第4話 異変と変革と(後編)
空は鉛色の雲に覆われ薄暗い影を落とし、遠くの山まで真っ暗になっていく。鼻先に大きな雨粒が当たった。周囲にある木の葉っぱがポツポツと音を立てはじめ、数秒と立たないうちにバケツをひっくり返したような大きい雨粒が天から降り注ぐ。
追悼式は終わり器具の回収や人員の撤収もほぼ完了しつつある中、我流大輝は改めて慰霊碑を食い入るように眺めていた。後ろで傘を差しながら見守る北村の話によれば、追悼式前に我流大輝は突然姿が異形に変わりバリケードを突破し、立ち入り禁止区域へ一人で踏み込み後から捜索のため追いかけた役員の人たちが道中で倒れているのを発見し追悼式場に臨時で設けられた救護スペースに運び込まれたらしい。目覚めたとき、変化の姿のことを聞かれたりしてたが周りの反応は腫物を触るような態度だったのを覚えている。そんなことはどうでもいい、我流大輝は納得がいかなかった。
「どういうことなんだ…」
あまりの衝撃な事実を発見し思考が停止しつつある大輝は、震える声でボソリと呟く。目の前にある慰霊碑、かつてアーレス彗星の砕けた破片の一部が一個の町に落ちて壊滅し、被害に合い亡くなった人達の名前が刻まれている。
そう、何度確認しても間違いない。
「なんで…」
彼が見つめる視線の先、慰霊碑に書かれている被害に合った町の名前は”京都府笹ヶ峰町”、そして隕石落下犠牲者の中に決定的な名前を見つけた途端、世界の音が消えた。
「峰崎…涼香…」
わけが分からなかった。どうしてここに涼香の名前があるんだ、だってついさっきまで俺はアイツと一緒にいて喋ったりしていたのに。今でも記憶はハッキリと鮮明なものとして残っている、間違いはない。自分に言い聞かせるのとは別に何処からか、それは事実だとイタズラに囁かれている気がして先ほどから心臓が今の心の乱れを反映するかのように暴れ収まりが聞かず、喉を何かで締め付けられているみたいに息が苦しい。
「お前変だぞ、どうしたんだ?」
後ろで心配そうな声で話しかけてくる北村を無視し、大輝は顔を横に振って受け止めがたい事実の反動で停止しつつある頭を奮い立たせ、あらゆる思考を巡らせる。ここに名前が刻まれているということは隕石落下の被害者で現在は生きていない、この世には存在しない人間だ。けどついさっきまで俺は確かに涼香と一緒にいたということは…。
「俺が、2年前の世界に行ってたってことか…」
でなきゃ辻褄が合わない。現実にはあり得ないことだけど、頭の中にある鮮明な記憶と今でも鼓膜に残る涼香の声は大輝に確かな確信をもたらした。もっとも魔神の剣と堕神に関わり始めたときから、自分は人間の常識とは開け離れた立ち位置の人間となってしまったことで、いつ非現実的なことが起きても不思議ではないという気構えがある大輝だからだこその理解力と受け入れの器の大きさがあるからだ。
ぶぇっくしゅんっとパワフルなくしゃみをかます大輝はようやく自分がずぶ濡れであることに気づき、肌寒さから全身をブルブル震わせながらポケットに手を突っ込む。
ふと、指先になにか当たり取り出す。
「…これは」
ポケットに入っていたのは、白い花の飾りがついたヘアピンだった。コンビニで見せてもらった時に返しそびれて持ったままだったの思い出す大輝は、ふと頭の芯がうずく。
「人と人は繋がっている…関われば繋がりは生まれ時が経つにつれ捻じり合い深みを増し、どんなに距離があろうとも信じる心を強く持てば互いを引き合わせる…」
涼香と行った駅の喧騒の中で聞いた占い師の言葉が脳裏をよぎり、縋る思いで口にする。まだ俺たちは繋がっている、何か方法があるはずだ…。
その時、大輝は背負っている魔神の剣に目を向ける。
「そういや、どうしてあの時、魔神の剣は勝手に……」
もしかしたら…。
大輝は包み布から魔神の剣を解放し、地面に突き刺す。ガギィンっという甲高い金属音が雨の中に響き渡る。髪の色は白から黒へと変わり大輝の頭頂部から腰のあたりまで流れるように伸び、優しく丸み帯びた短い睫毛は鋭い刃物のように尖りそれに縁どられた瞳は金色に光り目元に荒々しい皺と筋が浮かび上がる。
「お前、その姿…」
「わりぃな。色々事情があってよ、帰ったら説明する。ちょっと行ってくるわ」
