第593話 込み入った事情

 ツキのない日というものはある。

 仕事で日帰り出張、高速のパーキングでトイレを…

「空いてねぇ…」

 和式は空いてたが、和式は嫌なのだ。

 まぁ、降りてからコンビニでいいかとスルーした。

 コレがいけなかった。


 コンビニに到着すると、いやに混んでいる。

 嫌な予感はした。

 まっすぐにトイレに向かうと…すでに1人待っている。

(こらえろ俺…全集中‼ 尻の呼吸である)


 なかなか出てこない…

 女性用は空いている…

(使ったらダメなのだろうか?)

 世の中は女性社会だと僕は思っている。

 女性専用があるなら男性専用があってもいいじゃないか‼


 待っている間に女性がトイレに入っていく…

(なんか腹立つ‼)

「にしても…長くないか?」


 やっと出てきたと思ったら足の悪い障碍者である。

 障碍者用トイレは無いのだ。

 足が悪いから時間が掛かったのだろう、怒れない…コレは怒れない。


 次の人が入る…

(頼む…急げよ、俺の全集中は、もう限界だ)


 ガラッ…コンッ‼

 僕の肘に電機が走った‼

 店員が清掃に入ってきたのだ。

 そして、僕の肘に頭部をぶつけたのだ。

 僕の肘は、腱鞘炎なんだかリウマチなんだかで、通常でも軽く痺れている。

 コンッ‼の衝撃に弱いのだ。

「あっ…すいません」

 背の低いババアを思わず睨んだ。

(俺は長男だから耐えられたけど…次男だったら耐えられなかった‼)

 全集中が途切れて、尻からヒノカミ神楽が飛び出すところだった。

 修羅の形相だったと思う。

「…すいません…」

 怯えるように静かに去っていった店員。


 ようやく僕の番である。

 ギリギリ間に合ったのだが…危なかった。

 全集中が途切れた一瞬、もうダメかと思った。


 用を足し、手を洗う…

 あの女の人…まだ出てない。

 なぜ女性はトイレが長いのだろう?

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