大型連休〜ゲーム好きカップルの場合〜
「確認です、明日からはお休みですが予定は?」
真剣な面持ちで自らの彼氏。
「特に大きな予定もなく家族の了承も得てます」
その答えを聞いた瞬間嬉しそうな顔をする茜。
「やったー!久々のゲーム三昧だ!!」
その言葉を聞いた瞬間祐樹は少し罪悪感を感じる。
(なぜ、ここまで…)
事の始まりは一年ほど前。
茜と対戦ゲームの○よぷ○をした事である。
最初は弱かった茜がたった一週間で歯が立たなくなるくらい強くなったのだ。
それをキッカケに茜はゲームに随分とハマっていき今ではこうして休みになるとゲーム三昧…。
茜と今こうして付き合えるようになったのだから悪いことではないのだが…なんだかダメ人間にしているような気がして茜の両親に申し訳ない。
「今日はどうするの?泊まっていくの?」
「いや、今日は帰る。じゃないとゲーム機がない」
まだ高校生の自分が茜の家に居候するわけにはいかない。
そのため茜の家にある祐樹の私物はほとんどないのだ。着替えなどお泊りグッズはある程度常備されているが。
「それなら晩御飯だけでも食べていく?」
「貰えるのなら」
「もちろんあげますよ〜」
そう言って台所の方へ消えていく。
流石に何もせず待っているのは申し訳なくて手伝いに行く。
料理はほとんどしたことないので茜の邪魔にならないようにお皿を出すくらいしかしないのだが。
30分ほどで晩御飯が出来上がる。
「出来たよ〜。祐樹、お茶は?」
「冷たいのでいいよ」
「はい、これ置いておいて」
手渡されたお皿をテーブルの上に置き自分の定位置に座る。
すると冷たいお茶と温かいお茶を持った茜も座る。
「はい、お茶ね。それじゃ、いただきます」
「いただきます」
–夕食後
「それじゃ、今日はそろそろ帰る」
そう言って立ち上がる。
「気をつけて帰るんだよ?暗いんだから」
「そんな子供じゃないから大丈夫だって。それよりも明日何時に来ればいい?」
「明日は迎えに行く!買い出しもあるから」
そう言って車の鍵をちらつかせる。
つまり買い出し中の荷物持ちもさせるのだろう。
まぁ、好きな人と一緒に居られるのだ。それくらいは苦にならない。
「わかった。それならいつ頃来る?」
「んー、朝10時くらい?多少前後するかもだけど」
「わかった。それくらいには荷物もまとめておく」
「あ、あと今回からはモニターは持ってこなくていいよ!」
「へ?」
モニターがないとゲームが出来ないのでは…と思っていると部屋の隅の方から何やら薄い長方形の箱を出してくる。
「じゃーん!これ、祐樹専用のモニター!あまり高くていいものじゃないけど…」
「いやいや、いいものじゃないって言ってもモニターって一万くらいはするものじゃ…」
簡単に買え…いや大人なら簡単に買えるものなのか!?
