第661話
狂気の魔法使い、ジャン・バルジャン。
実はこれは本名ではなく通り名である。
有名な文学作品の登場人物からあてられたその正体は長らく不明とされてきた。
だが、不老不死の魔法研究のために、時に街を一つ滅ぼし、時に疫病を大陸に流行らせ、時に天さえも暗黒に染め上げた――そんな多くの不気味な逸話を持っている。
それも、数百年という途方もない時間にわたってだ。
つい最近になるまで、その名を出すことさえはばかられるほどに、この大陸で恐れられていた。彼はある意味でもう一人の大陸最強。災厄の魔法使いだった。
長らくその名前と正体が不明とされてきた理由。
そして人間の寿命という枠を超え、長年にわたり彼が災厄を呼び起こすことができた背景には、彼が編み出した不完全な不老不死の魔法が関係している。
強制輪廻と呼ばれるその禁術。
人間の魂をこの世界に固着化し、無理くりに新しい肉体へと転生する法である。
この禁術により、ジャン・バルジャンは、幾度とない自死と転生を繰り返し、人間の身に余る時間を手に入れた。
そこまでして彼は不老不死の魔法の探求に心血を注いだのだ。
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