第799話

 血を吐いたということは、彼女の内臓にまでダメージが通っているということ。


 ただ、そこは人体について知り尽くした朝倉。

 死ぬほどまでは痛めつけていない。


 拘束魔法により、手足を魔術の縄により縛り付けられたハーボウ。

 そんな彼女を上から睨みつけて、にんまりと、朝倉は笑った。


「助かったぜ。どうすりゃいいのか分からない状況だったのに、そっちから出向いてくれるんだからなぁ。ありがとうよ、ハーボウ」


「……くそっ」


「悪いが、このまま魔法協会までご足労願うぜ。洗いざらい、お前らの組織について吐いゲロってもらう」


 安心しろ。

 お前たちと違って、魔法協会は平和的な集団だから、と、朝倉は笑って言う。


 命の保証はしてやるよとは言うが、体の無事は保証はしなかった。

 魔の道は魔の道である。


 そして、彼らも仮面の一団にはかなりの煮え湯を飲まされている。


「師匠の拷問はきついぞ。あの人は、肉体的なものより、精神的な苦痛で攻めてくるからな。俺も修行中に何度泣かされたことか」


 邪悪な朝倉の微笑みに、ハーボウの顔色がふっと青ざめるのだった。

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