驚きのあまり目を丸める北村にニィっと笑顔を見せる大輝は背を向けると、魔神の剣を突き立て雨でぬかるむ砂利の地面を蹴って飛び出す。大きな雨粒を全身に受けながら走る大輝は立ち入り禁止のバリケードを突き破り山の中へ入り込み、森の中を突き進む。背丈ほどある草をかき分け木々の間を掻い潜り、道なき道の獣道を弾丸のごとく突破していく大輝の手先から伝わる魔神の剣の鼓動が山頂へ近づく度大きくなっていく。
「今ならハッキリわかる。魔神の剣はあの時暴走したんじゃなく俺をどこかへ導こうとしてた、だとすれば…」
上に何かあるんだ、そう確信する大輝は地面を蹴る足に力を込め走る。登り始めてどれだけの時間が経っただろうか、恐らく魔神の剣変化時の身体能力がなければ優に一時間ほどかかる山を駆け上がるにつれて、雨の勢いも弱まる。気が付くと樹木の姿は消え、広い道路に出た。長いこと車が通っていないのかアスファルトは割れ隙間から雑草が生えており、バス停の待機小屋も草の蔦が絡みつき草が生え放題で人が使っている気配はない。
「ここは…」
大輝には見覚えがあった。涼香と買い物行く時に乗るバスでよく通った場所だ、もう近い。早まる心臓の鼓動に駆られるかの如く駆け出す大輝は、ゆるくカーブする参道を進む。
この先にあるのだ、涼香と過ごした笹ヶ峰が…。
「……え」
広がる光景に意識を持っていかれ足の回転速度が落ち失速する。
走る大輝の目に飛び込んできたのは、巨大なクレーターと粗く削られた山の姿だった。まるでそこだけ世界から切り離され時が止まっているのかのように静まり返り、自然の匂いや息吹すら感じられない。中心には大きながボッカリ空いていてクレーターの緩やかな斜面には瓦礫の破片や車や電車、家の残骸らしき物が地面の中に埋まっている。
「あのクレーターの場所は、かつて笹ヶ峰のあった場所じゃよ」
ふと後ろから聞こえた声に振り返ると、黒い布を頭から被る背の低い人物が立っていた。
「…駅で会った占い師の婆ちゃん? なんでこんなところに?!」
「もう一度行くのじゃろ」
「え…? あ、あぁ……そうだけど…方法が」
そうだよ、ここまで来ても2年前に行けなきゃ意味がないじゃんか…。奥歯を噛みしめていると、占い師は大輝の持つ魔神の剣を指さす。
「その剣は、ありとあらゆるものを斬り裂き潰す絶対破壊の剣。時間の壁を斬り裂き開けることもできる」
「じ、時間の壁?」
「普通の人間がいくことは出来ないが、人と人ならざぬ者の間に存在するお主なら通るこが出来る、そして道しるべも持っておる。迷うことはない」
「でも、どうやって…」
「強く願いのじゃ。そうすれば、あとは剣と道しるべが導いてくれる」
「道しるべ…」
大輝は手に持っている白いヘアピンに視線を落とす。やるしかない、もう一度会うために。
「よぉし…」
かつて魔神の剣を手に入れる前、鍛えてくれた師匠は言っていた。心の乱れは刃にそのまま出てくる。一切の雑念を頭から取り払い針の穴に糸を通すような感覚で集中力を一点に持っていけ、さすれば見えないモノが見えてくるはずだ、と。
すーっと息を吐きゆっくり瞼を開ける。大輝は魔神の剣を横一閃に振るった。
ゴォン!! っという重厚な音とともに目の前の景色は割れ大きな穴が出現。瞼も開けられないほどの凄まじい突風に体が引っ張られるのに対し魔神の剣をアスファルトに突き立て堪える中、手に持っている白い花柄のヘアピンから白い糸のようなものが現れ、穴の中へと吸い込まれていく。
「時間のトンネルに続く出入り口じゃ」
「これが……………。そういや、なんで魔神の剣やこのことを」
魔神の剣を抜き振り返ったとき、大輝は占い師に体を強く押され穴へと吸い込まれていく。
「ただ、もう一度…失ったモノを取り戻したいだけじゃよ…」
そういって占い師は頭からかぶっていたフードを取り顔を見せる。大輝は目を見開き、言葉を失った。顔の左側は高熱で溶かされたのか皮膚の色素が薄く飛び散ったような傷跡がくっきり残っており眼球は白く濁っているが、その優しい眼尻、温かい微笑みは今でも忘れるはずがなかった。
「涼香の、ばあちゃん…?!」
体がどんどん時間トンネルの中へ吸い込まれる中、大輝は遠のく涼香の祖母へ叫ぶ。
「待ってろ!! もう一度絶対!! 涼香に会わせてやるからなッ!!」
力強い大輝の声はやまびことなって響き渡り、やがて消えていく。音もなく閉じる時間トンネルの入り口前で目から大粒の涙を流す涼香の祖母友恵は、震える両手を合わせ額に当てる。
「どうか、無事で…」
