第2話 少女
身体から何かがごっそり抜け出す様な感触を感じて少年は一瞬よろめいた。そして顔を上げると、目の前に年頃が同じぐらいの少女が立っていた。不思議な事にその少女は身長も同じくらいで顔もせいぜい輪郭と髪型が違うぐらいでまるで自分が女に生まれたら多分こんな感じみたいな外見だった。
「まさかこんなに早く感ずかれるとはねぇ、まあ今日の夜には姿見せるつもりだったんだけどね。」
「今日の朝からいただろう。人の脳内でギャーギャー騒いで何がしたいんだ。」
「ありゃ、ちょっとテンション上がりすぎちゃったかなーハハハ」
少女はかなり軽い口調で話している、性格から言ったら完全に少年とは真逆だ。
「まあ、あなたは1つ誤算をしてるんだけどね。」
「それはどういう意味だ。」
「そもそも私はあなたが生まれた時から中にいた、正確に言えば胎内から出てくる10日前にはもういたんだよね。それと...」
「で、結局お前は一体何がしたいんだ。」
少年が話をキレ気味で遮った。少女は予想以上の気迫にたじろぐ。
「あーっと、今日はソレについて話に出てきたんですよ。実はもうすぐ期限が切れるんですよ。」
「つまりどういうことだ。」
「実は私達は悪魔として活動しているんです。ああ怖がらなくても大丈夫です。要するに私があなたの使い魔でいられる時間があと少しなんですよ。」
「は?」
少女の突然の意味不明な告白に少年は頭の中が真っ白になった様に感じた。
「あぁぁぁちょっと落ち着いて下さい。」
「ダイジョウブオチツイテイルカラアハハハハ」
「いいから落ち着いて下さい。私達悪魔は人が思っている存在ではありません。実は色んな宗教に出ている神という存在は私達で、悪魔は名目上なんです。って聞いてますか?」
「テストに出ないよね。」
「出ません。悪魔ってのはウチのボスが勝手に名乗っているだけで、実際私達は神、天使、悪魔の全てです。」
「ああ分かったからその期限ってのはいつ切れるんだ。そもそもお前ら何かしたか?」
「やっぱり自覚はないんですね。私がいたからあなたは今生きてるんですよ。」
「というと?」
「親から聞いてますよね、流産しそうになったって。あれをどうにかしたのは私です。悪魔は人間を調律しないといけないんですが、直接干渉すると色々と厄介で現人神だの言われてややこしい事になるんです。そこで私達は生まれる前の子供に約0.01%の確率で憑依するのです。生まれて来る子供はどれも後に世間から<天才>と呼ばれます。そして<天才>を介して人間社会を操っているのです。実際私達がその人の手助けをしているので超人的な身体能力、発想が生まれるんです。私もその役目を請け負ってあなたに憑いたんですが、まさか流産しそうになるとは思いませんでした。私はここで死なれると、上に役立たずと見なされてリストラされ、路頭に迷う事になるので頑張って生命力を維持していたのです。また、あなたは今居眠りしながら学年1位をかっさらえる学力があるでしょ?あれも私があなたの脳の1分として働いていたからです。そして16年目の来年期限が切れるので目の前に顕現した訳です。」
「なるほどね、ところで期限が切れたらどうなるんだ。」
すると少女の目つきが変わった。
「そりゃああなた、もう完全に私に依存してるじゃないですかぁ〜。つまりもうあなたは私無しでは生きていけないでしょう。」
満面のドヤ顔で少女が呟いた。腹立つ。
「この流れだと対価は勿論あるんだろう。」
「流石勘が鋭い。」
少女がポーズをとりながら言う。じれったい。
「対価はあなたの寿命です。」
何故か少女に集中線がつく。何の作用かは知らないがうざい。
「ありがちですね。」
何言ってんだこいつと言いたそうな目で少年がサラッと流す。
「あっ、ほら天才は早く亡くなるって言うじゃないですか。」
一瞬にして場が冷める。10月の風が冷たい。
「ところで何故期限は16年なんだ?」
「そっそれは..」
少女の顔が何故か赤くなる。
「ボスが[4ってかっこよくね?]とか言ったんですが、4歳だと思考がはっきりしていないので、やむなく4の2乗16にしたんです。」
少女が小さい声で恥ずかしそうに言った。
(ボスに影響されたなこりゃ。そもそもあれを集中線まで付けて言うのになんでこっちはダメなんだろう。)
「とっ、とにかく継続の是非を問います。ハッキリしてくださいっ。」
「そうだなー。」
\キーンコーンカーンコーン/
昼休みが終わった。
「悪い、続きは後にしてくれ、遅れる。」
「あっ、ちょ、」
少年は急いで教室に戻っていく。
「全くもう。」
少女は姿を隠して少年の後を追った。
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