コント マジック

ジャンボ尾崎手配犯

第1話

舞台の真ん中に置かれている階段のついた大きな鉄製の台。

その上に置かれている棺桶型の箱。

箱の蓋に大きな剣が二本置かれている。

司会者山根が舞台に出てくる。

山根「どうもこんにちわ。私、今日司会を務めさせていただきます山根と申します。それでは、最初のショー、二代目トランプマンによるマジックショー『魔法のマジック』です。トランプマンさんどうぞ!」

二代目トランプマンと助手が入ってくる。

二代目トランプマンはラフな恰好、助手はマジシャン用の派手な服装。

山根「今日はよろしくおねがいします」

二代目トランプマン「……」

助手「……」

山根「あ、よろしくお願いします」

二代目トランプマンと助手は黙ったまま。

山根「えーと、マジシャンですからね、ミステリアスな雰囲気があるというか。えー、二代目トランプマンさんは、『なるほどザワールド』に出演していたトランプマンさんのお弟子さんなんですか」

助手「特に関係はないです」

山根「え、関係ないのに、二代目名乗ってるんですか。それは大丈夫なんですかね? え、あの、横にいるのはお弟子さんですか?」

助手「いえ、私が助手の三代目トランプマンです。横にいるのが今回マジックを披露する二代目トランプマンです」

山根「え? あなたが助手なんですか。服装的にはあなたのほうがマジシャンっぽいですけど」

助手「うちは、マジシャンのほうが普通の恰好をして、助手がマジシャンの恰好をするので」

山根「それ、初めて見る人は混乱すると思いますけどね。じゃあ、助手ということは、まだマジシャンになったばかりということですか?」

助手「もう十五年やってるんですけど、手先が不器用なので」

山根「もうやめちまえよ。才能ないと思いますけどね。まあ、とにかく今日見せてくれるマジックというのは」

助手「ここにある棺桶に二代目トランプマンが入ります。そして、鍵を閉め、横から剣を二本刺します。すると、えーと、ちょっと待ってください、なんだっけなあ」

山根「そこまで来たら、脱出する以外にないと思いますけどね」

助手「そうです。脱臭します」

山根「脱臭してどうすんだ。脱出だろ!」

助手「そうです、脱出です」

山根「まあ、ちょっと緊張してるみたいですけど、マジックの方は素晴らしいと思いますので。それでは準備してください」

台に上る二代目トランプマンと助手。

棺桶を開ける助手。

中に入る二代目トランプマン。

棺桶を閉める助手。

助手「それでは、まず剣を一本刺します」

右側から剣を刺す助手。

助手「じゃあ、次の剣は山根さんに刺してもらおうかと」

山根「あ、僕が刺していいんですか?」

助手「どうぞ、どうぞ、ぐっさりやってください。殺すぐらいの勢いで」

山根「言い方がアレですけど、まあ、刺させてもらいますよ」

台に上がる山根。

棺桶の左側に剣を指そうとする山根。

山根「ちょっと、なんか刺さりにくいですね。なんか、つっかえてるような」

助手「あ、もう力一杯思いきりやってください」

山根「大丈夫なんですか?」

助手「大丈夫です」

棺桶に深々と剣を突き刺す山根。

二代目トランプマン「ぐわっ!」

山根「あれ、なんか今、トランプマンさんの叫び声が聞こえましたけど……」

助手「(小声で)演出です」

山根「(小声で)なるほど。トランプマンさん心配ですねー。無事脱出できてるんでしょうか」

助手「さっそく開けてみたいと思います」

棺桶の蓋を開ける助手。

すぐに扉を閉める。

山根「どうしたんですか?」

助手「死んでました」

山根「(わざとらしく)ええー、なんとトランプマンさんまさかの脱出失敗! これは大変なことになってきました!」

助手「違うんです」

山根「何が違うんだよ」

助手「本当に死んでたんです」

山根「ええ! 演出じゃなくて?」

助手「山根さんの刺した剣が、師匠の腹に貫通してました。即死です」

山根「いや、だって、あんたが刺せって言うから」

助手「やばいですよ」

山根「やばいって、お前の責任だろうが。どうすんだ、ショーの最中に死人出ちゃったじゃねえか」

助手「とにかく、棺桶を移動させましょう」

山根「棺桶って言うなよ! くそっ! そうだな。死体をここに置いておくわけには」

助手「これ本物の棺桶なんで、このまま火葬場に持って行けば、万事OKです」

山根「OKじゃねえだろ。どうすんだよ」

助手「あとは山根さんのアリバイを作って」

山根「アリバイも何も、俺が剣を刺したところはお客さんがみんな見てるからね」

助手「じゃあ、師匠が脱出に成功したことにしましょう」

山根「どうやって?」

助手「実は山根さんが二代目トランプマンということで」

山根「箱の中にいる奴はどうすんだよ!」

助手「あ!」

山根「ん? どうした」

助手「やばいです、血が流れてきました」

山根「うわ、本当だ! やばい、やばい。もう駄目だ、トラブルが発生したと客に言おう」

二人の後ろから現れる二代目トランプマン。

助手「脱出成功です!」

山根「うわ、びっくりした! 生きてたのかよ」

助手「失敗するわけないじゃないですか。マジシャンですよ」

山根「ドキドキしたー。って、ちょっとお腹のあたり傷ついてるぞ」

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