なんて思っていると茜が説明をする。
「実はこれ、会社の人からの貰い物なの。なんか当たったらしいんだけど使い道無いからって」
さらに詳しく説明される。要約すると…
たまたま応募したら当たったのだが目当てのものでは無かった。しかも結構歳を重ねている方でよくわからないからと会社の人たちに聞いて回った結果茜に渡すのが一番いいということになった。
という事らしい。
何が起こるかわからないとはこのことか…
「モニターのお礼、なにかしないとな」
明日、買い出しの時にお礼用のお菓子も買おう。
「それじゃ、おやすみ。また明日」
「夜更かしし過ぎて寝坊しちゃダメだからね?」
「それは茜の方じゃないか?」
休みの前日にはよく夜更かしすると言っていたから。
「失礼な!明日からが本番なんだよ?そんなことするわけないじゃない!」
「ソウデスカ〜(棒読み)」
絶対夜更かしするぞ。この彼女は…
「じゃ、気をつけて帰るわ」
「また明日ね!」
そう言って玄関を出て帰路につく。
翌朝、時間通りに迎えにきた茜。
連休中に必要になりそうなものを買い3時前に茜の家に戻る。
「この袋の中身は…冷蔵庫行きだし茜に任せる」
「祐樹、買ってきたもの半分以上は冷蔵庫行き。つまりわたしのとこに来るんだけど」
食材ばかり買っているのだから当然なのだが。
中には生活用品もあるので全てではない。洗剤などの生活用品は祐樹が全て片付けていく。
「はぁ〜、早く祐樹とゲームがしたーい…」
ブツブツ言いながら食材を片付けていく。
「片付けないと食材が腐るでしょうが」
一足先に片付けを終えた祐樹が台所にやってくる。
「こっちは終わったから先にゲーム設置してくるよ」
「っ!!私もダラダラしてる場合じゃない!!」
祐樹の一言でスイッチが入ったのか先ほどまでのダラダラしていた動きから一転してテキパキと片付けていく。
祐樹の方も手馴れた感じで配線を繋いでいく。
「終わったー!さぁ、祐樹!!クエスト行くよ!!」
「とりあえずなに行くの?」
「限定クエストの装備取りに行くよ!こういった時にしか取れないんだから!」
そう言って祐樹の隣に座り茜専用のモニターに向かい合いコントローラーを握る。
〜2時間後〜
「おかしい、欲しい装備だけが出てこないの…」
そう言って燃え尽きている茜。
画面には茜が使わない装備の最高レアが写っていた。
「これが物欲センサー…」
あまりによくある光景に思わず呟く。
一方、祐樹の方は順調にドロップしていた。
「これだけやって一個って…どういうことよ…」
疲れて虚ろな目で装備を確認している茜。
流石にこのまま続けてはダメだと思い立ち上がる祐樹。
「茜、コーヒー淹れるよ?ちょっと休憩しよ」
「ブラック」
「はーい」
料理はしないがコーヒーはよく淹れるのでどこになにがあるか把握している。
手際よく準備をしてコーヒーを淹れる。
先ほど買ってきたチョコ菓子も準備し茜の元に戻る。
「はい、コーヒーとお菓子」
「ありがと。はぁ〜、疲れたぁ〜」
「とりあえず30分くらい休憩しよう。出ないときはとことん出ないんだし」
こういうのは波がある(はず)。
出るときはポンポンと出るのだから。
それに連休は始まったばかり。時間はある。
そうして30分ゆっくりしてふたたびゲームを再開。
休憩を挟んだのがよかったのか装備のドロップが良くなり1時間もすると大体の装備が集まった。
「はぁ〜今日はこの辺で終わりかな。祐樹、ご飯何食べたい?」
「んー、刺身買ってたよね?それ食べたい」
そう言って祐樹も立ち上がる。
もちろん準備を手伝うためだ。
いつものように役割を分担して夕食の準備を進める。
「「いただきます」」
二人揃って食べ始める。
「次、何しようか?」
はやくも次の事を考える茜。
「次はお風呂」
「もちろんそうだけどその後!」
「装備、ほとんど揃ったんだし別ゲーでもいいんじゃない?」
というか流石に少し飽きたと言うのが本音だ。
「それならそれしよ!」
そう言って茜が出してきたゲームは有名な[スマッシュ兄弟]。
「タイマン?」
「最初はね、何試合かしたら二人でネットに潜ろ?」
「やる!」
茜に確実に勝てる数少ないゲームの一つ。
いつもぷよぷよでボコボコにされるのでここは容赦なく勝たせてもらう!!
そう心に決め夕食を食べ続ける。
「ご馳走さま〜、先お風呂入ってくるね〜」
そう言って着替えを準備して脱衣所に向かう茜。
その後ろ姿を見てふと呟く。
「…あれ?これって同棲なんじゃ」
それを意識してから少し顔が熱くなる。
これがあと一週間以上…
そう考えるとますます顔が熱くなる祐樹なのだった。
恋愛妄想劇場 猫乃ティる @Tail-Seven
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。恋愛妄想劇場の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます