第1004話

「ではまた、次の理事会でお会いしましょう。師匠、ノエルさん」


「はい、南条大姉」


「ワシはもう出んでもいいかと思うんだがのう。まぁ、カミュが理事に内定するまで仕方がないか」


 次々に転移魔法で理事長室から姿を消すパラケルスス達。

 それらを笑顔で見送って、ノエルとハーボウがその場に残った。


 ハーボウが壊した壁をこのままにしておくことはできない。

 しぶしぶ、という感じに、ノエルは修復魔法を行使すると、ばらばらに破損した瓦礫の山を丁寧に組み上げ、元に壁を戻し始めた。


 そんな師匠のけなげな姿を眺めながら、ハーボウは南条が先ほどまで座っていた椅子に腰かけ船を漕いで遊んでいる。


「ハーボウ。師匠が働いているんですから、もう少し手伝う素振りくらい見せたらどうなんですか」


「えー、もうハーボウ、今日は子守で疲れちゃったですぅ。これ以上こき使われると、家出しちゃおうかなぁ。ぷぅぷぅ」


「その前にこっちが破門してやりたい――ぐぬぬ、しかし、この娘を放っておくと、何をしでかすか分かったもんじゃないですからねぇ」


 少し、地が出たのは、気の置けない仲の弟子の前だからだろうか。

 どうやらノエルはそれなりに――それこそ、自分の師匠と同じくらいに、ハーボウと良好な関係を築けているようだった。


 彼女の師匠がそうであったように、多大な苦労はしているようだが。


「師匠は強し、ですね、師匠……」

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