第11話 静寂の中
「はぁ……はぁ……」
『ジャック、後方より飛翔体が接近。数2』
かつての教官を手にかけて、呆然自失となった一瞬を狙って放たれた必中の矢。
しかし、管制心理の警告によって気持ちを切り替えたジャックは、パンドラをすぐさま木陰へと滑り込ませた。
直後、ボークのグラディエーターに2本の矢が深々と突きたった。
「相変わらず一撃必中だな……」
軌道から察するに、腰部と腹部を狙っていたのだろう。
「パンドラ、こちらの装備は?」
『膝と肘に装着されたブレードと、腰部の剣が2つです』
改めて自分が置かれている状況を確認すると、絶望的な気分になってくる。遠距離から攻撃を仕掛けてくる相手に、剣だけでどうすれば勝てるというのか。
近くに風切り音とともに深く突き刺さった矢が、ジャックの背筋を冷やす。
「矢が切れるのを待っておくのが現実的なんだろうが……」
当然、その程度の浅知恵はエルトも考えているはずだ。孤軍奮闘しなければならないこちらと違って、エルトは補給が問題なく行える。それどころか、増援を呼ぶ事も可能だろう。今回2騎のみが追撃に向かわされたのは、事態を大がかりなものにしたくないという理由だろう。しかし、その懸念がいつまでエルトの上司たちの中で効果を発揮し続けるかはわからない。エースやプロパガンダなど、やりようによってはいくらでも作り出せるのだから。
「そもそも、相手の姿が捉えられていないのだから、攻撃も何も無いんだがな」
『おそらく、敵騎の装置によってこちらのスキャンニングが妨害されていると推測します』
「やはりそうか。となると、頼れるのは己の目だけか……エルトとの勝負では分が悪すぎる」
ジャックは目を皿のようにしてモニターを凝視する。
天に昇った太陽からの光が、リッターの全長を超える高さの樹木によってさえぎられ、木漏れ日の光がカーテンのように森林を照らし出す。
風に揺れる葉の動きによって絶えず表情を変えるベールの向こう――そこに、最大の脅威が潜んでいるのだ。
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