2005年のタイムカプセル

吉永 夜市

第1話 松本のこと。

小学校5年の時。

赤毛のアンにみんな憧れていた。

松本は長い髪をおさげにして

そばかすもあって、まるで

「赤毛のアン」のようだった。


放課後、いつものように遊んでいると

彼女が言った。


「アンとダイアナって川をはさんで

手をつなぐやん?

あれって永遠の友情の証なんだよ」


私は知っていたので「うん」とだけ

答えると彼女は水溜りをはさんで

それをやろうと言い出した。


嬉しかったのと、照れくさかったのと

たくさんのいろんな気持ちが

私から「素直」という言葉を奪っていった。


「そんなん、いややん。せんよ」


すると私よりも、もっと恥ずかしい顔をして

松本は何事もなかったかのように

遊び始めたけど・・・。


あの時、どうして彼女の手をとって

「ずっと、仲良しでいようね」と素直に

言えなかったんだろう。


そして、今でも素直になれない自分は

後悔ばかりを繰り返す。

それが人を傷つけているとわかっているのに・・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る