平べったく白い枠に縁どられた中に映る人物に見覚えがあった。一人の少女の現在から幼少期に至るまでの人生の映像、まるで流星のごとく同じような形をしたのが目で追いきれないほどの速さで流れる中を漂う大輝は、景色を眺めていると、頭の片隅で消えかかっていた何週間か前の夢の断片が脳裏を駆け巡った。
ふと、真横を黒い何かが通り過る。
目で追うと、そいつは黒い鎧を身にまとい片手に携えた長い刀で着物姿の幼い女の子が泣いているのが映る白い板を斬り裂き、開いた入り口の中へ入っていく。
「あいつは…あの時の堕神」
大輝も後を追って飛び込むと、視界は一気に白くなり、数秒と立たないうちに桜の花びらと見慣れない外壁が目に飛び込んできた。投げ飛ばされ庭に転がり出る大輝は地面に体を強く打ち付けながらもすぐさま立ち上がり周囲を見渡す。
桜が咲く木の下、先ほどと黒武者が刀を振り上げ目の前にいる女の子に振り下した。
ガギィン!! 甲高い金属音が響き渡る。黒武者の刃と大輝の魔神の剣がぶつかりあい、衝撃波で周りの地面の砂塵や桜の花びらが舞う。大輝は剣を持ち上げ、黒武者の腹部に蹴りを押し込み体勢を崩した隙に間合いへ踏み込み横一文字に薙ぎ払う。そのまま体をコマのように回転させ加速してから黒武者の顔を斬り飛ばす。首から大量の血を噴き出しながら残された体を地面に倒れ、黒い塵となって景色の中へと消えていった。
「しぶといやつだなぁ…」
溜息を吐く大輝は振り返り、女の子に歩み寄る。
「大丈夫だったか、怪我はねぇか?」
屈んで顔を覗き込む訊ねるが女の子は嗚咽混じりに手で涙を削るように拭う。見ると足元に粉々になった簪が居っており女の子の髪は乱れている。怪我はないみたいだし大丈夫みたいだな、しかし…頭を撫でてやる大輝は、どうしたらいいのか難しい顔で眉を顰めていると、閃いたのかパっと目を見開く。
「いいものやるよ」
そういってポケットから取り出したのは、白い花飾りのついたヘアピンだった。
「これはお守りだ」
女の子に手渡すと頭を優しく撫でてやってから大輝は立ち上がり魔神の剣を肩に担ぎ、周辺に堕神がいないか確認すると、じゃあなっと女の子に手を振り走り出す。
勢いで少し寄り道しちまったけ閉まってないよな…少し不安を抱きながら桜の木のところに戻ってきてみると入り口を発見し安堵の息を零し、再度時間トンネルの中へ飛び込む。
大輝は手に握っている白い糸に導かれるまま時間トンネルの中を流れる過程で、峯崎涼香の過去から現在までを辿っていく。
そして、自分が消えてからの時間帯までやってきた。
学校に怪物が現れてから消えた大輝を探し町中を走り回るが結局見つからず、電話もメールも通じず一人部屋で泣いていたこと。そして須日後に学校の研修で京都駅に来た時、別の学校の修学旅行生に絡まれ人気のないところへ連れていかれ乱暴に制服を脱がされそうになった時、助けてくれたのが同じ日に修学旅行で京都へ来ていた中学校時代の我流大輝だった。しかし、いつもの調子で話しかけるも当時の我流大輝は魔神の剣すら持っていない普通の人間なので涼香のことを知るはずもなく冷たい態度で返され、その日の夜は一人涙を流しながら眠りについた。
「そりゃそうだろ…わかるはずねぇって」
更に時間がさかのぼり、翌日。
峯崎家に突然やってきた涼香の父親は涼香を強引に連れ出し神社へ連れていく。その理由は御神体から数日後に笹ヶ峰は壊滅するというお告げを受け、助かるには峰崎家に伝わる古の術式で舞姫を受け継ぐ者をいけにえに捧げなければならない、という助言があった。すぐさま逃げ出した涼香は数日ほど身を隠しながら町役場や神社関係者の捜索を掻い潜る。しかし、時間が経過するにつれて逃げ場がなくなっていき追い詰められていく涼香は携帯でとあるメールアドレス先へ文を送る。
”助けて”という短い文だ。
「…あのメール…そうだったのか…」
直後に涼香は捕まり携帯を取り上げられる。神社へ連れていかれる際に、助けて! と大声で叫んだ。
「あの声も…俺に助けを…」
段々と時間を駆け上がる速度が上がる。涼香は舞姫の恰好をさせられ役場や神社関係者が見守る中、入り口から敷かれた赤い絨毯の上を歩く。その先には、銅で作られた大釜に何千度ものマグマがぎっしり詰まっておりグツグツと音を立て白い煙が湧き出ている。
涼香が大釜の縁に立った。
少しためらい気味に足を踏み出し、マグマへ身を投げた。
「すずかああああああああああ!!!!」
