第640話

 ただれた、アラクネの腹が、ぼとり、音を立ててその場に落ちた。


 ふぅ、とため息を吐き出すと共にその場にへたり込んだ朝倉。

 頭上の黒髪の魔物の息の根が止まっているのを確認すると、彼女はそのぐずぐずになった、彼女の腹から出てきたものに目をやった。


 白骨化した死体。

 年齢についてはどれも判別できないが、しゃれこうべだけで、八つはある。

 失踪したとされる人物は五人と聞いている。一人はチヨ婆として、ほか二名については、いったいどういう素性のものなのか。


 煙りあげる両腕にふぅと息を吹きかけて、朝倉は次に彼女が吐き出した魔術糸を見た。間違いなく、それは理事長であるパラケルススが、彼女に見せたものと同じ。


「なんだい、あっけなく犯人が見つかっちまったな。張り合いがねえや」


 そんなことを言う朝倉の横で、騒ぎを確認しに来た夜鷹たちが声をあげる。

 うるさいな、なんてことを思いつつも、このままこの死体を放置することもできず、朝倉は魔法で隠していて今はない後ろ髪をかこうと手を後ろに回すのだった。

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