―足―

 延々と緑が広がる高原に、そのヒツジたちは暮らしていました。

 ある日、ヒツジたちは高原を一望できるほどの高い崖の上で、のんびり草を食べていました。

 すると、一頭のヒツジの鼻先に一粒の雫が落ちてきて、ヒツジは何かと思い空を見上げました。

 空は青く、そこにはもこもことしたヒツジのような白い雲が広がっています。

 それを見てヒツジは、空にも自分の仲間がいるのだと思い、

「あそこにいるのもヒツジで……、今、ここにいる僕もヒツジで……。ん? そうか、今ここにいるのは僕なんだ」

 と、なんとなく思いました。

 そんなことを思いながらしばらく空を見上げていると、ぽつりぽつりと雨が降ってきました。

 仲間と一緒に雨宿りできる場所に行こうと、ヒツジは周囲を見回しました。

 しかし、そばには誰もいません。

 いつの間にか自分だけになっていたことに気がついたヒツジは、崖の反対側にある大きな木の下に雨宿りをしている仲間たちを見つけ、急いでそこへ駆けていきました。

 ところが、木の下へやって来たヒツジを見るなり、仲間たちは怯えるように木の後ろへと隠れてしまいます。

 いくらヒツジが近づこうとしても、仲間たちは木を挟んで逃げるばかりで群れに入れてはくれませんでした。

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