…
「そうだと思う……。だけど、私は、あなたみたいに完璧な人間になれないから」
「どうして」
「あなたとこれ以上一緒にいるのは、もう、よくないのよ」
僕は、誰を愛していたのだろう。
目の前にいる女じゃないのか。
『行かないでくれ、結婚しよう』
どうして、この一言が言えないのだろう。
僕の何が、この関係性を止めるのだろう。
終止符を打ちたいわけではない。
諦めたいわけでもない。
でも、何も、言えない。
言葉がでてこないのだ。
桃は、苦笑しながら、アールグレイティーを飲み干した。
僕は、静かに、席を立った。
「終わりに、しよう」
そういうと、僕は鞄を手に持ち、喫茶店を後にした。
後ろから、桃の泣き声が聞こえた。
しゃくりあげるような大きな泣き声が聞こえた。
桃の声が、胸を締め付ける。
それでも、僕は、歩くことを止めなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます