真☆中二病ハーレムブローカーⅡ 趣味は異世界を救う!
東導 号
第1話「プロローグ☆悪魔王からの依頼」
「爆炎!」
「炎弾!」
「暴風!」
「岩弾!」
凄まじい音と共に燃え盛る灼熱の炎、吹き荒ぶ嵐、そして巨大で無数な岩の塊が相手へ迫る!
容赦ない攻撃魔法が次々と敵を襲う!
俺達は今、敵……巨大な蟻の群れと戦っているのだ。
蟻の体長は約3m。
想像して欲しい。
尋常な大きさではないのが分かるだろう。
全身が厚く硬い皮膚に覆われ、口からえげつない蟻酸を吐く。
かつて迷宮を冒険した時に出会った同じ魔物とは比較にならない大きさ、そして凶暴さなのだ。
それが何と推定数万匹は居る!
見ているだけで、気持ち悪くてぞくぞくする。
鳥肌が立つ。
そして倒しても倒してもわらわらと現れる。
まるで無限地獄だ。
魔物のレベルが遥かに桁違いなのは当然であった。
ここは地上ではないからだ。
今、余裕は全くないけど、挨拶しなくちゃな!
おっす!
俺はユーキ・トール。
地球からの転生者だ。
前作を読んで頂いた方はお久し振り。
何とか生きていましたという生存報告だと思ってくれ。
……そして初めての方、宜しくお願いします。
簡単に自己紹介すると、まだ地球で生きている頃、腹が減ったので自宅からコンビニへ買いものに出かけた途中、 闘神スパイラル様の愛車に轢かれ、俺は呆気なく死んだ。
お詫び?にスパイラル様が管理するこの異世界へ転生させられ、数多の冒険を経て今は 幸せに暮らしている。
冒険の途中で知り合った優しい美少女嫁ズと一緒にね。
だが!
こんな俺を世間は放っておいてはくれなかったのだ。
それは嫁のひとり悪魔王女イザベラの父、悪魔王アルフレードルからの依頼がきっかけだった。
「トールに、イザベラ。お前達はいずれ新たな商売を始めるのだろう? で、あれば俺から話がある、急ぎ魔界へ来るがよい」
こんな口上が使い魔によってもたらされ、俺は嫁ズ全員と共に、再び魔界へ赴いたのだ。
商売の話で呼ばれたから、普通は何か俺達へ出資するとか、こんな魔界の商品を取り扱って欲しいとかそのような相談だと思うじゃないか。
それが……俺と嫁ズは魔界の、とある原野に居るのだ。
周囲は大きな岩ばかりで、草木も殆ど無い砂漠。
大きな空は雲など一切無く、濃い紫一色であり、今は一応昼間だが何とも寒々しい雰囲気である。
何故俺達がこのような場所に居るのか?
それはアルフレードルから魔物討伐の指令が出たからであった。
当然、娘であるイザベラへ他の嫁ズから非難が集中する。
嫁ズ全員がイザベラへ冷たい視線を浴びせ、代表して竜神王の娘ジュリアが問い質す。
「もう! イザベラ、どうして? お義父様の呼び出しって商売の話じゃないの? それがこんな荒野で蛇や蠍、蟻の討伐の仕事なんて! ちゃんと説明してよ、貴女のお父様でしょ」
「どうして? って私に言われても……いきなり出撃しろって言われて私だって頭に来ているのよ」
イザベラも憤懣やるかたないといった表情でやり返す。
今や妻同士一番の親友となったジュリアとイザベラが罵りあい、一触即発の状態なのだ。
ここでふたりの間に割って入った大柄な男がひとり。
「まあまあふたりとも……今は目の前の任務に集中してくれ」
「任務って……確かにこういうのは親衛隊長の貴方には大事な任務でしょうよ、アモン!」
「ふふふ、まあな」
にやりと笑った男は悪魔アモン。
彫りが深く目付きが鋭いイケメン。
俺にとっては戦いの師匠といえる大悪魔であり、かつて共に冒険をした兄貴分だ。
傍らに立つアモンは腕組みをし、数百の悪魔親衛隊を従えていた。
「もっと詳しく話を聞けばよかったのに!」
「有無を言わさず来いって言われたのよ!」
ジュリアとソフィアの諍いはまだまだ収まりそうもない。
俺は口論するふたりを宥める。
「まあまあ……俺達、最近暴れていなかったから、運動には丁度いいよ」
「でも旦那様……忙しい中、折角来たらこれなんだもの」
俺が宥めてもジュリアは不満を隠さない。
他の嫁ズも同様に不満顔だ。
確かに俺達は忙しい。
しかし俺には分かる。
あの思慮深い悪魔王が何の意味もなく、このような討伐の仕事だけで魔界へ呼ばないだろうと。
