こたつの魔力
夏が終わり木々が紅く色づき始めてから夜の冷え込みがより強くなってきた。
そんなある日、同棲している彼女。
「ねぇ、コタツは出さないの?」
「コタツ?出すわけないだろ。お前去年コタツから出ようとしなかったからな」
「だって〜ぬくぬくで気持ちいいんだもん」
「そしてコタツで寝て痛い目見たのは誰だっけ」
「うぐっ。そ、それは…その…」
美彩は去年、コタツで寝て見事に風邪を引いたのだ。それも三回も。
「でもコタツで寝てたのは私だけじゃないじゃん!
「風邪引いてないし」
ふくれっ面になる美彩。
「というかコタツ出すにしてもそろそろあのボロボロコタツ布団じゃなぁ」
別に使う分には問題はないのだがやはり見た目が気になる。
綺麗な部屋なのでより目立つのだ。
「それなら今度の休みに買いに行こうよ!デート!!買い物デート」
「いや、出すなんて一言も…」
「よーし!今週はコタツのために頑張っちゃうぞ」
完全に話を聞いていない。
(仕方ない、コタツで寝ないように注意しておけば大丈夫だろう)
結局、今年もコタツを出すことを決めた。
「それでどこに買いに行くの?」
「まぁ、家具インテリア雑貨のお店ならオシャレなのも置いてあるだろうしそこだろ」
久々のデートにちょっとウキウキする。
それはそうか。どれだけ長く付き合っていても好きな人との外出なんて楽しいものだ。
「さて、今日は俺が運転だな。シートベルトはしたか?」
「もちろんしたよ〜」
美彩がシートベルトを着用した事を確認しエンジンをかけサイドブレーキを解除しギアをドライブまで入れる。
周りの安全を確認し出発。
「そういえばさ、涼太って必ずシートベルト確認するよね」
「あー、幼い頃から両親が確認してたからな」
必ず出発前に確認をして最後に「「レッツゴー」」なんて揃って言っていたのだ。
流石に大人二人なので揃って言う事は無いがシートベルトの確認はする。
その後も何気ない会話をしながら車を走らせること30分。
目的のお店に到着する。
「着いた〜!!さぁ。コタツ買うぞ」
「コタツは買わねえからな?買うのはコタツ布団だけだぞ?」
早めに言っておかないと美彩なら本当にコタツを買いかねない…。
手を繋いで二人揃って店内に入る。
大きい家具は二階なのでエスカレーターを使って上の階に移動する。
するとすぐにコタツのコーナーが特設されていた。
「涼太、コタツのサイズどれくらいだっけ?」
「…確認してくるの忘れた。別にある程度大きいもの買っておけばいいだろう」
それにテーブル自体は毎日使っているのだ。
なんとかなるだろう…多分。
〜数十分後〜
「どっちがいいかな…私的にはこっちのサイズの方が多分いいと思うんだけど.」
「美彩の方はでかすぎないか?いや俺の方が小さすぎるのか?」
美彩と涼太。二人揃って悩んでいた。
布団自体は割とすぐに決まった。
シンプルで派手すぎずかつ地味すぎないいいデザインのものが見つかったのだ。
しかし曖昧な記憶を頼りにサイズを決めようとした時二人が全く異なるサイズを選んだのだ。
「ほら『大は小を兼ねる』って言うじゃない?大きい方買っておけばまず間違いないって」
「いや、それはそうだけどよ、大きすぎてもダメじゃね?」
「こっちのサイズならどう?私が持ってるやつよりもひと回り小さい方」
「そうだな…こっちならまず間違いな…ん?おい。あそこのテーブル。ウチにあるやつとそっくりじゃね?」
涼太が指差す先に展示されているテーブルがあった。
まさかと思いながら近づいてみる。
「これ、ちょっとデザイン違うけど大きさは似てる」
「美彩!見ろ!布団のおススメサイズが書いてあるぞ!」
「おススメサイズは、私の方があってたじゃん!」
最初に美彩が選んだ大きい方のサイズがおススメサイズとして表記されていた。
涼太は素早く持っていた小さい方の布団を元の位置に戻し美彩の持っていた布団を受け取る。
そのままレジに並びお会計を済ませる。
「コタツ♪コタツ♪」
「頼むから少しは静かにしてくれ…」
それから家に帰ってもコタツの準備が終わるまで静かになる事はなかった。
晩御飯が終わり食器を洗い戻る。
しかし先ほどまで姿のあった美彩の姿がない。
(風呂にでも入ったか)
そう決めつけ出したばかりのコタツに入ろうとした場所に美彩の足があった。
「おい、寝るな」
「寝てないよ」
「コタツで寝るな。寝るなら布団で寝ろよ」
そう言いながら涼太は美彩の身体に邪魔にならないようコタツに入る。
やはりコタツは最高だ。
出さない、いらないなんて口で言っていてもそこにあると入ってしまう。
「ようやく入ってきた。待ってたよ」
美彩がそういうとコタツから這い出てきて隣に座りコタツに入る。
「お布団デートならぬコタツデート…なんてね」
「お布団デートは寝てもいいが間違ってもコタツデートでは寝るなよ?」
「寝ないよ!もう風邪は勘弁!」
〜30分後〜
「寝ないとはなんだったのか…」
涼太の膝枕で幸せそうに寝る美彩。
「ほら、起きろ。風邪引く前に布団に移動しろよ」
そう言いながら身体を揺らすもまったく起きる気配がない。
それから何度も揺らすのだが起きない。
涼太はコタツから出て美彩をコタツから引っ張り出す。
そしてお姫様抱っこをして布団まで連れて行く。
「ほれ、寝るならこっちな」
そう言って布団をかけてやる。
涼太は一度部屋に戻り、暖房とコタツの電源を切りコップ一杯だけ飲み美彩の寝ているのです布団へ。
「これからは頼むからコタツでは寝てくれるなよ」
そう一言だけ残して涼太も眠りにつくのだった。
後日、涼太が遅くなり帰るとコタツで寝ている美彩の姿が。
そして案の定風邪を引いた美彩。
「あれほどコタツで寝るなと言っただろ!!」
なんて怒り気味に言いつつも美彩の看病をしっかりとする涼太だった。
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