第627話

 それは夜鷹としてか、それとも、その客としか。

 返答次第によっては師であっても斬り捨てる。そんな狂気じみた殺気が、朝倉の肩から放たれた。


 ひゃぁ、と、その場にすくむ師匠。


「待て、待て、落ち着け。クローデット」


「俺が娼婦みたいだってか。それとも男みたいだってか。どっちにしろ、実の親のように思っていた、お師匠様からそんなことを言われるような日が来るとはな」


「おぉ、師匠が、師匠の師匠に対する怒りに燃えている!! この怒り、ノエルにもわかりますよ!! 師匠って、ムカツクものですよね!!」


 適当こいたノエルの頭に拳骨を落として黙らせる朝倉。

 その凶器のような視線を前に、パラケルススは喉を鳴らした。


 しかし、なまじ彼も理事長。

 そしてこの狂犬の師匠でもある。


「後者じゃ。理事の中で、男装してあのあたりに出入りして、一番目につかないだろうは、お前じゃろうと、ワシが判断した」


 はっきりと、任務への推薦理由を彼は口にしたのだった。

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