第500話

 廃棄処分場の職員に声をかけ、スライムを残すこと、また、増殖させないように注意を促した朝倉は、すぐさま工房へと戻った。


 スライムが、一匹いたと思えばあと百匹は居ると思え。

 水路ダンジョンの中にはまだお仲間がいるかもしれないと、すぐさま彼女は見回りを再開したのだった。


「しかしあれですね、五百話目だというのに、冴えない話ですね」


「なんの話だ」


「スライムがでろんと上から落ちてきて、師匠の服を溶かせばいいのに。そしたら、ねちょぬるスケベでお釣りが――」


 と、朝倉の胸を見て、言葉を止めたノエル。

 これではラッキースケベも程度が知れているな。

 わざわざ、それは言葉にしなくても、彼女にわかることであった。


 よもやその程度のことで怒るような朝倉でもない。深く深くため息をはきだした彼女は、肩を落として弟子に背中を向けたのだった。


「そんな都合よく、衣服を溶かすスライムなぞおらんわ。魔法生物なめてんのか」


「もぉ、ほんとロマンがない、もとい、融通が利かない師匠ですね」


「なんの融通をしろというのだ、なんの」

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