「そうだと思う……。だけど、私は、あなたみたいに完璧な人間になれないから」

「どうして」

「あなたとこれ以上一緒にいるのは、もう、よくないのよ」

僕は、誰を愛していたのだろう。

目の前にいる女じゃないのか。

『行かないでくれ、結婚しよう』

どうして、この一言が言えないのだろう。

僕の何が、この関係性を止めるのだろう。

終止符を打ちたいわけではない。

諦めたいわけでもない。

でも、何も、言えない。

言葉がでてこないのだ。

桃は、苦笑しながら、アールグレイティーを飲み干した。

僕は、静かに、席を立った。

「終わりに、しよう」

そういうと、僕は鞄を手に持ち、喫茶店を後にした。

後ろから、桃の泣き声が聞こえた。

しゃくりあげるような大きな泣き声が聞こえた。

桃の声が、胸を締め付ける。

それでも、僕は、歩くことを止めなかった。

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