第5話 初めての冒険

「わあぁー!寝坊したっ!!」

どたばたと慌てて身支度をする少女。スルスルとおさげを作る。

二つの三つ編みの先には、赤いシュシュが付けられた。

「海岸へいそげっ!」

紅潮した頬で、家を飛び出していった少女。

少女にとって、初めての遅刻。そしてこのとき、確かに少女の運命には、

ひとつの結末が約束されたのだった。


全力で走る足音に気付いた少年は、恨みがましく言った。

「いつも、『遅刻するなー』ってうるさいのは、どこの誰だったっけ?」

「むっ。……ロン、遅れてごめんなさい」

なんとか冷静さを欠かなかった少女。

謝ることに誠意を欠きたくなかったらしい。

「なんだ、ナリア?意外としおらしいな?まあ、いいや。許す」

「…いつもは遅れてくるロンに言われたくはないわね…」

小声で文句を呟く少女ナリア

「ああ、ハイハイ」

やり取りに疲れた少年は、テキトーに話を終わらせる。


「じゃ、食料はあるな?」

ロンは側にあったリュックサックを背負う。

「もちろんよ」

ナリアは背負っているリュックサックを示して答えた。

「行こう、神の塔ウィンドロスへ」

軽い足取りの少年の背中を見て、ナリアは、なあんだ、

あんたの方が楽しみだったのね、私が提案したこと

だったのだけれど、と思ったのだった。

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