第11話:討伐準備

 城の大きな門の前で兵士達が慌ただしく蠢いて居た。


盗賊団討伐の命を受けて出立の準備をしているところであった。


そんな城門の端で、トラサムントとエリスの姿が在った。


貴族達の思惑通りにエリスは、討伐部隊に組み込まれて居た。名目上は、書記係りとして、後方で部隊の動きを記録する仕事。書記官ほどの権限が有るわけでもなく、ただの記録係りである。


「無事に帰ってくるんだよ。戻って来たら、これを手柄として、エリスに爵位を与えるように申請するつもりさ」


「大げさだよ」


エリスがはにかむ様子で言うとトラサムントは、笑顔を向けた。


「大丈夫さ。先の治水工事の件もある。充分だよ」


トラサムントがそう言うと、エリスは安心した様子で微妙な笑みとも言えない表情を向ける。


トラサムントの言う通りだとエリスは思う。ただ問題は、無事に帰ってこれるかの一点につきる。


生存者率が高い後方任務ではあるが戦場では、不測の事態が起きるかもしれない。


それは、エリスにとって大きな問題ではない。しかし、エリスが疑問に感じているところが存在する。


急な盗賊団討伐もそうだが、討伐部隊の人数が少なすぎるのだ。


前線で戦う戦闘兵が50名、兵站兵が10名、後方での指揮及び雑務兵が5名とエリスを含めて計65名の編成である。


噂によれば盗賊団は、おおよそ50名あまりの集団だという。安全に討伐するのであればその3倍以上の戦闘兵が必要である。


と、エリスがそんな事を考えて居るとトラサムントが再び口を開き出した。


「エリス、君に紹介したい人が要るんだ」


「ええぇ、またぁー?」


エリスは、またもとんでもない人物を紹介されるのではと身構えた。


「ヘラクレイオス」


トラサムントがそう呼ぶと彼の後ろから190cmぐらいの背が高い大男が現れた。筋肉質の大男だが顔は、シュッとしており、ゆわゆるイケメンと言うやつだった。


「彼は、傭兵でね。今回の討伐に参加している。何かあれば彼を頼るんだよ。いいね? 」


トラサムントは、心配性だとエリスは思う。


不測の事態が起きた事を考えて、この男を護衛につけると言うのである。


「よろしくな。嬢ちゃん」


「えっ……ええ。よろしく」


軽薄そうなヘラクレイオスの笑みを見てエリスは、顔をひきつらせた。

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