第598話

 その瓶の中に詰められているものは、竜血と呼ばれるものだった。


 そのものずばり朝倉が言った通り、竜の竜たる由縁。

 魔力が込められた特別な血である。


 ずばり竜とはこの血を持つモノをこの世界ではさす。


 朝倉は瓶の中からその血を取り出すと、ソファーの手前にあるテーブルへと撒く。

 血というにはあまりにもざらりとしたそれは、砂のように盤上に広がった。


 きらきらと輝くそれは、サファイアあるいはサンゴを砕いて作ったものだと説明されても、思わず納得してしまいそうな美しさがある。


 しかしそれを注意深く眺めれば――。


「――師匠、なんか、いま、砂が動いたような」


「勘がいいな弟子。そうだ、動いた。実際に、動いたんだ」


 ぞぞり、と、ぞぞり、と、その結晶は、絶えずテーブルの上で動いていた。

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