第130話
それから『サブ・ギルドマスター』アルヴィンは、『冒険者ギルドと
地域住民合同訓練』で討伐予定の魔物や魔獣の資料作成や子供部門の
討伐行事の計画に取り掛かり、クロエは、現在狂乱の嵐の
真っ最中にある中央の『冒険者ギルド総本部』向けの書類作製の
準備を始める
ハインツ一行は、二週間の『冒険者ギルドと地域住民合同訓練』前準備として、
『魔境』内に築く野営用の施設設置や必要な道具や武器の手入れなど
細々とした仕事をこなしていく
そのさなか、ハインツとカーリンは少し驚く光景を
眼にすることになった
「俺が知っている『ギルドマスター』という偉いさんは、執務室で
ふんぞり返ってるもんだったが・・・
何でここの『ギルドマスター』は、現場に自ら足を運んで、汗水垂らしながら
働くんだろうねぇ」
カーリンは荷台より五日間分の生活必需品を運ぶ手を止めると、直々に
指導と監督を行い、注意点など細かなところまで指摘し、
叱咤激励をしている『ギルドマスター』エンゲルベルト姿を観て
そう呟く
「現場主義なんだよ」
ハインツはその言葉に対して、説明で聴いていた通り現場で指示を出している
『ギルドマスター』エンゲルベルトの印象を改める
野営用の施設設置が進んでいるのは、標識ある場所から約四時間ほど
北方向に進んだ場所だ
そこは森を切り開き二十平方キロほどの広さで、現在は開拓中のエリアとなる
この場所が、五日間の『冒険者ギルドと地域住民合同訓練』の拠点となる
野営天幕が設置されて、その近くに簡易の炊事所が設置される
訓練――もとい開拓及び間引きにはロージアン領の領民約30名、冒険者ギルド支部からは『ギルドマスター』エンゲルベルトと
『サブ・ギルドマスター』アルヴィン、さらに領主ギルベルト=フォン=バルツァー本人と子息の長男ヴォルフラムが加わる
父親のギルベルトは、歴戦の戦士を思わせるような
厳しい貌で白髪が混じり始めた黒髪を短く刈り揃えた50代半ばの壮年の男性だが、
長男ヴォルフラムは十六歳で金髪で短髪、小麦色の肌をした細身の体格、
背丈は百七十五センチくらいあり知的な雰囲気がある
ギルベルトは普段から口数が少なく、息子に対しても
厳しく接している
この行事は領兵の中でも魔獣や怪物を相手に実戦経験を積んでいる
精鋭が参加する
「これからは、ハインツの兄ちゃん達が加わるから随分楽になりそうだよ」
そう声をかけてきたのは、『冒険者ギルドと地域住民合同訓練』に
参加するちびっこ先生ことベイセルだ
彼も準備段階から加わっていた
「 やはり『ギルドマスター』や『サブ・ギルドマスター』まで
現場に出る事には驚きが隠せないよ」
ハインツはそう言いながら、右手に物資類の種類が記されている
皮紙を持っているベイセルを見つめた。
「最初の頃、俺もハインツの兄ちゃんの様に驚いたさ
大人しくギルドで事務作業でもするだろとは思っていたけど、まさか
現場にまで貌出して来るなんてな。
……でも、あぁ見えてやる時はキッチリとやってくれるぜ」
ベイセルが『ギルドマスター』や『サブ・ギルドマスター』に対しての
評価をハインツに伝えた
「もっと褒めてくれても良いんだよ?」
声が聞こえてきたので、ハインツ達はそちらの方に視線を向けた
そこには『サブ・ギルドマスター』アルヴィンが打棒系武器の
一種である金砕棒を一本担いでいた
「褒めたらすぐに調子に乗るじゃんか・・・
というか、それどうした?
アルヴィンの兄ちゃんがいつも使っている武器ではないだろう?」
ベイセルが尋ねた
カーリンとハインツは、鉄で出来た1.84メートルほどの金砕棒を
飄々と担いでいるアルヴィンの姿をみて、ぎょっとした
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