たまらず大輝は猛然とダッシュし手を伸ばす。
誰か、助けてよ…。
「なに泣いてるんだよ」
振り向くと、大輝が白い髪をなびかせ魔神の剣を肩に担ぎ、ニィっと笑っていた。何もない真っ白な景色の中で、二人は向かい合わせに、立っている。
「あぁ、そっか。この格好で会うのは初めてか…いろいろ訳があって、この剣を握ると姿が変わっちまうんだ。んなことより」
大輝は歩み寄り、まるく見開いた目でポカンと口を開け見てくる涼香の頭を撫でる。子供の様な間抜けな表情が心の底から愛おしくてたまらなくて、大輝の顔から笑みがこぼれた。
「遅くなってごめん、助けにきた」
その時、涼香の脳裏で姿が重なり時を経て一致した事実に目を大きく開く。あの日、桜の木の下で泣いている私に白い花飾りのヘアピンをくれたのは、彼だ。確信に頭の芯の疼くのがわかった。消えて無くなりそうな記憶の鏡に映る、屈託のない笑顔に長く白い髪。心の奥底に眠っていた幼き日に一瞬だけ抱いた感情が急浮上するかのように、肋骨の中で心臓は喜んではねている。
同時に涼香は両目に涙を溜めながら、存在を確かめるように。
「…大輝…君な…ん?」
涼香の震える声に名前を呼ばれ、大輝は力いっぱい答えた。
「当たり前だろ! 俺は俺だ!!」
右腰に手を当てる大輝は片腕を力強くガッツポーズし、ニィっと笑う。ぽろぽろ大粒の涙をこぼす涼香は大輝をぎゅっと抱きしめ、腕に力がこもる。正直、時間が2年違うのに気づいたときは二度と会えないのかと諦めかけたが、それ以上に俺の心の中で誰かが言った気がした。簡単に諦めるな、可能性が少しでもあるなら最後まで全力を尽くせ、と…。
そう囁く声が聞こえたのだ。
心の底からホっとする大輝は、泣きじゃくる涼香の頭を撫でながら言う。
「ごめんな、急に居なくなったりして」
何が原因で元の時代に戻されたかは不明だが、涼香に事情を話しても理解にできる内容ではないのであえて詳しいことは話さないでおこう。
「ホンマや! 変な化け物が居らんくなった後から姿見えんし町中探したやんやで…家の住所も電話番号も聞いてないし、メールは届かないままやし…はよ携帯なんとかして電話番号教えてライン交換! 絶対やで!」
大輝から一歩離れ指さしながらマシンガン説教する涼香は唇を尖らせ、腕を組みプイっとそっぽを向く。
「あ、お、おう! わかった。ちゃんとするから!」
その勢いに完全に押し負けた大輝は両手を合わせ謝罪のポーズを取る。後から気づいたのだが元の時代に戻ったときはポケットに携帯は入っていたのに、こっちに来たときにはポケットに携帯が入っていない。記憶が正しければ2014年時点で大輝の持っている携帯は発売されておらず、本来時間的にまだ存在しないモノなので消えたのではないだろうか。
でなければ説明がつかない。とはいえ約束した手前、物理的に無理なのを説明するには相当骨が折れるので後で何か策を練らねばな…。
っと、今はそんな事よりもやらなきゃいけないことがある。
「涼香」
「なあに?」
「帰るぞ」
「うん!」
花咲くように、にぱっと笑う涼香を片腕に抱き上げると、大輝は魔神の剣を頭上に掲げ、白い世界を斬り砕く。
突然銅の大釜が砕け、中のマグマがスライムのように流れ出てくる。床は解け白い蒸気が立ち上がり周りに居た町役場の関係者の神社関係者達、涼香の父親は迫る溶鉱炉から逃げ入り口付近に寄り添うように固まる。寺の中が見えないほどの蒸気に現れる人影はマグマの上を足で平気に歩きながら、剣で薙ぎ払われ視界が一気に晴れる。
そこに立っていたのは鉄の剣を右手に持つ白く長い髪の青年と、その腕に持ち抱えられている少女だった。
「ば、ばかな…」
目を見開き表情が驚愕色に染まる涼香の父親に続き、町役員や神社関係者達はざわめく。どうやって何千度もある溶鉱炉から出てこれるのだ…ふと、涼香の父親の視線が青年の持つ鉄の剣へ向いた。同時に蘇る、昔、妻が亡くなった日に御神体様から”いずれこの寺に剣を持った白い髪の男が訪れ、お主たちの築き上げてきた地位や名誉・家が滅び去るであろう”と告げられた予言が脳裏をよぎる。
不安に駆られる涼香の父親は腰に携えている刀を抜く。
両者の刃がぶつかり火花を散らす。
「なっ…いきなりあぶねぇーじゃねぇかオッサン!!」
「術式の邪魔をしよってからに! 早く再開せねば、町に不幸が…!」
「その御神体様に言われたからって自分の娘をマグマの中に突っ込むか?! 頭おかしいぜアンタ!!」
