第26話:西高校

マンモス高校と呼ばれるものが4つある。

それぞれ北高、東高、西高、南高である。金成は東高に在学中であった。

。赤いブレザーに黒のズボンがトレンドの「西高校」の制服であった。左胸には紺色の盾の形を彩り、「西高」と書いてある。金成は「東高」であった。

この辺りには西高の生徒も多く通っているのであった。チェーン店の「若人成程」にも多く学生がいた。


「ふーん」


皆スマホに夢中である。さっさと抜けて目的の寺に行こうとしたのであった。昨晩インターネットで調べたところ、これから赴く「霞が関」という寺に「秘伝術式」が眠るということを嗅ぎつけたのであった。相変わらずの術式ヲタク振りでそういう情報を手に入れると是非とも行ってみたくなるものであった。その目的地に辿り着く為にはどうしても脇沿いにある「西高校」を横目に通らなければいけないのであった。


「さっさと行こう」

金成は走っていった。あまり疲れない程度に小走りであった。

校門の前を差し掛かる時であった。ズザザザ

金成は靴に摩擦を掛け、急ブレーキした。前から男が3人歩いてきた。

身長がやや高めのルックスこそは良い男であるが、それより何かのオーラに取りつかれている。真ん中の男であった。こいつは、強い。

金成の直感がそう神経に訴えかけている。西高の男、恐らく同い年といったところか?

相手も金成を直視している。お互いに睨み合うか否かの瀬戸際であるが、互いに今日今さっき出会ったばっかり。目が合ったぐらいで喧嘩腰になる必要はあるまい、そうお互いに悟ったのだ。両隣にいる男達も何かしらの手練れに違いはない。恐らく何かしらの「達人クラス」なんだろうと感じた。

金成は歩道から外れ、道を3人に譲った。そのまま金成は立ち去って行った。

「八王子、今の男は?」

「さあてな」

「何か強いものを感じ取ったけど」

「もし相手が強者であるならば、いずれ対人関係になるだろう」

「それもそうだな。でも八王子に勝てる高校生なんていないぜ」


金成が一番気にかけていた男の名は「八王子」と呼ばれている。その両隣にいる男2人はそれぞれ「武蔵野」と「多摩」であった。いずれ彼らとまた対人する日が来るのかどうか、それは金成も今のところ予想はしていないところであった。

約6㎞行ったところの階段延べ1000段、そこを上がったところに「霞が関」は位置していた。金成はそれを2段飛ばしに駆け上がっていった。見事な身のこなしであった。参拝する観光客も多い中、金成は急いでその地へと向かっていった。


「霞が関」に着いたわけである。お寺にはお坊さん9名から成り、古い鐘は毎日のように清掃されていた。綱は人垢に塗れ、焦げ茶色へと変色していて、毎日決まった時間に鐘が鳴らされていることを物語っている。

金成は次いで案内人の処へと向かっていった。

「ここに伝説の秘伝術式があると聞いたんだが」

「ええ、御座いますよ」

観光客を案内する女性従業員に案内してもらった。藪から棒に言われてあたふたする間もなく、それはこの地に於いて正当なる問である以上、その通路を通してもらい、古びた寺でありながらもそこは神聖なる当地であったが為、金成は周りをしっかりと目に焼き付けていたのであった。

歩く度に強まる線香の香り、御仏にでも礼拝しにでも来ようものなら四肢捥がれてもなおのこと悪戦苦闘する様は異例な程の求愛煎じて福となすこの土壇場にて、彼は最深部へと歩いて行ったのであった。

「ここにあらせまする」

既に数名の観光客がクリスタルガードの中に於いてある小さな「玉手箱」を眺めていた。

「この術式を見たものは一つのスキルを身に付けることが出来ると言われています。そしてそれは巻物から文字が消え、伝承者1人を残して役目を終えた後は自ら白紙へと誘います」

「成程、しかしスキルが身に付くと上書きされるってことはないのだろうか?」

「それはありません。実質その方は2つの能力を得られることを意味します」

「これは魔法か?」

「魔法と言いますより科学に近い力ですね」

「前の伝承者はどうなった?」

「一説によると鬼神と戦いし神の巫女が最前線にてこれを使用し、国を治めたとか」

「よくわからんな。要は悪を滅ぼすのにうってつけか」

「さようでございます」

「いつからこれはここにあるんだ?」

「もう何十年も」

「そうか。誰もこの術式を使おうというものはいないのか?」

「大勢いらっしゃいますが、何故そんな大したものではないので賊に狙われる宝というものでもないわけでして」

「どういうことだ?」

「能力の概要こそ深く申し上げにくいのですが、発動時間が極端に短すぎますので」

「ふーん」

「ああ、でも今度この術式が景品に出されます。寺のお師匠様がもうこの商品の期限は切れ、観光客の集客のエンジンにすらもならないからもういっその事管理を辞めてコスト削減に誘おうということをおっしゃっておりました」

「随分投げやりな経営方式だなおい・・・」

「君は今いくつぐらい?」

「高校一年生」

「もしかして西高の生徒さんですか?」

「いや、東高校だ」

「そっか~、まあでも高校生なら可能性ありかもね。今度の高校生の対抗戦で得られるゲームの景品だから」

「一体なんだそのゲームってやつは?」

「あら知らない?ならすぐゲーム機を購入して練習しといたほうがいいよ。『警察ハント』ってソフト」

「警察ハント?なんだそりゃ」

「まあ詳しくはネオンモールにて」


そう言い残し案内人は去っていった。ゲームの景品?そんなんで秘伝術式が手に入るのか。しかし発動条件が短く、持っていても仕方ない?どんな能力なんだ一体それは。

案内人がネオンモールのショッピング店員臭が半端ない言いぐさであったが、ご丁寧に割引券まで頂いてしまった以上はそこに行って購入するしかなさそうであった。

言われるがままは金成の性分に合わないところであるが、ここは一つのきっかけとして挑戦せざるを得ない面持ちであった。


ネオンモールに着き、早速ゲームコーナーにてソフトとゲーム機を購入。

家に帰ってゲームソフトの概要を調べてみることにしたのだ。

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