「まあ良いさ。どうせアルフレードル様には何か考えがあるのだろう?」
「だと……思う」
イザベラも頬を膨らませ、口を尖らせている。
自分のせいではないのに責められておかんむりになっているのだ。
ああ、イザベラの奴、可愛いな。
我が嫁ながら美少女は何をやっても絵になる。
俺はむくれるイザベラの頭にぽんと手を乗せ微笑んだ。
シルバーの綺麗な髪がさらさらとなびく。
「なら良いさ、さっさと仕事を終わらせよう! だよな? イザベラ!」
「うん! 無茶振り親爺のせいで本当に御免ね、みんな!」
俺に諭されて素直に謝るイザベラに家族全員が和む。
魔界で俺達が依頼された討伐の仕事……それはこの地域に巣食う凶悪な魔物を倒すことだ。
ここに居る奴等は蟻だけではなく全てが、同種の魔物より桁違いに大きい。
恐竜並みの大蜥蜴とか、体長15m以上はある毒蛇や群れを作って獲物を襲う5mはある大狼とかだ。
怖いもの知らずなこいつらは、何と悪魔でさえ捕食しようとする。
魔界の生き物なので肉体だけでなく、魂さえも大好物であるという。
始末に終えないとはこの事だ。
魔族の頂点に立つ悪魔は基本的には死なないが、魂が失われればさすがに消滅する。
だから自殺する悪魔は自ら魔物に喰われるらしい。
俺にはまったく想像がつかないが、死にたい悪魔にとっては最も有効な自殺方法だそうだ。
イザベラの依頼を遂行する為に俺が初めて魔界へ来た時、この世界は厭世的な雰囲気に満ちていた。
闘神スパイラルとの戦いに敗れ、このような地の奥深くで暮らす悪魔にとっては深刻な食糧問題と共に明日への夢がなかった。
しかしスパイラルへの信仰が広まるにつれ、悪魔にも支援が送られたのである。
俺の嫁であるソフィアは幻の王国旧ガルドルド魔法帝国の王女であったが、その生き残りで素晴らしい技術を継承した者達が恩恵をもたらしたのだ。
ガルドルドの最大の功績は魔界の食糧問題を解決した事だ。
迷宮の奥深く地下農場を展開していた彼等の技術を応用して、この魔界にも農場を開発したのである。
こうなるとどんどん農業改革が進む。
まわりくどい話になってしまったが、今回アルフレードルから与えられた俺達の任務は農地拡大の為に外敵を駆除することであった。
「さあ、やろう!」
クランバトルブローカーの司令塔である俺が決を下したので嫁ズも覚悟を決める。
どうせ、今更途中でやめる事など出来ないのだ。
とりあえずは目の前にあるでっかい蟻塚ごと怪物蟻を駆除する事が先決である。
「よっし
俺の言葉に勘の良い嫁ズが頷いた。
蟻塚の中には奴等のリーダーである女王蟻が居る。
管理神スパイラル様の使徒である俺は神の力、すなわち神力波を使える。
神力波はエネルギー化して敵を攻撃する事が出来るが、念力のように相手を摑んだりする事も可能なのだ。
「たあおっ」
気合一閃!
俺の放った神力波は蟻塚ごと数万匹の蟻達をがっちりボールのように固めてしまう。
敵は動けず攻撃出来ないから、今がチャンスだ。
嫁ズは攻撃魔法を撃つ態勢に入り、アモンが得意の炎を吐く準備。
アモン麾下の親衛隊達も同様に魔法攻撃のスタンバイをする。
「よっしゃ、行けっ!」
「爆炎!」
「炎弾!」
「岩弾!」
「風弾!」
「暴風!」
火属性魔法がメインの手段なので水属性の魔法は使わなかったが、それ以外の属性魔法が雨あられと降り注いだ。
とどめはアモンの灼熱の炎である。
魔界の砂漠は暑いし、動ければ蟻共も防御態勢を取ったのだろうが、自由を奪われては一巻の終わり。
蟻塚は崩れ落ち、蟻共は塵と化した。
「ふうう、やったな」
「「「「「「はいっ!」」」」」」
俺の問い掛けに頷く嫁ズ。
しかし……アモンがさっと手をあげて制止する。
「待て! 新手のようだ」
確かに俺の索敵にも新たな敵が接近するのを探知している。
しかもそれは……
がさがさがさがさがさがさ!
「ぎゃああああああっ!!!」
「いいい、いや~っ!!!」
「来ないで~っ!」
嫁ズの張り裂けそうな悲鳴が響く中、独特な足音を響かせて現れたのは……
黒光りする平べったい巨体で迫る、『ゴ』のつくあの虫共であったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます