第4話「魔王の呪い」
GM:では続けてお二人のシーンとなります。
あれから約一年、君たちは共に銀の学院にて教育を学び、その能力を伸ばしていた。
ここでは学業の他に戦闘訓練や天術や海鳴の指南。
他にも探求者としての実技など、様々なことが学べ、ここを卒業した者はそのまま王国の騎士なり、専属の天術士なり、一流の冒険者となるなど様々だ。
で、現在君たちは銀の学院の教室のひとつにて講義を聴いているところだ。
イオス:ふむふむ。
GM:講義の内容はこの世界の成り立ちから、現在まで蔓延るこの世界の敵、魔族と魔王について語っている。
「知ってのとおり。魔族とはこの世界を脅かす我ら人間の天敵である。これは種族は違えど全種族に共通する敵でもある」
そうして教師は続ける。
「現在、この世界は五つの大陸に分かれている。この銀の学院が存在する東の大陸ロー。北の雪の大陸フォブリア。西の春の大陸と呼ばれるエルフェナ。南の熱砂の大陸と呼ばれるムーヴェリアス。そして、神話の時代より誰も到達したことのない禁断の中央大陸アルアデックじゃ」
GM(教師):「イオス君、それにセレナス君。君たちは確か共にフォブリア大陸の出身であったな?」
イオス:「はい、そうです」
セレナス:「そやで~♪」
GM(教師):「うむ。この銀の学院には各大陸からの様々な学生が集っている。種族はもちろん、大陸が違うものも多くいる。だからこそ、お互いに学ぶこともあろう」
そう横道に逸れながらも教師は先ほどの魔族についての説明を続ける。
「魔族と言ってもただ魔族であれば、今の君たちでも戦うことは可能であろう。だがそれは相手が格下の魔族に限られる。良いか、もしもお主たちこれから先、魔族と戦うことがあれば、これだけは忘れてはならない」
そう言って教師は念を押すように告げる。
「その大陸を支配する魔王と、その魔王が抱える側近。それにだけは決して手を出してはならない」
熟練の教師であり、自らもかなりの実力者であるはずのその老年の教師がまるで怯えるようにそう告げていた。
「それぞれの大陸にはその地を支配する魔王が存在する。先程言った五つの大陸に一人ずつ。つまりこの世界には現在五人の魔王が存在する。我らはそれを五大魔王と呼んでいる」
イオス:ほう……。
GM(教師):「五大魔王の力はもはや神話に存在する伝承の如き力。彼らにしてみればどんなに優れた英雄であろうとも相手にはならぬ。まあ最もお主たちが生きている間に、そうした魔王とお目にかかる機会はないであろう。ゆえに最も現実的に注意すべきはその魔王が抱える側近じゃ。魔王はそれぞれ己の手足となる側近を無数に存在する部下の中から選ぶことが出来る。そうして選ばれた側近の実力は並みの魔族を遥かに上回る。正直、我ら人類の側にこの側近に太刀打ち出来る人物すら数少ないのじゃ」
セレナス:「なんや敵さんばっかり強そうな話やな~」
GM(教師):「まあ、生き残りたければそうした魔王や魔王の側近には近づかないことじゃ。もしもまかり間違って出会った際には逃げること。それこそが生き延びる唯一の手段じゃ」
イオス:(逃げる、か……。しかしそんな逃げてばかりではオレはいつまで経ってもあいつを越えられない……)
GM:そうしてその教師が授業を終えようとしたその瞬間、なにかを思い出したかのように呟く。
「……おお、そうそう。もうひとつ大事なことを忘れていた。
魔王とその側近も恐ろしい存在じゃが、もうひとつ『
イオス:「魔王の呪い……?」
GM(教師):「知ってのとおり、かつて神話の時代に我らが神々を滅ぼした魔王が存在した。その者こそが原初の魔王、神祖アルトサウディウスと呼ばれる魔王じゃ。だが、その魔王も我らの神々によってなんとか討ち滅ぼされた。
しかし、滅ぼされてなおその魔王の意思と呪いは消滅することなく、その世界に降り注ぎ今もなおその妄執の証とも呼べる呪いが残っておる。
それこそが『魔王の呪い』と呼ばれるもの。それを宿した者は神祖の魔王が持つ呪われた力を継承する。じゃが、これをその身に継承して、まともな精神を保った人間は一人もいない。
皆、例外なく魔王の意思に乗っ取られ殺戮者、あるいは魔王へと変貌するからじゃ」
イオス:その話を黙って聞いている。
GM(教師):「現に今の五大魔王も、その『魔王の呪い』のいずれかを継承し、その身に宿している。もしも人間がそれを宿せば、確かに強大な力を手に出来るじゃろうが、その先にあるのは魔王としての破滅のみ。ゆえに万が一にもそんなことはないじゃろうが、もしもお主たちがそのような呪いに侵されたのなら、取るべき方法は一つじゃ」
「世界のために死ぬこと。良いな?」
イオス:「…………」
セレナス:「なんや物騒な話やったね~、イオス君」
イオス:「……そうだな」
そうしてその日の講義は終わった。
この時にふたりが聞いた魔王、側近、そして魔王の呪い。
それがやがてこのふたりの運命に大きく関わるであろうことを、まだ知らずにいた。
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