第92話 見せられないである!

今回つたない文章とはいえ、ショッキングな描写がありますので気を付けてください。


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 突然、コーリィから力が抜けたため我輩もロッテも反応できず地面に臥すのを見届けるしかなかった。

 すぐに意識を切り替えコーリィに走り寄り前足をコーリィの首に当て脈を確認し、生きていることを確認した。……まぁ弱弱しい脈ではあるから決して大丈夫とは言えぬが。


 ――さて、本来であれば最上階、つまりはボス部屋であったこの階層は魔物よりも人間の血が撒き散らされた非常にショッキングな光景が広がっていた。

 生首死体2つに達磨状態でびりびりにしびれている男……三流スプラッター映画のワンシーンであるかな。


 我輩同様コーリィの脈を確認したロッテは安堵のため息をつき、我輩に視線を移した。

 その目からは不安と焦りが見受けられる。無理もないであるか。

 ちなみにポチはリンピオにすり寄っている。守っているつもりなのであろう。


「ネコ……どうする?コーリィもリンピオも目を覚まさないけど……」

「我輩はちょーっとやらねばならぬことがあるからロッテ達は帰還して待っていてほしいのである。」


 敢えてやらないことが何なのかは伏せておいた。恐らく我輩がこれからしようとしていることは受け入れられることではないであろう。


「それはいいんだけど、もし待ってる時に襲撃にあったら……相手によるけど抵抗できないわよ。」

「そこは安心してほしいである。"強分身"」


 我輩が唱えると何もない場所からいきなり"我輩"が現れた。

 それも、黒魔猫としての我輩の姿である。

 ロッテはもう1匹の我輩の出現に目を見開き交互に視線を移し、ポチはスッと立ち上がるとぐるぐると強分身我輩の周りをぐるぐる回り始めた。観察……?


「さて、分身我輩よ。喋れるであるか?」

「問題ないである。」


 ふむふむ、言語による意思の疎通も可能であるか。分かりやすく言うとあの我が友の好きな忍者漫画の影分身みたいであるな。

 んーしかしそっくりであるよな。元々漆黒魔猫になって大幅に変わったのは尻尾と目くらいであるか。

 これでは間違えられる可能性もある。


「よし、分身我輩。お前は一人称を『小生』に変えるである。」

「……理由は分からぬが分かった。小生は小生である。」


 強さが前の我輩並みであれば、小生も中々に戦えるはずであるし、シャスティから森のダンジョンの入り口までの道中高ランクの魔物が現れたことはなかった。

 コーリィ達の護衛を命令すると小生は二つ返事で了承した。

 まぁ、分身が本体の命令を断るわけはないのであるがな。


「そうと決まればさっさと行くである。本体もそう望んでいるであるからな。」

「う、うん……?あの、分身のネコ。私はあなたを何て呼べば……?」

「ふむ。……本体。」


 えー何であるかその目……名前欲しいのか小生。

 というか分身なのであるよなお前。まさか強分身使うたびに小生が出てくるのであるか?……仕方ない。


「キャットと名乗ればいいである。」

「ふむ、分かったである。――では行くであるぞ、ロッテ。」


 小生……いや、キャットは2本の尻尾でコーリィとリンピオを巻き抱えると、ロッテとポチを伴って魔法陣の中に入った。

 魔法陣は問題なく機能したようで光が3人と2匹を包むと全員の姿をが一瞬にしてかき消した。


 見届けた我輩はこれからやる、あまり人には見せられないことを実行するために2つの生首と2つの首から下を持ち上げ、未だ痺れながら生き永らえているシローのもとへと向かった。


「よう。」

「あぎがばばばばばばば!!!!!!」


 あー、喋れられないであるよなーそりゃ。

 仕方ないので、帯電したグラディウスサーベルタイガーの牙を抜いてやると支えを失ったシローは当たり前のことに地面にキスをした。

 このままでは話せないであろうと思い、親切にも仰向けに転がしてやると、シローは今にもかみ殺してやらんとでも言いたげな目で我輩を睨む。


「て、てめぇ!小動物の分際で人間様に立てつきやがって!」

「知らん知らん。我輩はお前が今まで殺してきた小動物とは違うということである受け入れよ。」

「受け入れられるか!くそっ!僕はもっと殺したいんだよ!殺して殺して殺しまくるんだ!」


 最初の余裕がどこへ行ったのか、唾を散らしながら喚き散らすその様は駄々っ子のようであるな。

 大方、前の世界でも相当甘やかされて動物を殺しても咎められなかったのであろう。バレない様に殺していたという人間であればもう少し手ごわかったかもしれぬしな。


 いい加減耳障りであるし、始めるとするであるか。

 我輩は2つの生首を尻尾でポンポンとお手玉をしながら弄びながらシローに問いてみた。


「さて、シロー。貴様はこれからどうなると思うであるか?」

「はぁ!?ど、どうするつもりだよ!」


 その目に恐れを混じらせながら問い返してくるシローに答えとばかりに我輩はスキルを起動させる。そしてそのスキルは問題なく機能し、頭の中でアナウンスが流れた。


『マルチイーターを起動。"食物"と認識しました。』


 ガブリ。

 他に言い表せないほどそのままの音を立て、我輩はいとも容易く、その食べ物を噛み砕き、それをシローの前に置いた。

 我輩の口よりも大きな何かで噛み砕かれ半分以上を失ったフォルの頭部だ。断面からは脳みそも見えているであるな。


「ひぁっ」


 何とも間抜けな声を漏らしたシローは自分がこの後どうなるのか理解し始めたのか、北極にでも投げ飛ばされたかのように顔は青褪め、その体は小刻みに震え始める。

 我輩は血が滴る口元を舌で舐めとると己ができる最大限の笑みを浮かべ告げた。


「安心するである。お前は最後……じっくりと味わいながらくらい尽くしてやるである。何せ我輩、魔物であるからな?」


 そう言うと我輩は再びフォルの頭に食いついた。

 あまりの恐怖に何度も気絶するシローに微量の電気を流しては起こし見せつけを繰り返しフォルとライザの全てを食らいつくし、最後の獲物としてシローを食おうと思った時、奴はすでに、死んでいた。



 つまらん。

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