第93話 帰るであるぞー!!

あけましておめでとうございます!今年もネコは異世界で闊歩するをよろしくお願いします!

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 ゴクンと音を立て、我輩はシロー肉塊の最後の一片である耳を飲み下した。

 もちろん奴が付けていた別の魔物の四肢も我輩の元尻尾も食らいつくしたである。

 我輩初めての食人。やはり動物であり魔物になった我輩には恐らく人間ではタブーなことに忌避感を覚えることなく実行できた。


 さて、問題の味であるが。

 美味かった。口元についた血ですら、すぐに舐めとってしまいたいほどにどうしようもなく美味いと感じてしまったのである。

 同時に我輩は、嫌な予感もひしひしと感じていた。この味は狂わせる味だ。この味を求めすぎると我輩はそこらにいる魔物と同等になってしまう。

 ネコという存在が掻き消え、人肉を求む、けだものに成り下がってしまうほどの……人間でいう麻薬に近いものを食事をしながら感じた。


 好奇心に任せて食らったのは間違いであっただろうか。と考えたところで味わって食べてしまったものは仕方がない。受け入れるであるかな。


「けふっ」


 軽くゲップをし、コーリィ達の元へと向かわんと魔法陣に向けて歩き出そうとしたところ、我輩の頭の中にアナウンスが響いた。


『スキル、マルチイーターの効果によりライザの吸収が完了しました。』

『スキル、マルチイーターの効果によりフォルの吸収が完了しました。』

『スキル、マルチイーターの効果によりシロー・コバヤカワの吸収が完了しました。』


 おっと、出来ないかと思っていたが、マルチイーターで魔核を持たない人間でも吸収することもできるのであるな。

 む?尻が……もっと言うと、尻尾の付け根辺りがムズ痒い!あぁ足じゃ届かんである!……あっ尻尾があったである。

 尻尾で尻を掻いていると、何か出っ張るような感触が……?出っ張り始めたそれは次第にどんどんと伸び始め痒みが収まったころには立派な尻尾が生え変わったではないか!

 これは良かった。我輩にとって尻尾は武器であり足であり手でもあるであるからな。あるに越したことはないである!奪われた尻尾を食らったからであろうかな。


『マルチイーターの効果よって吸収された魔力が一定の値に達しましたので、スキルが解放されました。』


 えー3人しか食べてないのにスキルが解放するのであるか……?

 これは人肉だからなのか、この3人の力が解放するのに値する力だったからなのか。ええい、考えるのは性に合わんである。とっととスキル確認するであるか。

 えーっと増えたのは……んむ?伏字のスキルが解放されているであるな。


ユニークスキル

バステト

パッシブスキル 魂の契約を結んだ者を病気・悪霊から保護する。このスキルを保持している者が留まった街の農作物は品質が向上する。

人の姿でこのスキルを意識して使用したとき真価を発揮する。


スキル

憑依

意思を持つ生物に乗り移ることが可能になる。しかし、保有者が完全な悪の存在でないため、憑依するには憑依対象の合意が必要。憑依したものは、されたもののスキル、魔法を違和感なく使用することができる。


 薄々予想はしていたであるが、やはりバステトであったか。

 エジプト神の中でもラー・ホルス・アヌビスにも並ぶ有名どころの神の名前で数々のゲームにも登場している有名神である。

 あの、なんで一介の猫に神様の名前を持ったスキルを得るのであるか……困惑するのであるが。


 魂の契約を結んだ者……?奴隷契約を交わしたコーリィは対象に入るのであろうか。それならば嬉しいのであるが……そして最後の人の姿で発動すると真価とは?

 我輩は人間になる気はさらさらないはずであるが?と思った矢先にこの憑依というスキル。

 何であるか、この取ってつけたようなバステトの真価を発揮させるためについでにつけときましたとでも言いたげなスキルは。……有り難いが。


 この2つのスキルは後々確認するであるかな。

 よし、では今度こそ外に……待て待て。奴らを殺したことによる戦利品忘れてたである。

 ――あれ?おかしいであるな。さっきまでフォルの剣とかライザの杖とかシローのナイフとか落ちてたはずなのであるが。

 

 もしや?マジックボックスに意識を向けて中を見てみるとあるではないか、戦利品。

 拾った覚えはないのであるが……思い当たる節があるとするならば我輩のスキルネコババか。バステト同様パッシブスキルだったのであるかこれ?

 ま、まぁこれで心置きなく外に出れるというものであるな。


 我輩は魔法陣に足を踏み入れ……おお、割と瞬時に外に転移するのであるな。

 目の前に映ったのは、未だ気絶している2人とロッテとポチ、そしてキャットである。


「終わったの?」

「うむ、やり終えた。」


 ロッテは我輩が何をしてきたかは詳しく聞かずただ頷いた。

 おいポチやめるである。嗅ぐな嗅ぐな。


「では、我輩よ、小生は消える。」

「うむ、ご苦労である。」


 我輩たちはキャットが光の粒子となって消えたことを確認すると、コーリィとリンピオを我輩が抱え上げ、急いで森を駆け抜けシャスティへ、更には冒険者ギルドへと向かった。

 鬼気迫る我輩たちの襲来にギルドの面々は驚愕したようであるが、知ったことか。すぐさま職員に気絶した2人を預かってもらった。


 我輩とポチは体力があるから割と平気だが、ロッテはそうはいかない。

 道中、自信にバフをかけていたようだが、魔力と体力を大分使ったのであろう、ギルドにあるソファに突っ伏して苦し気にうーうー唸っている。

 1人と2匹でコーリィたちの治療を待っていると――強烈な姉を持つこの冒険者ギルドのギルド長、キッカがやってきた。


「お疲れ様。あなた達は確かダンジョンに潜ってたはずよね?その様子だとクリアしたの?」


 その言葉に我輩を含む全員は複雑な表情を浮かべた。

 だって……よく考えれば我輩たち、直接クリアしてない。

 うーむ、奴らのこと話しておくであるか。


「クリアはしてないである。」

「あら、そうなの?てっきりあなたたちならクリアできると私の長年の勘が――」

「闇ギルドの者がクリアした。」

「え?なんて?」

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