第17話
「 『ギルドマスター』は訓練教官からの話として、ローザがいずれかの『クラン』に加入する事を望めば、その先には次期『クランマスター』の座が用意される事は間違いないって話だ」
ハインツは葡萄酒の入ったグラスを眺めながら話す
その瞳からは、先程までの冗談めいた雰囲気はなく、まるで何かを
確信しているような真剣な眼差しだ
「実力があっても有名『クラン』は、入団は厳しくまして推薦状なんて・・・
まさか・・・ いや、有り得ない・・・ もしそれが本当なら・・・
あいつは一体何なんだ? 」
カーリンはそう言いつつ頭を捻りながら考えているようだ
脳内で虎の着ぐるみのローザが『クラン』の次期『クランマスター』として
降臨してしまっている
カーリンはローザの人となりを知ったためか尚更だ
虎の着ぐるみが颯爽と現れ、凛とした姿に『クラン』メンバーの猛者や英雄達が熱狂的に湧き立つ
それはとてもシュールな光景に違いない
熟練者のカーリンは、それがいかに非現実的な絵面か容易に
想像がつく
たが、ハインツは冒険者になってまだ浅いため認識はかなり甘く、『有名『クラン』に入団できるのかぐらいの軽い考えだ
しかもローザは、まだ冒険者登録したはがりの新人冒険者だ
それもかなりの才能を秘めた駆け出し・・・
これからまだまだ実戦経験を積んで成長するとなれば、ローザは
間違いなく一流の冒険者になるだろう
恐らく今後、有名処『クラン』や冒険者パーティー、何処かの
国からのスカウト合戦や引き抜き合戦が待っているはずだ
おそらく今回の事で、争奪戦はすぐにでも始まりを告げて更に加速する
また国によっては勲章授与もあるかもしれない
そうなれば、国の英雄・・・いや、それ以上の存在にもなれうる存在となる
カーリンは、今後の様子に思わずため息をついた
「まだあるぞ
次はカルローラとアトリーサだ」
ハインツの口から出てきた名前を聞いて、カーリンは眉間にシワを
寄せながら反応する
「・・・」
そして、今までにないほど真剣な表情で続きを促すように、ハインツの
顔を見つめる
ハインツはグラスの中の葡萄酒を一気に飲み干すと 一呼吸置き、少し
間をおいて口を開く
「あの2人には担当した訓練教官より、『ヘブリマス』 『ドンディッチ』
『ウォルトン』の『冒険者ギルド支部専属冒険者』としての推薦状を既に用意されてるらしい」
ハインツは淡々と説明した
カーリンにとってその報告は、頭の中で理解できないほど衝撃的だった
自分が今聞いた事がにわかに信じられなかった
「あの2人の実力を眼の前で見れば理解できるが、よりにも武闘派揃いで
有名『冒険者ギルド』への推薦状かよ・・・」
カーリンは頭を抱え込んだ
それもそのはず、『カンペール』 『クレモンテ』 『ベベルド』の国が三大列強国ならば、『ヘブリマス』 『ドンディッチ』 『ウォルトン』
の各都市にある『冒険者ギルド』支部は、最も武力に重きを置く
『冒険者ギルド』が置かれている
そして、各『ギルドマスター』も現場からの叩き上げで『二つ名』持ちの猛者だ
また、それぞれ三つの『冒険者ギルド』支部専属冒険者はただの
野蛮で下品な冒険者とは違う
そこに集い活動拠点としている冒険者達の半分は、元は貴族の子息・
令嬢で幼い頃からの英才教育に加えた厳しい
鍛錬によって培われた実力を持つ者達ばかりだ
だからと言って全員が傲慢な訳ではなく、ただ自分を高めたいと思い、
実力のある者や尊敬する者から学び、吸収したいと
考えて集まっている高潔な精神で常に向上心を持ち続けている冒険者達だ
そして残り半分は、各『冒険者ギルド』支部で実績を積み上げ、訓練教官や支部の『ギルドマスター』の推薦状を貰った猛者揃いの冒険者達
優秀なこともあり依頼や魔物討伐による功績で『二つ名』をもつ上級冒険者もいる
当然、支部所属となる事で多くの特権を得えれているが、そこであぐらをかくような無能な輩や貴族意識や種族差別者は推薦状に容赦なく弾かれており、
日々切望し、努力する者のみが生き残る狭き門となっている
『ヘブリマス』 『ドンディッチ』 『ウォルトン』『冒険者ギルド』支部専属冒険者達は、各支部の迷宮からの『氾濫』や魔境からの
『スタンピード』などの有事の際には、『冒険者ギルド』総本部と連携を取り
速やかに行動し、現場へと送り込まれる
時には、他の冒険者パーティーの救援要請や調査などの依頼を受ける
場合や指名もされやすい
現場では、その地の最強とされる冒険者パーティーと合同で行う事も稀ではない
その際には同行する冒険者もいれば、現地で臨時的に仲間となる場合もある
円滑なコミュニケーションを図るためには、そこであぐらをかくような
無能な輩や貴族意識や種族差別者は容赦なく弾かれている
もし支部専属冒険者にいれば、即座に『冒険者ギルド』から
登録を剥奪され永久追放される
それほどまで冒険者にとって、本部専属冒険者という肩書きは特別なものなのだ
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