第60話:宗教

素戔嗚は王宮の書物を手に取り、それを開示した。

阿修羅がその様子を腕を組みながら見ている。

「日本国は昔47ヵ国になる前、1ヵ国であった。しかし、その1ヵ国になる前は30ヵ国程に分かれていた」

「神話の中で話されているものより随分過去の話というわけだね」

「考古学だ。日本国で初めて大和朝廷が発足した時に国は一つとなった」

「それはどういう理由でそうなったんだ?」

「宗教戦争が起きなかったからとされている。今も尚、自由に文化を持ち、宗教を持ち続けることで国は豊かに安定し、日本国は平和を保ち続けた。国によって郷土料理と呼ばれるものが存在するのは今も尚、そういったかつての国々の文化が根強く残っているからだ。言葉の訛りもそう、まさに日本国は自由を象徴とする国であったのだ」

「過去のことは私もよくわかりませんが、やはり素戔嗚の祖先が何かを知っているということですか?」

「すべてを知ることは不可能であろう。だが、我が代々伝わりし『八岐大蛇』は神話ではなく、いつの時代かに実際に存在した魔物とされている。そして素戔嗚という名はこの俺が使用しているスキル『八岐大蛇』と『十束の剣』を継承した者に名前を受け継ぐとされている」

「宗教の自由、輪廻が分かつこの世の中には、すべての矛盾がやがて肯定となり、昼を夜に、夜を朝に変えていくわけですね」

「・・・」

素戔嗚は本書を閉じた。

「歴史はやがて動く。この今の王国制度は言わば人類の大罪に過ぎぬのだ」


公園に集まりし数はかつて金成が能力を受け継いだものばかりであった。

「遠慮はいらんぞ。本気でこい」

金成は自信満々にそう言うが、

「いくらお前でもこれだけの数は中々厳しいかもしれないぜ」

「それぐらいやらなきゃあのAランクボスモンスターは倒せやしないぜ」

「せいぜいCランクDランクを大勢集らせてその腹の足しにでもしようってか」

「まあ減らず口を叩く暇があるなら、隙をついてくるがいい」

金成は構えた。

対戦相手は以下

渋谷スキル「ファイヤー」

原宿スキル「ナイトメア」

池袋スキル「ジャッジメント」

江戸川スキル「マジカルトリック」

葛飾スキル「トレード」

品川スキル「スイミング」

文京「武道派:蒼天流」

練馬スキル「ウォーターフール」


「女性には優しくな」

「まあ優しくしなくてもいいよ」

文京は拳を突き上げ、手加減なしの模様だ。

「どんぐらい金成もあれから強くなったのか楽しみだな」

「始めるぞ」


スキルマスター発動:ライジングサンダー


金成の全身を雷が覆う。

「そしてこれが俺の本気を出すところだ」


スキルマスター連携:アルティメットアイズ


先日小谷社長から受け継いだ能力の一つ。雷の力と未来を見る両目の連携技である。いつの間にこのような連携を入手したかは定かではないが、金成は従来の光速度で動けることに加え、最大で5秒先の未来の世界を映し出す目を駆使してこの状況を打破する予定である。

「電光石火」

一気に移動し、葛飾目掛けて蹴りを入れようとする金成であるが

「トレース」

パチンと右親指と中指を鳴らし、立場を品川と入れ替える。

雷の力で相手の顔を蹴り上げれば十戒並みの強靭な体でなければ骨が砕けてしまうので、寸止めで空気圧だけで相手を推し負かすのが条件であった。

「ぐほお」

空気圧だけで品川は10mぐらい吹き飛んだ。

「あの力を千葉国大戦で間近で見ていたが、あんなすげえ技なのかよ」

「負けてはいられないな」

「ナイトメアスプリング」

闇の衣が辺りを覆う。

「ファイヤーエンブレムからの~」

一気に渋谷が炎を流出する。

炎の騎士が現れる。以前練馬から受け継いだウォーターフールの実験を行う時に用いた技だ。

「マジカルトリック」

江戸川が各種分身を作る。陽動作戦だ。

金成は江戸川の動きを逃さない。

「江戸川、一度気絶してもらうぜ」

次の標的は江戸川であった。

「金成、よそ見してんじゃないよ」

練馬のウォーターフールの水が金成を襲う。波乗りするかのようにその水の上にビートバンのような板を乗せ、金成目掛けて文京が拳を突き上げる。

「感電するぜ?」

「ご安心を!」

ビートバンを蹴り上げ、一気に金成に突っ込む文京であるが、速度が追い付いていない。

「遅いぞ文京」

「くっ・・・背後を」

しかし炎の騎士の刃が金成を捕らえ、降りかかる。

「金成覚悟!」

金成は上を見ないまま、その刃を素手で受け止めた。

雷の衣がある為、防御力もかなり性能が上がっている。

「隙を見せたらだめよ」

蒼天流奥義:五月雨乱舞

文京が3名にブレて一気に攻撃を掛ける3連携コンボだが

「以前学校の4階の屋上で戦った時は手も足も出なかったが、今ならお前の動きがハッキリ見えるぜ」

ライジングサンダーを金成は解き、回し蹴りを素手で止めた。

そしてそのままの勢いで押し込み、文京との一定の距離を保つ。

「蒼天流:逆鱗」

蒼いオーラが麒麟の形を催し、間合いを開けながらも一定の中距離からのオーラに於ける打撃であった。一気に麒麟の手足が4本、相手に襲い掛かる。衝撃は少な目である。以前八王子との戦いの際に金成が用いた蒼天流オリジナル奥義の一つである。

「きゃっ」

文京が吹き飛ばされた。

「へへ、悪いな。まあ衝撃波最低限だからよ」

「あのスピードじゃ俺の闇も追いつけねえな」

原宿は刀を2本持ち、接近戦で攻める。

金成はアルティメットアイズは解かないまま、次に技を繰り出した。


スキルマスター発動:グラヴィティ


「ぐっこれは武藤のおっさんの・・・」

「懐かしいだろ?国会議事堂での出来事」

「ちい、相変わらず動けねえな」

「ウォーターフール」

練馬が攻める。そして渋谷も炎の騎士で攻めた。

グラヴィティを解き、原宿が動けるようになったが、


スキルマスター発動:トレード


右親指と中指をパチンと金成は鳴らし、

「トレース」

練馬と場所を交代させ、そのままウォーターフールの技は正面に発動したままで渋谷の炎の騎士にかかり、技の相殺が生じた。

「ああ、ちくしょう。金成卑怯だぞ」

「ははは、水と炎を使う能力者が接近して戦うからこうなるんだ」

「やろう、はめやがって」


久々にクラスメイトと戯れて楽しんでいる金成である。

だが戦いは真剣勝負。金成は一発もクラスメイトから攻撃を喰らわないようにすることを自身の課題と感じながら遊びながらも戦いに目を向けていた。

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