第16話


「まだある」

 ハインツは静かに話し続ける

 カーリンはハインツの話に耳を傾けながらも、自分の中で何か

 がざわめくのを感じていた

「全部言え」

 カーリンは真剣な表情になり耳を傾ける

 それは、これから聞く内容の予想がついている様な様子だ


「次にローザだ

 彼女を担当した『冒険者ギルド』訓練教官が、これまた推薦状を書いている

 俺は詳しい事はわからないが、『カンペール』 『クレモンテ』 『ベベルド』を拠点にしている有名な『クラン』の団長に 推薦状を出しているらしい

 カーリンは詳しくないか?」

 ハインツが尋ねる



「・・・『カンペール』の『天廻の宝玉』

 ・・・『クレモンテ』の『蒼白き冥龍』

 ・・・『ベベルド』の『蒼角の陽炎王』」

 カーリンが答える

 どうやら知っていたようだが、その表情は険しい

 その三か国はそれぞれ各大陸において、政治的・経済的・外交的・軍事的・文化的な力を持ち、他の国々の行動に影響力を及ぼす

 最も強い列強として知られている

 また三大列強の『冒険者ギルド』支部はそれぞれの国でも

 有名で強い権力を持っている

 しかし、三大列強の全てに共通して言える事があった

 それはどの国も、自分の国の軍事力を誇示するために優秀な人材の

 確保を最優先としているという事だ

 これはどの国に限った事ではない

 そのため、他国の優秀な人材を引き抜く事に躊躇がない

 そんな事情もあり、三大列強内の『冒険者ギルド』の

『ギルドマスター』に気に入られた冒険者は、他の支部から勧誘されることも多い

 また、引き抜こうとする その人物と懇意になりたいが為に自国の優秀な人材を簡単に手放す場合もある

 しかし、反面引き抜けなければ自国の権力者達に疎まれる危険度も伴う

 ちなみに、三大列強の実力は拮抗しており常に戦争をすれば勝敗が

 決まるとは限らない

 特に大国同士の戦争になれば、小国が巻き込まれ甚大な被害が確実に出るため、

 それを避けるために大国同士で同盟を結んだりもしている



 事情もあるがゆえに、三大列強内でも実力のある冒険者同士が徒党を

 組み組織を結成している

 その組織が『クラン』だ

『クラン』は時に一国の軍隊よりも強力でもあり、『冒険者ギルド』や国からも

 一目置かれている

 また有名『クラン』には、各大陸で名を挙げた猛者や英雄級の実力者が

 在籍しており、中には大貴族の子息なども含まれている

 有名処ともなれば入団が厳しく制限されおり、入団するだけで

 箔がつき見返りも多く得られるが、その分責任も大きく命の危険も高い

 多くの冒険者に取っては、猛者や英雄級の実力者が集まる有名

『クラン』のメンバーシップが憧れの対象だ

 その様な理由からも、駆け出しの冒険者達は自分の力量にあった

ランクのクエストをこなしながら、知名度を上げいずれは上級冒険者になれるよう

 日々鍛錬と実績を重ねる

 もちろんハインツとカーリンも例外ではなく、この2人も

上級冒険者になるために努力を重ねている

 ハインツは『クラン』に関してはそれほど詳しくはないが、カーリンの様子を見てこれは思っていたよりも大変な事になるかもしれないと

 思いつつも、さらに続ける

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