第783話

 しかし。

 話を引き受けてみたはいいが、仮面の一団についての手掛かりは何もない。


「探し出せと言われても、証拠もないのにどう探せというのか」


 とは言いつつ。


 朝倉は仮面の一味の一人――ジャン・バルジャンと死闘を繰り広げた、監獄島シャトー・ディフへとやって来ていた。


 新しい監獄長――封印魔術を得意とするもの、また、囚人の管理を適切に行えるもの――が決まるまで、暫定的にパラケルススのホムンクルスが監獄は管理している。


 白くてもこもことした人間味のないそれ。


 朝倉が挨拶をすると、ぺこりとお辞儀を返した。


 こういう所だけ、人間らしく造っていったいどうするのかね。

 のっぺらぼうのそれは掛け値なしに言って不気味であった。


「……さて。もし手掛かりがあるとするなら、ここな訳だが」


 やってきたのは監獄長の私室。


 いったいいつから、監獄長がジャン・バルジャンにその魂を乗っ取られていたか。

 それは定かではない。


 しかし、わざわざ、あぁして、朝倉たちを招き入れたことを考えると――。

 少なくとも、監獄長に化けた状態で工作をしていただろう。


 その期間の痕跡を、なんとかたどることはできないか。

 朝倉はそう考えたのだ。

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