リリィ・フラワーガーデン

並木坂奈菜海

リリィ・フラワーガーデン

リリィ・フラワーガーデン

第1話 朝、花たちは目覚め、




「zzz…zzz…」


 朝、午前9時頃。

 私がまだ、ベッドの上で微睡んでいたとき。


麻衣まいー!起きなさーい!」


 今日は台風でお休みなのに、お姉ちゃんの大きな声で起こされる。


「お姉ちゃん…私まだ眠いよ…わひゅいっ!あ、あっ、や、やめてぇ…」

「ほら、胸揉まれたくなかったらはやく起きる!」

「分かった…わふっ、だ、から…や、やめっ」


 こうやって私のお姉ちゃんは、「わしわしMAX」(本人呼称)を使って、起きる気のない私を無理やり起こす。


 いつもならお姉ちゃんが起きたときに、ダブルベッドの隣で寝ている私をすぐに起こすけど、今日は休みだからなのかしなかった。でもお姉ちゃんはいつも通りの時間に起きる。

 もう少し寝ていればいいのに、もったいないと思う。


「おはよう…お姉ちゃん…」


 寝ぼけ眼で挨拶をする。


「ほら、シャキッとしなさい!」

「うん……うわっ」


 寝ぼけているせいか、体が少しふらついてしまう。

 思わずお姉ちゃんにしがみつく。


「あ、こらっ、寝ぼけて、るんじゃ、あ、ああっ」

「どうしたの…おねーちゃん…」

「だ、だからっ、胸揉まないでっ…あうっ…!」


 言われて見ると、私の左手がお姉ちゃんの胸を鷲掴みにしていた。

「あ…ごめん…」


 パッと手を放す。


「ったく…早く顔洗って、ボサボサの髪とかして来なさい」

「うん…ふあああっ」


 あまり女の子らしくない、大あくびが出た。




「いただきます」


 今日の朝ご飯はお姉ちゃんお手製のベーコンエッグ。

 黄身は私好みに程よく固まっている。


「お姉ちゃん、今日どうするの?台風だから出られないよ?」


 私がご飯を食べている今も、烈風の吹く音と、雨粒が窓を打つ音が家の中に響く。


「そうなのよねぇ…家引きこもってても何もないし…だからって二度寝はしちゃダメよ?」

「うぐっ…」


 一瞬固まる。


「はぁ…全く、ぐうたらな妹ね」

「べ、別にいいでしょ、今日くらい!?」

「夜寝られなくなるし、そうなったら肌荒れるわよ。彼氏がほしかったら少しは節制することを覚えなさい」

「お姉ちゃんだって彼氏いないくせに!」

「それは、まぁ、麻衣がいれば満足だから」


 そういって、私の体にすり寄ってくる。

 これだから学校で「百合姉妹」とか言われるんだよねー。でも、お姉ちゃんのこういうところは、私も好き。




 お姉ちゃんの重さと温度が私から離れる。


「さぁ、早くご飯食べちゃって。片付かないから」

「はーい」




 朝ごはんを終えて、部屋で着替える。

 今日の下着は、赤と白のチェック。2ヶ月くらい前に、お姉ちゃんと色違いで買った。

 夏ももうすぐ終わりだけど、まだ暑いから、ワンピースにしようかな。




「あら、着替えたの?」

「だって、二度寝禁止なんでしょー?」

「当たり前じゃない」


 リビングに降りると、ソファでテレビを見ていた。

 なんとなく隣に座る。

 テレビは、台風の中継をしていた。


「現在、関東地方に接近している台風18号は、依然勢力を強めながら、千葉県の沖合200kmにあって、北北東に時速40kmで進んでおり…」


 チャンネルを変えても、台風ばかり。


「ねぇ、ニュースじゃなくってさ、映画観たい。DVDのやつ」


 お姉ちゃんにおねだり(?)してみる。


「そうね、そうしましょう」




 家に大量にあるDVDから、私のお気に入りを選ぶ。

 お姉ちゃんはそれを見て、


「麻衣って本当にこれが好きなのね」

「うん!」


 私が選んだのは、「美女と野獣」。

 ただし、アニメーション映画ではなく、少し前にやっていた実写版。




 主題歌に合わせて流れるエンドロールを見終えた頃。

 ぐぅぅぅぅぅ。

 私のお腹が鳴った。


「もうお腹減ったの?」


 笑いながらお姉ちゃんが言う。


「だって、もうお昼だよぅ?」

「それもそうね。じゃあ、ご飯にしちゃおっか。麻衣、手伝ってね」

「はーい」


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