「オマエみたいな何も背負ってないガキには分からんだろうさ…手にした地位や名誉、家、最愛の妻が愛した町を守るためには、自分の子供であろうと犠牲にせねばならんのだ!」
涼香の父親が体重を乗せ刀を押し込む。負けるわけにはいかない、奥歯を噛みしめる大輝は涼香を懐に抱きかかえた状態で魔神の剣を両手で握り押し返す。
「代々峯崎家は町を守る御神体を慰め、守る役目に仕えてから幸福が呼びこまれ栄え続けている! その邪魔はさせん!」
「娘一人を犠牲にしようとして何が幸福だボケ!!」
「人間一人の命で大勢の命が助かるのだ! 代価としては安いものだろ!」
「そういう手前勝手な考え方が俺は大っ嫌いなんだよ!!」
「うるさい!」
涼香の父親は距離を取り横なぎに振りかぶった。大輝は咄嗟に魔神の剣を逆手に持ち変え振り下す。衝突する刃の金属音が豪快に寺の中へ響き渡る。そこから大輝は左手を魔神の剣に添えて腕に力を込め回す。パキィンっと情けない音を立てて押し負けた涼香の父親の刀は折れ、先端の刃が空中をくるくる回り床に突き刺さる。
その隙に大輝は右手を拳にして握りしめ涼香の父親の右頬を思い切り殴った。拳の威力に吹き飛ばされた涼香の父親は背中を床に打ち付け倒れる。御神体とか地位や名誉や家のために働いた自身の行いによって家族へ矛先が向き、数年間町の住人から八つ当たりの対象になってしまった娘の命を一つの駒としか思っていない父親が、ただ単に許せなかった。
まだ感情の高ぶりから震える拳を無理やり解く大輝は、懐にいる涼香を解放し離れるよう手でジェスチャーすると奥歯を噛みしめながら言う。
「ようやく涼香を助け出す方法が分かった…こうすれば良かったんだ」
大輝は白い髪をなびかせ振り向く。その先には寺の奥に飾られた御神体がある。
「やめろ…なにをする気だ!」
「あの黒い腐った柱をぶった斬る!」
魔神の剣を刃をきらめかせながら御神体へ向かって大輝は歩き出す。あれがある限り、涼香だけじゃなく、この先の子孫とかも同じ目に合う。
「御神体の中には涼香の母親がいるのだぞ!」
ぴたっと大輝の足が止まり振り向く。
「どういう、ことだ…?」
目を見開き聞く大輝に対して涼香の父親は狂ったように笑いながら言う。
「妻は病気で死んではいない! 御神体に災害や災難から町を守ってもらうには生贄が必要なのだよ…舞姫の骨と肉が溶け込んだ溶鉱炉がな」
「じ、じゃぁ…アンタ。自分の奥さんを…」
「あぁ…神に捧げたよ」
少年のような無邪気な笑みを浮かべる涼香の父親に、大輝は頭の芯に頭の芯が熱くなりギリっと歯を食いしばる。ダン、ダンと足音を鳴らし近づき涼香の父親の首根っこを掴んで腹の底から叫び声をぶつけた。
「ふざけやがって!! 人間の命をっ、なんだと思ってるんだ!!」
屑すぎる。屑すぎて顔面の原型が無くなるくらいボコボコに殴ってやりたい気持ちをなんとか抑える大輝は涼香の父親の首根っこを放し床にたたきつけると、魔神の剣を振りかざし御神体のほうへ歩いていく。
ふと、涼香の目が合い立ち止まる。
「そいつを止めろ! 御神体を壊されたら今までの地位や名誉がきえて無くなり、繁栄は終わってしまう!」
後ろから聞こえる涼香の父親の叫び声を無視して、大輝は涼香に問う。
「涼香は、どうしたい?」
壊そうと思えば御神体は壊せる。しかし、これは赤の他人である俺が決めていいことではない、御神体を守る役目を務めてきた峰崎家の現慰め役である舞姫であり、同時に御神体によって狂った父親の行いで町の住人から数年間八つ当たりの対象となっていたか彼女が最終判断を下すのが正しいと、大輝は思ったからだ。
しかし、涼香の目に迷いはなかった。
「お願い…」
震える声に大輝は力強く頷き全力で床を蹴る。
「ああああ! やめてくれえええ!」
後ろから聞こえる涼香の父親の情けない声を振り切り、大輝は魔神の剣を振りかぶる。
ドパァン!! 縦一直線に振り下された刃は古より峰崎の血筋を苦しめてきた黒く太い柱を一刀両断。同時に凄まじい衝撃波で寺の屋根や外壁は吹き飛び土煙が舞い上がり、瞬く間に吹き荒れる突風は寺の残骸や瓦礫に町役場の関係者や神社の者たちを巻き上げ、天へと昇り大きく成長していく。涼香を抱きかかえ脱した大輝は寺の敷地へ出て木の根元にしがみつき、吹き飛ばされないように堪える。
その時、二人を大きな影が覆った。
「な、なんだ…?」
