第三者の存在?Ⅰ
「このまま調査をすすめ、追って報告させていただきます。赤ん坊の出生が不明な以上キュリオ様もお気をつけください」
「……」
大臣の心配する言葉が聞こえなかったように、キュリオは女官たちに抱えられている幼い少女の姿を静かに見つめていた。
大臣が部屋を出て行って間もなく、食事の支度のため退室した女官たち。
彼の自室には幼い赤ん坊とキュリオだけが取り残された。
「大人しい子だねお前は」
キュリオは自分の腕の中、声もあげずにじっとしている幼子(おさなご)に目を向けると…大勢に抱き上げられ疲れたのか、ウトウトと目を閉じかけている可愛らしい姿が視界に飛び込んできた。
「ゆっくり眠るといい、おやすみ」
クスリと笑みを向けたその心には、言いようのない感情が込み上げ…
彼はその想いを唇にのせるように少女の額に優しく口付けを落とした。
そして、ゆっくり窓辺に近づき手身近な椅子に座ると、いつのまにか夜の帳(とばり)が降りていることに気が付いた。
(もう夜か、今日は一日が過ぎるのが早い気がするな…)
その時、腕の中の小さなぬくもりがわずかに身じろぎした。
(起こしてしまったか?)
と手元へと視線をうつしてみるが、起きる気配はなさそうだ。
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