第77話 証明である!

 レイネからバッジを受け取った吾輩たちは、明日からの冒険者業のために王都の冒険者ギルドへと向かったである。

 外観はやはり王都だけあってアステルニのものとは大分豪華に見えるであるな。吾輩としては外観などどうでも良いのであるがな。

 んでもって中に入ると案の定、吾輩は物珍しげな視線で見られるわけで……気にしても仕方ないので無視無視。

 さて、冒険者証明は冒険者登録の受付と一緒の様であるからそちらに向かい――証明を行ったのである。

 難しいことは何もなく、ギルドカードを職員に見せ、どこから来たかなど簡単な質問だけであった。


「はい、これでコーリィ様、ラカロッテ様、リンピオ様の冒険者証明が完了いたしましたので明日より冒険者として活動が出来ます。……が、あのコーリィ様?その肩の魔物は……?」


 あーまぁうん……そうなるであるよな。

 だがこのバッジが目に入らぬのか?レイネ曰く見せれば大丈夫とか言っていたであるが。

 まぁいい。吾輩も自己紹介でもするであるか。


「吾輩は漆黒魔猫のネコである。コーリィのギルドカードを見れば分かると思うが、コーリィの従魔である。」

「しゃ、しゃべっ!?」


 城であれだけ喋ったのだ。もはや隠す必要もあるまいて。

 ただ職員には刺激が強すぎたようであるな……口を開閉させ目をぱちくりさせているである。

 背後からもざわついた雰囲気を感じる。冒険者共であろうなぁー……ジロリと後ろをねめつけると慌ただし気に冒険者たちの視線がそれる。


「おいネコ、喋ってもよかったのかよ?」

「面倒だからよいのである。」

「ネコ様、後ろを黙らせて来ましょうか?」

「ヴォウ?」

「やめんか。」


 ポチの言葉は分からぬが、コーリィと同じことを言っておるのであろう。

 勿論駄目だがな!なぁに敵意振りまこうとしているのであるかコイツ等!ポチもコーリィっぽくなってきたであるなぁ……

 さて、これくらい時間が経てば職員も動揺が治まって……


「え、あ、え、そ、その」


 う、うーむ、治まって無さそうであるな。

 吾輩たちを担当している職員は、コーリィとロッテと同じくらいの大分若そうな職員であるからそもそも珍しい喋る魔物の対応するのは初めてであるか。

 初めての対応と言うのはやはり怖いものであるか。

 はぁ、もうこの職員は駄目そうであるなぁ。


「ギルド長呼んではくれぬか?その方が対応早く済みそうであるから。」

「は、はぃい!?」


 職員は一目散に裏へと引っ込んでいった。


「ギルド長なんていきなり呼んでいいのかしら?トップよトップ。」

「あんなだともっと時間がかかるかもしれぬであるからなぁ。それだと食べ歩きの時間が減る。それはゆゆしき事態である。」


 だからそんな呆れた目を向けないでほしいのだが。

 時間とは有限であるからな。早く終わらせるに越したことは無いのであるぞ。

 少し待っていると、若いギルド職員が1人の女を連れて戻ってきた。

 んー?何かこの女違和感が……?何か初めて見るはずなのに既視感が……


「ようこそ、シャスティの冒険者ギルドへ。私はギルド長のキッカよ。うちの職員が失礼したわね。別室でお話ししましょう。」

「早く終わるのであるか?」

「早く終わらせることの出来そうにない存在のあなたが言うのかしら?」


 だから言っているのであろうが……

 しかし、必要な事であるならばついて行かぬわけにもいかぬであるか。後々の面倒は嫌いであるからな。

 吾輩たち全員は、奥へと通され、バジットの時と同じようにこのキッカの執務室へ通された。


「来てもらってなんだけど、ネコさん。あなたの事はレイネからすでに聞いているわ。そのバッジも着けていることだしね。――まぁ伝達ミスは申し訳なかったけど。」


 ほう、レイネから伝わっているのなら話は早いであるよな。

 っていうか、そこまで分かっているのであれば、そのまま受付で終了で良かったのでは?


「一応あなた達に挨拶しておかなきゃと思ってね。姉がお世話になったから。」

「姉?」


 キッカの姉に当たるような存在に吾輩たち会ったことあるであるか?

 コーリィもリンピオもロッテも、そしてポチも心当たりはなさそうであるな。


「姉とは……誰であるか?」

「あれ?姉さんから護衛の仕事であなた達と会えて楽しかったーって聞いたけど。」

「「「「え゛っ」」」」


 護衛の仕事?女?護衛の仕事という事は騎士3人。だがあの3人のうち女は1人、え?

 あの、奇想天外でこと戦闘になると180度性格が変わるあのよく分からない女……!?

 コーリィさえも驚いている様子で震えた指先をキッカに指し皆を代表して質問した。


「あ、姉ってニーフィさん、なんですか?」

「う、うん。その様子だと姉さんの強烈さを……」

「とくと見たである。」


 キッカは額に手を当て大きくため息をついた。

 なるほど、キッカに感じた違和感は、2人が似ているから既視感を覚えたのであるな。

 聞いたところによると、2人は双子らしいのであるが……見たところキッカはニーフィの様にトンデモな性格はしていない。寧ろ真面目な印象を受ける。

 双子とは似るものだとは思ったが、そうではないのであるな?


「あの姉を見たら、ね?」


 これには全員納得したである。

 だがこれでギルド長の承認も得たことだし、ここでの冒険者証明が完了となった。

 ようやくこれで食べ歩きが出来るである……!!


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