強風に煽られる中顔を上げると、視界を黒い物体が占領していた。竜巻の中から生えるように出てくる長い生き物、全身を黒い鱗に覆われ蛇のような顔の頭部には二本の角がついており目は蛇のような眼球をしている。黒い大蛇ともとれるその怪物は滑るように空を舞いながら口から紫の息を吐き出す。
それは周りの木々を灰に変色させスライム上に溶かした。
「毒か?! くっそ…」
このままじゃ涼香も巻き添えを食らう。魔神の剣を持った状態なら毒を吸い込もうが剣の治癒能力により体内で自然消化してくれるので大輝は大丈夫なのだが、一般人である涼香が食らうと即死してしまう。
ふと思い出し、大輝は顔を上げる。
空には赤い光の筋を引きずる、アーレス彗星がいた。
「今日だったのか…」
北村の話ではアーレス彗星が空中分裂した破片が峰崎町に落ちるのは、午後19時02分。
「涼香、今何時かわかる?」
「え、っと…」
巫女装束の懐からスマフォを取り出し画面の電源を付ける。
「5時45分やで」
あと一時間17分しかないのか。大輝の背中からブワっと汗が噴き出る。脳裏に過る慰霊碑と、隕石落下により壊滅した笹ヶ峰町の姿に、全身の毛穴が嫌な汗で開いていく。
このままじゃ皆死ぬ。なんとかしないと…ごくりと唾をのむ大輝は涼香の肩に手を置いた。
「いいか涼香、よく聞くんだ。今空にある彗星が、このあと空中分裂して一時間半後に町へ落ちてくる!! 町にいる人達を外へ皆を避難させるんだ!」
「え…え?! そ、え…?!」
突然言われて涼香は混乱の様子を見せる。そりゃそうだ、突然隕石が墜ちてくるなんて突拍子もない話信じろというほうが難しいが、事実であり危機はすぐそこまで迫っている。
「あの怪物は俺が引き付ける!!」
がさごそ、っと繁みから音が聞こえた。誰かいるのか、っと振り向くと、現れたのは金髪の男子生徒といつも一緒に居る女子生徒二人の系3人組だ。
一体どこから湧いて出たんだ、と一瞬考えたが大輝はニヤリと笑う。
「おい、お前らも」
「話は聞かせてもらった…」
「え?」
「町の人たちを外へ避難させればいいんだろ」
金髪の男子生徒は首筋に手を当て照れくさそうな態度でいう。あれ、もしかしてこいつ案外いいやつなのかな…。
「あぁ、できるだけ町から離れさせてほしい!!」
「うちらでなんとかやってみる!」
「ほいな! なんせうちらの母親は、町でも有名な歩く蓄音機やさかいな!」
続いてポニーテールの女子生徒とツインテールの女子生徒が胸に手を当てながら、自慢げに言う。会った時は厭味ったらしい連中だと思ったけど、こう言ってくれるとメチャクチャ頼もしいじゃねぇか…思いがけない味方を手に入れ気持ちが昂る大輝は、拳を突き出す。
そこへ涼香、金髪の男子生徒、続いて女子生徒が拳を合わせてくれる。
「ワイの名前は金剛昭道(こんごうあきみち)」
「うちは寺坂うらら!」
「あちき御門美紀(みかどみき)!」
あ、そういやフルネーム初めてきいたなぁ。と大輝は思う。
「俺は我流大輝!」
「わ、私は峯崎涼香…!」
ちょっと恥ずかしそうに涼香が言う。それを見てぷふっと皆で笑い、ムキーっと涼香が顔を真っ赤にしながら怒る。
「時間は一時間半、隕石が落下するのは19時02分!! それまでになんとか!」
「わかったで!」
「まかしとき!」
「まかせんさい!」
「大輝君、行ってくるで」
そういって4人は神社の階段を駆け足で下って行った。最初の頃はいがみ合っていたのに今じゃ一つのことを協力し合う仲にまでなったかと思うと心が温かくなる、が…今はそんな感傷に浸ってはいられない。
先ほどから魔神の剣の鼓動が体にまで伝わってくる。
「そうか…あれに反応してたんだな」
最初追悼式会場に来たとき魔神の剣が勝手に暴走したのは強力な堕神を感知したからなのだ、そして今はその時と同じ感じに魔神の剣は反応を示す。
時の向こうにいる堕神にまで反応する愛剣の広範囲さには、正直驚かされる。
大輝は魔神の剣を両手で構え大きく深呼吸し、両足に力を込めた。
「いくぞ!!」
腹の底から一声叫び、大輝は蹴って跳躍する。
