまた時間差で相手にリターンさせていた。そのことを知っていたから空中に逃げると俺の雷はどこにいても直撃される。だから地面に隠れたんだ。土は電気を通すことが困難だからな」

「ああ成程ね。あの時の少年ならば俺の能力を観られていても仕方ないというわけか。驚いたね」

会場は湧き上がっている。

「なんということかあの少年!阿修羅選手と互角!?凄い白熱した戦いになる」

司会の女性がマイク越しに叫ぶ。

「互角?」

素戔嗚は目を見開き、微細な動きに惑わされぬようにしっかりと目に焼き付けた。

「かなり面白いタマゴを見つけた気分だよ」

「そりゃどうも!」


スキルマスター発動:ライジングサンダー


スキルマスター連携:アルティメットアイズ


同時スキルの連用を駆使して阿修羅を討伐する。

それが金成の目的であり、美学である。

「テレポート」

阿修羅の姿が消え、金成の背後に。しかしそれを金成は予測し、前進。後方へ振り返り、疾風迅雷を放つ。

だが前と同じ手順だ。異空間を呼び寄せ、そこに雷を落とし込もうとする阿修羅の手口。しかしそれを予測し、すぐさま雷を地面へと避雷させる。

阿修羅の読みを外し、一気に叩き込む考えだ。

「電光石火」

接近戦で阿修羅を制する。それ以外には術はないが、阿修羅の手刀には気を付けなければならない。百戦錬磨の王直属の戦士はほとんどの武器を介さずに、素手で相手を暗殺する能力も持ちうるからだ。

ステップを踏み、飛ぶ。そしてまたステップ。阿修羅の周りをグルグルと超高速で移動する。

「確かに速い。だが俺の速度程ではあるまいな」

眼で金成を追うが、阿修羅には超高速も微細ながら見えていると言っても過言ではないらしい。

「テレポーテーション」

阿修羅も連続瞬間移動で応対する。互いに要された時間はわずか3秒でリングの端から端まで行き来する。

この眼にも止まらぬ互いの反射神経速度には会場の誰もが目を追うので必死だ。

当然司会の女性は戦いの状況が意味不明な状態だ。

互いに拳を交えるもほとんどがノーダメージ。一瞬のスキを作った時が互いのどちらかの勝機のチャンスであった。

「ではそろそろ爆風に乗ってもらうよ?」

「?」

阿修羅は豆粒程度のものを取り出し、それを地面に投げつけた。

範囲は狭いものの殺傷能力はやや高めのミニチュア爆弾だ。

「君の先程の地面に潜る能力はその雷の力を使っている間は使用できないとみた。つまり超高速で地面には潜れないんだろ?一度その雷の能力を解除しなければいけないんだからさ」

「いい分析だね」

「俺なら君が能力を解除した1秒以内に背後に回って狙い撃ちできるんだが?」

「安心しなくてもそこまで読めてるなら地面には潜らないさ」

「まあどこに逃げようと無駄だと思うよ」

阿修羅は四次元空間を呼び寄せ、そのまま数十もの豆粒を飛ばした。

時間差でそのまま現れ、爆発が金成を襲う計算だ。

「あの爆発だと生身なら腕など吹き飛ぶだろう。この雷の鎧は確実に外せないな」

金成は雷の力は常時使用し、それらの別の能力を1つのみ活用することに決めた。

「テレポート」

阿修羅の瞬間移動だ。阿修羅を追うが、次々と動きを見せてくる。

「どこに飛ぼうと一緒だが、しかしこれは・・・」

金成の未来が映し出されていた。この場所に居合わせていると次々と爆風が襲ってくることを。

「今はやつを追うより先に攻撃をかわすことが優先か」

金成はとんだ。

最初の炸裂爆弾が次々とリング下で巻き起こる。

次いで上空に異空間が現れる。

「疾風迅雷」

雷で爆風を自身がその場所に辿り着く前に吹き飛ばす。

次々と異空間が金成の周りに現れてくる。

アルティメットアイズを解除した。


スキルマスター発動:ファイヤー


雷と炎の連携だ。炎ならば自在に操れるのは既に渋谷との戦いで実証済みだ。

あいにくライターなど持ち合わせていないが、爆風に少し炎を交えるだけで燃費は非常にいいものだ。

「あんたの爆弾の火薬。利用させてもらうぜ」

爆風に乗った炎を次々とかき集め、大きな炎の竜に変えていく。それをそのまま阿修羅に向けて放とうとする。

「まるでファイヤードラゴンのようだな」

阿修羅は腕を振るう。

目の色が赤色へと変わる。

「修羅の旋律」

黒い炎が腕を覆う。それらが炎の竜を切り裂き、一瞬にして消滅した。

「なんだあれは?」

金成は驚いた。炎を切り裂く力があるとは考えもしない。水ではなく、相手の炎が勝ったというわけだ。

「力を求めし者は時よりこのような万事の能力を解明する」

阿修羅はその手のまま、次々と瞬間移動した。

「あれを喰らうのはまずいな」

「テレポート」

金成の背後に回った、と思いきやまた移動した。

相手も攪乱を狙っている。

「やはり王直属の戦士は一筋縄ではいかないみたいだな」


スキルマスター発動:ウォーターフール


「いくら炎は切り裂けても水は無理だろ?」

水を勢いよく飛ばす。

しかし瞬時に交わされるだけだ。

「まあ当たればの話だけどね」

阿修羅は交わし続ける。

「ここまで能力使って出し抜けないとはやっぱつええな」

「阿修羅は確かに強い」

素戔嗚が呟く。

「しかしあの少年もかなり強い。本来阿修羅の瞬間移動能力の前だからこそ、もてあそばれているように見えるが、他の王直属の戦士ではあれだけの多彩の能力を駆使されればひとたまりもないだろうな」

素戔嗚は以前自身と戦った時以上に能力を挙げていることに感銘を受けた。

「修羅の旋律を喰らうものは身も心も引き裂かれる成」

「あててみな」


スキルマスター発動:グラヴィティ


金成は阿修羅に接近する。

多少の重みが入れば、相手の動きも微細ながら鈍ると考えた。

「重りをつけて戦ってるように感じればいいんだろ?」

「どうだろうな?」

グラヴィティを解除した。

しかしまた発動させる。相手の重力を入れたり無くしたりしているようだ。

「器用な子だ」

四次元空間を描き、今度はそこに阿修羅が手を突っ込んだ。

「なに?」

グラヴィティを解除した。


スキルマスター発動:アルティメットアイズ


異空間移動はこの両目が無ければ避けるのは困難だ。

まさに攻め立てられて防戦一方に入っている。

およそ1秒後に背後に阿修羅の腕が出てくることを感知し、それを交わす。

瞬時に阿修羅は自身にテレポートをかけ、金成に接近する。

「捕まえた」

修羅の旋律が金成を切り裂いた。

なんとかぎりぎりで交わしたが、足を1本やられた。

雷での防御をしているにも関わらず、ダメージは大きく残った。

「しかしここまで俺の攻撃かわすとはほんと驚いたな。王直属の戦士と同じぐらいかそれ以上の力は既にありそうな気がして仕方ないな」

頭をぽりぽりと掻きながらそう金成に言う。

「やべえな・・・そろそろ体力が限界だ」

ついに金成は息を切らし始めた。

おまけに足が負傷した為、ここからの戦いは長引かないと自身も感じ取ったのだ。

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