神社の階段を駆け足で下る4人は、それぞれ担当の地区に誰が行くかを決めた。金髪の男子生徒・金剛昭道(こんごうあきみち)は町の一番奥で彼の住まいである当間地区、ツインテールの女子生徒・寺坂うららは手前の蒔苗地区(まきなちく)、ポニーテールの女子生徒は自分たちの通う学校がある坂上地区、そして涼香は町役場がある桜坂地区となった。階段を下りると涼香は連絡手段として3人と電話番号とラインを交換してから別れ、まずは町役場の方へと向う。防災無線を使い4地区全域に避難指示を出すのだ。とはいえ隕石落下まで一時間と少ししかない状況で、約800人の住人を町の外へ避難させるのは現実的に不可能に近い。町に住む人口の7割以上はお年寄りで、中には体が不自由な人も多数いるので移動させるとなると一時間やそこらで出来るような話ではない。
ふと足音が聞こえ振り向くと、いつのまにか数名のクラスメイト達が後ろを走っていた。
「おれらにできる事あるん?」
「手を貸すで! なんなら高校の連中と中学校の連中を引っ張り出すさかい!」
「え、な、なんでみんな…」
驚きで目を丸める涼香に男子生徒が携帯の画面を見せる。
「これ…以前峯崎をいじめてた時のライングループなんだ。でも、あの事があってから皆で話あって、もうやめにしようってことになってから使わなくなったが連絡網として生きたんや。こんな形だけど…今までイジメごめん!」
男子生徒は走りあがら頭を下げ謝罪の姿勢を見せてくる。あの出来事って、たぶん大輝君がうちの家に来た日に教室で大暴れしたときのことを言っている…と涼香は確信した。確かにアレ以降、それまで続いていたイジメやイタズラの数がピタリと止み一週間くらいたってからクラスメイト達から少しずつ絡んでくるようになったのを覚えてる。少し不気味でしばらく様子見をしていたが口裏を合わせている、ような素振りは見られず本当にあの出来事で全員が会心したのか怪しかったが、今その証拠を確認した涼香は泣きそうになるのを堪え下唇を噛む。
―ありがとう。
「…もういいよ、今は町の人達を外に避難させるのが先! 私もグループにいれて! 」
立ち止まり涼香はクラスメイト達とラインを交換しグループに入れてもらうと、文字を打ち込みグループチャットに指示を打ち込む。そのグループに中に入っている人数は198人と、もう少しで上限を超えそうなほどだった。こんな数から集中砲火受けてたのか…と悍ましさに一瞬指が止まるが、過去のことと割り切って文字を打ち続ける。
「よし、今ラインに書き込んだけど後一時間で彗星が破裂して破片が町に落ちてくる! それまでに町の人たちを外へ避難させなきゃアカン! 隕石落下地点は笹ヶ峰高校!」
「まじで?!」
男子生徒がすっとんきょうな声を上げるが涼香は続ける。
「学校の皆や中学校の人たちの協力が必要や! お年寄りや体の不自由な人を優先的に運び出してほしい! もし家族で車を出せる人は動けない人達を運搬してほしいんや!」
涼香の指示にこわばった表情で頷くクラスメイト達。ラインを見ると涼香の書き込んだ指示に次々とシュポン、シュポンっと了解の返事が寄せられ音が鳴りやまない。
「いくで!」
ドォンっという鈍い轟音が遠くの方から聞こえ立ち止まる。
振り向くと、上の神社から大きな土煙の立ちあがるのが見えた。あの巨大な化け物と大輝の戦闘が繰り広げられているのだろう。
「…負けないで」
今は祈るしかない。彼ならきっと大丈夫だ、強く願いながら涼香は背を向け走り出す。
その時だった。
田んぼの水面が真っ赤に淡く光り、涼香は走ったまま目を凝らす。違う、空が水面を映しているのだ、まるで花火のような赤い筋が夜空を覆うように広がっていく。ま、まさか…。
涼香を空を仰ぎ見る。
「…あ、あぁ…」
ついに
「彗星が…割れた…」
全身に黒い鱗を纏った大蛇の牙は木々を噛み砕き、走る大輝との距離を縮めていく。上に跳躍し下を通る大蛇の背中に魔神の先端を振り下ろす。
ガギィィィッィン!! っという金属の擦れ合う音が響き渡る。刃は突き通らず大蛇の走る勢いに弾き飛ばされる大輝は空中に投げ刺された。
「魔神の剣が刺さらない…!!」
口からは毒を出し全身にも毒を身にまとっている。しかも大輝が想像していたよりも強力な毒だった。先ほど肩に大蛇の体が当たった時凄まじい痛みと共に皮膚が溶け。今は全身に痺れのような症状が出ていて思うように体が動かせない。もし全身に浴びていたら魔神の剣の長回復でも人の姿を保っていられるか怪しいほど、協力で即効性もある毒だった。
それ故迂闊に近づけないだけではなく、全長50メートル以上あるくせに目で追いきれない速さで体当たりしてくるので一瞬でも目を離したらやられてしまう。
「どこか柔い部分があればそこを…」
真下でリボンのように体を撓らせながら旋回してくる大蛇と目が合い、そうだ、っと大輝は同時に閃く。大の字ポーズで待ち構え、向かってくる大蛇の顔面に張り付くと魔神の剣でガラス玉みたいにキレイな目玉を突き刺し、さらに反対側を左手で穿り取る。
両目を遣られ不規則に暴れだす大蛇から振り下ろされる大輝は覚悟を決め、ごくりと息をのみ再び背中に飛び乗る。
じゅーっと靴が解けていくのを無視して自分の攻撃に全神経を傾ける。大輝は魔神の剣を逆手に持ち替え振り下ろす。
不意に凄まじい衝撃が全身を襲う。視線を落とすと、いつの間にか大蛇の全身から紫色の太い三角の長細い針が生成され、大輝の体のいたるところを貫いていた。姿勢は崩れ、体から力が抜けていくのが分かる。毒だ、瞬く間に全身を駆け巡る即効性は視界を奪い次々と引っこ抜くように身体感覚が消失していく。
一瞬生死の境を垣間見たような錯覚に陥り激甚な恐怖に晒された。
しかし、暗闇に落ちる意識の中に、とある少女の屈託のない笑顔が浮かび上がる。
「…―涼香!!」
闇に落ちかけた意識が覚醒し、少女の名を叫ぶ。真上から大蛇の毒を含んだ牙が迫る。落下する大輝は魔神の剣を両手で持ち、待ち構えた。
大蛇が覆いかぶさるように噛みつく。しかし、体の回転の反動で毒の染み込んだ牙を粉砕。大輝はそのまま口の中から体内へ侵入。魔神の剣で内部の肉や臓器を引き裂き50メートル体を一刀両断する。どんなに表面の皮膚が硬くて攻撃が通らなくても、内側はそうとは限らない。
ばっくり二つに割れた大蛇の体から大輝は解放され、宙に投げ出された。黒い塵となって消えていく大蛇の最後を見送る大輝は、安堵のため息交じりに落下地点を確認しようと視線を落とす。
「ん? なんだあれ…」
ふと目に入ってきたのは半壊した神社を取り囲う円状の光だった。それは数秒と立たなうちにきえて無くなる。
「今のは…」
着地する大輝はガクンっと姿勢を崩す。
戦闘が終わったことで体の力が抜け、同時に毒が効いてきたのだ。魔神の剣を持っていれば超回復で数時間後には治癒が終わっているだろうけど、今回の毒の威力は今までより相当キツイものじゃないかと改めて大輝は思う。くわえて大蛇の目にも止まらぬ連続突進からの、体を丸めてのベイゴマのような回転攻撃をもろに受け骨まで浸透するような激痛に数え切れないほど晒され、大輝の手足や顔は打撲で青白く変色して居る。尚且先ほどの毒の針で全身を貫かれ傷口はライターで炙られているような痛みに支配され、立っているのですらやったとの状態だ。
「い…か…な…ゃ…」
絞り出した擦れ声の大輝は魔神の剣を杖に一歩踏み出す。しかし、右足は機能しておらず、半ば引きずりながら歩く。
段々と視界がぼやてけいく中、奥歯を噛みし全身に力を込める。四方八方から刺されたかのようなズキっとする痛みに意識が遠のく。
だが、自分を叱咤するように一声叫ぶと再び歩き出す。足が重い。段々と呼吸も苦しくなってくる。剣を握っている感覚すら不鮮明になってきた。電源を落とすように、少しずつ体の機能が終わっていく。でも、行かなきゃ―…体がボロボロになっても、助けにいかなきゃいけない…。俺の中にある本能がそう強く言い、駆り立てるのだ。こんなところで時間を食っている暇はない、と。
ブシュっ、噴き出す血が石畳に落ちる。額から流れ出る血で顔はほとんど真っ赤だ。
姿勢はぐらつき、魔神の剣で倒れそうになる体をさ支える。力がうまく入らず、両足がガクガクと震えるだす。口から大量の血を石畳にぶちまける。
「ぐ…ぞ…ぁ…」
視界が反転する。
背中をぶたれるような衝撃があり、意識が、途切れた。
アーレス彗星が地球接近時に分裂し隕石となって地球へ飛来するのは、だれもが予想しない現象だった。衝突地点は笹ヶ峰高等学校で隕石落下により町は吹き飛ぶ。落下直後の衝撃破は一瞬ですべてを塵と変えアスファルトや粉々に巻き上がり全てのものが跡形もなく消し去っていく。数秒後に発生した第二波の衝撃波は田畑を吹き飛ばし何キロか先の建物を粉砕し、山を削り緑溢れる田舎の景色は瞬く間に見るも無残なクレーターへと姿を変えていた。
2014年4月30日午後19時02分、
京都府山岳地帯に位置する笹ヶ峰町は、この日、壊滅した。
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